三答制(伏せ字)

文字数 529文字

 無月の水の世界へようこそ。
 不束三探、あるいは、未堂棟青人です。この作品は作者の独自アイディアを盛りこんだ、ニュータイプのロジカルミステリーです。
 不束三探の作品では、犯人へと導くことのできる答えを、かならず、三つ、用意しています。この形式を三答制と呼んでいます。
 正解にいたる推理を、三つの筋道にまとめたものです。
 冒頭の段階では、その直接的な答えをブランクにしています。
 幕引きのあと、三答制の伏せ字をあけています。
 ほかにも、三答制よりも直感的な推理となる正答制も用意しています。犯人の名前を思い浮かべる程度でも構わないので、推理していただければ、幸いです。

 X=犯人の名前
 Y=トリック名
 Z=説明

 無月の水 三答制の一
 三つの凶器はYである。容疑者のなかでZとして用意できたのは、Xしかいない。ゆえにXが犯人となる。

 無月の水 三答制の二
 三人を殺した凶器にはYが使われていた。葉月にZできた人物はZにかぎられる。容疑者の四人のなかで、ZはXしかいない。よって、ZをしていたXが犯人となる。

 無月の水 三答制の三
 Yの殺人を実行するには、Zにかぎられる。容疑者のなかでZに来ていた人物はXしかいない。ゆえにXが犯人となる。

 それでは本編をどうぞ。
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登場人物紹介


未堂棟青人……関東取締出役の役人であり、このシリーズの解き手である。八州廻りとも特別同心とも呼ばれている。徳川幕府から警察的な権限を与えられており、殺人事件の捜査、下手人の逮捕を関東全域で行っている。未堂棟家は武士階級のなかでも、とくに地位が高く、ほんらいは関東取締出役のような仕事をする必要はないのだが、本人のたっての希望により、この仕事に就いている。未堂棟家の計らいもあり、武家身分に対しても、厳しい捜査を可能としている。未堂棟は幼いころに、頭を強く打っており、体調は万全ではない。作中では左目の開閉が進むにつれて、全盛期の姿をとりもどしていく。覚醒前に伏線を集め、覚醒後に回収する。珍しい探偵構成を有した解き手である。




別府卯吉……未堂棟と同じく、関東取締出役に就いている。解き手の未堂棟に対して、別府は助手役である。別府の父親は未堂棟家に仕えており、ふたりは対等な友人として育った。未堂棟が頭を打ったとき、別府はすぐにそばにおり、大怪我の責任を感じている。そのせいか、覚醒前の未堂棟に対して、過保護となっている。八州廻りの仕事は、未堂棟のリハビリも兼ねている。そのいっぽうで、危険な目に合わせたくないと思っている。未堂棟に負担がかからないように、積極的に解決へと取り組む。意識的に、強い口調を選んでいるが、ときに、ほんらいの優しさがあらわれる。




瑞木新七……蛇崩町を中心に水屋の商売を行っている。代々の水屋である。御家人や旗本とも商売をしている。葉月に水だけではなく、氷をも売ることで、高い収入をえている。大村家にも飲み水を売っていた。作間藤三郎の甥にあたる。蛇崩町に強い愛着をもっている。



炊馬経子……作間藤三郎の遠縁だが、藤三郎のあとに、水番人の仕事に就きたいがために、彼と親しくしていた。しかし、大村昌村に藤三郎を殺害され、彼女の計画はご破算となる。経子の生活は、一層、困窮していた。現在は大村家の女中となっている。




作間政信……作間藤三郎の義理の弟にあたる。蛇崩町の周囲にある田園は、政信の手によるものである。藤三郎を殺害されたあと、大村家に殴りこみ、斬りつけられたことがある。身体が不自由となっていた。義兄を喪った精神的衝撃はおおきく、さいきんは、賭博に溺れている。




上野左衛門……作間藤三郎の従兄弟であり、蛇崩町にある万屋の主人である。日本産の物品だけではなく、どこからか仕入れた大陸産の物品も置いてある。大村昌村が夜中、上野とたびたび、密会しているところを目撃されている。大村家のほうは上野と親しくしていることを隠したがっている。



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