第10話 mission2 the unknown 未知なるもの

文字数 909文字

「ねえ、そのサンドイッチの作り方だけど」
「ええ、簡単よ。だたスライスして挟むだけ」
「そう、それなら戦場への携帯食にもできるな。今度作ってみよう」

 リーエはクリスの差し出すサンドイッチに興味を持った。トマトケチャップ以外は、スライスされたサラダだけの簡素なサンドイッチだ。

「うーん、私は缶詰の方がいいわね。戦場だとどうしても型が崩れてしまうわよ」
「あらそう?」

 クリスは微笑んだ。
 リーエの顔も今は平和だ。
 昨日の資源貯蔵庫の緊急ミッションも無事終わり。今はSFTSも襲来しない貴重な休日だった。
 
「ニャー」

 猫がリーエたちの座るベンチに寄って来た。
 ここはアベンジャーズ・ザ・ウィメンズの端にあるせせこましい庭だった。常緑樹が数本植えてあり、他はベンチが二つしかなかった。
 中央には申し分程度の噴水がある。

「ニャー」
「にゃー」

 リーエも猫撫で声で猫をあやしていると、次第に愛着が湧いて来た。様々な戦場を駆け抜けて来たリーエにとって、今の時間はなによりも貴重だった。

「飼い主はいないようだ」
「そうね。みんな忙しいから……」
「よし、飼ってみよう。今日からお前の名はおひるねこだ」
「さすがに、可愛いわね」

 と、その時。
 猫の総毛が逆立った。

「え?! な、なんだ!! この感覚は?!」
「う! これは!」
 
 突然のとてつもない悪寒が二人を包み込んでしまった。
 クリスは勢いよく立ち上がり、叫んだ。

「エデルが前に言っていたの!! アベンジャーズ・ザ・ウィメンズ本部に時々入り込む知的生命体がいるって!!」
「SFTSか?!」 
「いえ、違うようよ! 別の生き物かもしれない!!」
「何故今まで言わなかった!!」
「確証がまったくつかめてないの! それに、誰も姿を見た人はいないの!」
「それでは、どうしてその存在に気が付いたんだ!」

 リーエの怒声にクリスは俯き加減にこう言った。

「確実に死亡しているの。一週間前から本部で謎の変死体がでてるわ……」
「な、なんだと……」 
「迂闊だったわ……私も他の皆も今までエデルの言ったことを信じていなかったの……」
「そうだな……今まで信じられないことなのだろうな……」

 リーエはおひるねこを連れ立ち上がる。
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