無月の水

作者 さんたん

[ミステリー]

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紹介文

---作品の紹介---

無月の水、山風の杭、仁鳥の杭、飛花の命は、同人誌即売会(コミックマーケット)の同人ゲーム部門にて発表していた作品である。
江戸時代を舞台にしたトリックミステリーとなっている。なお、作品内の文体は、横溝正史氏の捕物帖作品をベースに、現代につうじる言葉遣いまでさげている。時代小説ほど、むずかしくはしていない。

この花鳥風月シリーズは、作品内の幕間が示しているとおり、いまの時代から江戸時代を物語っているという構成(神視点寄りの三人称)をとっている。
ゆえに、会話の最中でも、江戸時代の風習や専門用語を説明する地の文をいれている。江戸時代だと名字のない身分差の問題もあるが、全員にあだ名を用いることで、現代文へとちかづけている。

ひとえに、読みやすさを確保するためだ。

これは、現在の市場では廃れてしまったと言える時代ミステリー、捕物帖の良さ(このジャンルは、100年ほどまえ、シャーロックホームズを参考に岡本綺堂がつくりあげた)を読者に伝えるためである。
こういうジャンルがあるということを、より周知させるためである。

市場のトリックミステリー(最終場面にて、合計三つ以上のトリック・リトリックが開示されるものと定義)に、江戸時代を舞台にした作品は、ほぼ、存在しない。だからこそ、江戸時代を舞台にした高頻度のトリックミステリーは希少価値が高い。将来性があると考えた。
むろん、トリプルアクセル級の高難易度である。

わたしはご存じのとおり、自作品に一定の縛りを与えるタイプである。それはスタイルだけではない。シナリオ内にも強制化の要素がある。

掲載済みの最愛シリーズでは、観光地巡りと告白シーンをいれていた。
この花鳥風月シリーズでは、トリックや動機の根幹に、江戸時代特有の風習・道具・背景をかならず、盛りこんでいる。

最終章、犯人やトリックを知ると同時に、時代物の知識が身につくという構成にしている。
作者なりのサービス精神である。

トリックミステリーを好む者は、基本的に知的好奇心の強い者が多い。
そういった方々に、より楽しんでもらいたいからである。

類別本格ミステリーは、三答制、類別ミステリー集成、三位十塔、十三位不文律など、市場にない、あたらしいトリックミステリーの形をとっている。一般書籍には存在していない手法である。この試みは構成以外にも、あらわれている。
ミステリーの前提ジャンル/サブカテゴリーに対し、新奇性を導入している。

最愛シリーズでは、ゼロ年代のナイトサスペンスがテーマである。いわゆる、火曜サスペンス、土曜ワイド劇場テイストだ。ゼロ年代のサスペンスドラマは、現代のミステリードラマよりも、テーマが細分化(観光、恋愛、職業、温泉)しており、様々な層から、人気を博していた。いまは、放送すらしていない。

このテーマの人気を再興するべく、最愛シリーズでは、サスペンス展開を主軸に、当該ジャンルの定番である観光地巡り(殺人事件の合間に巡る有名スポット)と恋愛場面(主人公とヒロインの恋愛模様)を、挿入していた。入浴シーン、現地の刑事、食事シーン、執筆描写、第一発見者、後日談なども同様の意図だ。

いっぽう、花鳥風月シリーズでは、その縛りが江戸時代の風習・道具・背景になっている。

無月の水では「夏にまつわる水騒動」、山風の杭では「冬にまつわる行事」、仁鳥の餌では「春にまつわる動植物」、飛花の命では「秋にまつわる遊郭」からはじめて、最後の場面では、さらに、ふかい江戸時代の知識にふれている。不束三探サスペンスも未堂棟の示唆開眼も、両者の進化・発展を目指した作品群となっている。

成功するとは思えないが、不束なりのチャレンジである。
もちろん、トリックの多いロジカルミステリーは、万人受けするものではない。一定の読みにくさは避けられない。その点は努力するものの、対策として、読者の背中を押す他要素を用意している。それがミステリーガイドブックだ。

ゲームにおけるナビやマーカーに値するものである。なにが起きていて、どのとき、どこへと進んでいくのかをあらかじめ、確認できる。
本編を読むまえに、ミステリーガイドブック内の甲乙丙丁に目をとおしていただけると、作者としては、つくりあげた甲斐がある。

それでは、不束な作品ですが、よろしくお願いします。

---あらすじ---

ミステリーガイドブックの読了を推奨している。より精度の高い概要を用意している。不束三探の作品群では、完読補助として、すべてのあらすじとすべての答えを用意している。
その完読補助は四段階にわかれている。
(甲)六点リーダー、(乙)パラグラフリーディング、(丙)類別ミステリー集成、(丁)三答制の開示、この四段階になる。

解明度(ネタバレ)は、甲乙ほど低く、丙丁ほど高くなる。
決定的な犯人の名前、動機、トリックの具体性は、甲乙の段階ではふれないようにしてある。丙丁では逆に、すべての謎を開示している。
あらかじめ、丙丁の両方を読めば、すべての謎を知ることができる。
理解度をふかめた状態で読み進めることができる。

トリックミステリーを読み慣れている人は甲、読み慣れていない人は乙、すべてを理解してから読みたい人は丙丁を一読することがおすすめである。
なんにせよ、読者に完読してもらうことが、わたしの最大の望みであり、喜びである。

そのために、いかなる努力も惜しまない。

---おおよその投稿スケジュール---

三答制(伏せ字)
序章
完読補助の六点リーダー
完読補助のパラグラフリーディング
以下、各章後に完読補助の繰り返し
一章
二章
三章
四章
五章
六章
七章
八章
九章
十章
十一章
十三章
三答制(開示)
叙述曲
類別プロット表
類別ミステリー集成(全説明)
三答制の詳細開示

※十二章、幕間の六点リーダーとパラグラフリーディングはつくっていません
※花鳥風月シリーズ、共通の文章の予定です。

登場人物


未堂棟青人……関東取締出役の役人であり、このシリーズの解き手である。八州廻りとも特別同心とも呼ばれている。徳川幕府から警察的な権限を与えられており、殺人事件の捜査、下手人の逮捕を関東全域で行っている。未堂棟家は武士階級のなかでも、とくに地位が高く、ほんらいは関東取締出役のような仕事をする必要はないのだが、本人のたっての希望により、この仕事に就いている。未堂棟家の計らいもあり、武家身分に対しても、厳しい捜査を可能としている。未堂棟は幼いころに、頭を強く打っており、体調は万全ではない。作中では左目の開閉が進むにつれて、全盛期の姿をとりもどしていく。覚醒前に伏線を集め、覚醒後に回収する。珍しい探偵構成を有した解き手である。




別府卯吉……未堂棟と同じく、関東取締出役に就いている。解き手の未堂棟に対して、別府は助手役である。別府の父親は未堂棟家に仕えており、ふたりは対等な友人として育った。未堂棟が頭を打ったとき、別府はすぐにそばにおり、大怪我の責任を感じている。そのせいか、覚醒前の未堂棟に対して、過保護となっている。八州廻りの仕事は、未堂棟のリハビリも兼ねている。そのいっぽうで、危険な目に合わせたくないと思っている。未堂棟に負担がかからないように、積極的に解決へと取り組む。意識的に、強い口調を選んでいるが、ときに、ほんらいの優しさがあらわれる。




瑞木新七……蛇崩町を中心に水屋の商売を行っている。代々の水屋である。御家人や旗本とも商売をしている。葉月に水だけではなく、氷をも売ることで、高い収入をえている。大村家にも飲み水を売っていた。作間藤三郎の甥にあたる。蛇崩町に強い愛着をもっている。



炊馬経子……作間藤三郎の遠縁だが、藤三郎のあとに、水番人の仕事に就きたいがために、彼と親しくしていた。しかし、大村昌村に藤三郎を殺害され、彼女の計画はご破算となる。経子の生活は、一層、困窮していた。現在は大村家の女中となっている。




作間政信……作間藤三郎の義理の弟にあたる。蛇崩町の周囲にある田園は、政信の手によるものである。藤三郎を殺害されたあと、大村家に殴りこみ、斬りつけられたことがある。身体が不自由となっていた。義兄を喪った精神的衝撃はおおきく、さいきんは、賭博に溺れている。




上野左衛門……作間藤三郎の従兄弟であり、蛇崩町にある万屋の主人である。日本産の物品だけではなく、どこからか仕入れた大陸産の物品も置いてある。大村昌村が夜中、上野とたびたび、密会しているところを目撃されている。大村家のほうは上野と親しくしていることを隠したがっている。



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小説情報

無月の水

さんたん  santan

執筆状況
連載中
エピソード
11話
種類
一般小説
ジャンル
ミステリー
タグ
トリックミステリー, 類別本格ミステリー, アリバイ崩し, 読者への挑戦, 凶器トリック, ポジティブメタファー, 完読の補助付き, 時代ミステリー, 江戸時代, 捕物帖
総文字数
98,136文字
公開日
2024年02月21日 08:40
最終更新日
2024年04月28日 16:00
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