第16話

文字数 1,381文字

「そんなに放棄したいなら私に頂戴。私がありがたくもらう」
 しかし彼女の説明を信じると、そのお金は老人からもらったお金で、彼女のものである可能性はまだ残っていた。何故代理人はお金を迫ってくるのか?なぜ私がお金を手に入れたことを知っているのか。その真相を確かめたい気持ちもあった。自分のお金にするかどうかはそれを確かめてからにしようと思った。
 私は次の日私は様々な思いの中で目が覚めた。目が覚めて冷静に考えると、結局私はお金を合法化させようと思った。もちろん大金への未練はあったが全てが怖かった。もう楽になりたいと思っていた。そのために警察の力を借りようと思った。
 警察に行くと相談員という高齢の男性が対応した、
「いつ拾いましたか?」
「いくら拾いましたか?」
「なぜ警察に持ってこなかったのですか?」と訊かれた。私は拾得届を出すのをためらっていた。すると少し検討させてくださいと言って相談員は部屋を出て行った。十五分後警察官2人と一緒に相談員が戻ってきた。あなたが遺失物拾得届を出さない、また現時点で遺失届が出ていない以上警察として動けないと言った。まずは拾得届を出してくださいと言われた。仮に遺失物拾得罪にあなたを問うためにはまずは落とし主からの遺失届が無いといけない。もうすでに時間が過ぎていて、あなたを立件するのは難しいだろうとも言われた。つまり私が拾ったお金は落とし主が現れない限り、ほぼ私のお金と考えて問題が無いとのことだと了解した。
 彼女は、何故か、「ほら私の言う通りになった」と言った。本当は私の物ではないが社会的には私の物になったことを表していた。彼女の予想では相手は警察ではなく、「あなたの良心に訴えるしかないね」ということだった。
そして私の良心は痛かった。なぜそんなに苦しむのと彼女が言った。
「言わせておけばいいじゃないそんな奴のいうこと」
「お金の所有権を持っている者が勝ち」
「お金の所有権を持っている人間からゆすり取ろうとしているのが彼ら」
そんなことを彼女は言った。しかし私には本当に所有感が無かった。私は自信を持って所有権を主張することができないと映像を見た時からそう思うようになった。放棄すべきだったのかもしれないと思った。代理人に会うことにした。
 私はロボットを待ち合わせ場所に向かわせた。博士に修理してもらい私の家に横になって置いてあった。相手が代理人である以上、私の代理を向かわせるのがよいと思った。代理人同士で接触するのは悪くはないと変に私は感心した。しかしこのアイデアは彼女発案であった。
「私も行く」彼女の言い分であった。彼女としてはお金に関係しとかないといけないと必死だった。しかし私は彼女に渡すつもりはなかった。私に所有権があると実感はなかったが、彼女にも所有権が無いと確信していた。彼女には一円も渡さないと言った。「小さい人間」と言われた。しかし私は彼女が嫌いではなかった。彼女は可愛らしかった。私は交渉場所の近くにホテルを借りて彼女と一緒にリモートで代理人と会った。 
 代理人は目の前にいる男がロボットとは気づいてはいないようだった。先に席に座っていてロボットが席についても自然な表情をしていた。私も何度もロボットと対面しているが、目を隠している限り気づかなかった。行きつけのバーにロボットを向かわせても誰も気づかなかった。
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