星空

文字数 288文字

 山に登った。
 空いっぱいの星が見たかったので。
 山頂に辿りつくと、高く深い澄んだ藍色の夜空がひろがっていた。
 さんざめく星々に目が眩むようだ。
 ぼくは、しばらく星空を眺めていた。
「人が死んだら星になるって?」
 かたわらで、彼の声がした。
「ばあちゃんが、そういってた」
「あいかわらずのメルヘン坊やだ」
 ぼくは、彼を見上げた。
 いつもの、皮肉っぽい笑みを浮かべている彼を。
「おれは、あの中にいないよ」
「うん」
 ぼくは、彼に手を伸ばした。
 彼の姿は静かに消えた。
 いいよ、それでも。
 ぼくのそばにいてくれることがわかったから。
 
 

 


 
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