第13話

文字数 1,599文字

 数日後午後6時過ぎに会社に入ってきた彼女は、残業しているロボットを金属バットで壊してしまった。他の者たちは誰も止めようとはしなかった。それがロボットであることを知っていたからだろうか。また金属バットを振るう彼女が怖かったからだろうか。ロボットの頭が床に転がっていた。彼女はそのまま帰っていった。異常を知らせる警報音がして私はパソコンで画面を見た。床しか映っていなかった。頭より下の部分はパソコンを打って仕事を続けていたようだ。私は頭を拾いあげる操作をして頭を元の位置に戻した。周りを見ると他の人間たちがざわついていた。ロボットは失礼しましたと言葉を発した。そのまま仕事続けた。そしていつも通り帰宅してきた。側頭部が酷くへこんでいた。もう身代わりにロボットは使えなくなった。流石にこの出来事の後も使い続ける勇気はなかった。そして会社では公にはこの出来事は起こっていないことになった。会社としてはロボットに残業代を払ってよいのか?不審者が入ってきて金属バットを振るったがどう処理すればいいか分からなかった。私は箱型ロボットを操作して適当に時間までに仕事を終わらせるようにした。博士に連絡すると彼女を首にしたということだった。彼も遠隔監視していて何が起こったか把握していた。彼女は、
「私の金だから幾らかは返済してほしい」
と言ったとのこと。もちろん博士には返済義務はないのだが、彼女は混乱していたとのことだった。
 私は会社で別室に呼ばれた。係長、課長、部長、社長が席についていた、映像を見せられた。彼女が会社に玄関から入ってきて、部署の中でロボットに金属バットを振るう場面が映っていた。止める人間はいない。転がる頭を一瞥して彼女は部屋から出て行った。彼女を知っているかと尋ねられた。私は答えるのが面倒で知らないと答えた。あなたの件で噂の店に勤める女性であるという話があるが、とさらに聞かれた。私は知らないと答えた。あんなことをされても、前にいる人間よりも彼女の方に親近感を感じていたから何のやましさも感じなかった。
「あなたはロボットに仕事をさせていたのか」
社長が尋ねた。書類の不備に関しては指導に従うが、そのような質問には答えないと言った。
「詐欺ではないのか?」
と社長が言った。質問に私は嫌気がさしてきた。こいつは馬鹿か?と思った、その回答はしないと答えた。また一連の出来事に関して、以前から上司から問い合わせられても私が的外れの回答しかしないと報告を受けて、社長はむっとしていたと言った。
「あなたは今でもロボットを使っているのか」
と部長が聞いてきた。私は何も言わなかった。社長は呆れるように、この暴行事件に関しては何もなかったことにすると言った。そして今後は指紋認証で社員の出入りを管理すると言った。しかしロボットを使って仕事をしていたということは問題だよねと、再び社長が問題を蒸し返した。私たちは再三にわたり彼に関しては指導してきましたと部長が言った。質問ですがと私が話に割って入り、私の書類処理件数を指摘して、彼ら上司たちがすでに知っていて、私を利用したことを言った。他の人間たちと処理件数が二ケタ以上違うことを言った。その結果部署では朝から仕事をせずに旅行先を検索したり、資格の勉強を始めたり、ゲームをする人間が出てきていることも付け加えた。係長に関しては株式投資をしている場面を見たことを言った。係長は証拠があるのかと言った。私は答えなかった。彼らが証拠がないと思ったか、あると思ったかは知らないが、証拠を私は持っていた。社長はため息をした。しばらく沈黙があった。
「書類に不備はありましたか」
とわざと私が沈黙を壊した。
「ない」
と上司の誰かが答えた。私は話が無いなら退席したいことを言うと、帰らせてくれた。歩きながら彼らはこの話し合いを何のためにしようと考えたのかを考えた。しかし分からなかった。
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