第6話

文字数 2,168文字

 次の日書類をセットすると、わざと引き出しにガムテープを着けて部署を出た。部署を出ると後ろから人事部の人間が尾行してきた。食堂にパソコンを置くと、彼も離れたところにパソコンを置いて作業を始めた。昼に私が机に戻るとガムテープは剥がされていた。電車でデータを確認すると、ロボットは部長室に入っていた。彼らも大胆だなと思った。
「この箱は博士の店の物のようです」
「実際にその店に行くと、博士がいてこの箱の写真は自分が開発したものだと認めました。しかし誰に売ったのかどのような機能があるのかは守秘義務だから言えないと言いました」
「この機械に朝から書類をセットしているようです。午後も書類をセットして彼は大抵食堂や展望室で過ごしています。出来上がった書類はメールに添付ファイルで送られてくることもあります。紙媒体のときは、昼と夕方に回ってきます」
私の仕事のパターンが説明されていた。
「で、これで何が問題なのか」
部長が言った。
「彼が離席していることが周りから不満が出ています」
「しかし外勤、異部署間移動や来客が来た時など離席はよくあることだよね」
「しかし度が過ぎています」
「離れる時の報告はあるんだろう」 
「はいそれは行うように言いました。あまり好ましいことでないことも伝えています」
「先日は仕事を指定座席で行うようにと就業規則に書かれていますかと返答してきました」
さらに係長が続けた、
「彼の言い分では人の少ない場所の方が仕事がはかどると言っていました。問題があるときは連絡をしてくれと言って聞きませんでした」
部長が困った顔して、
「何が問題かよくわからんね」
「思い切って言いますが私は彼がこの機械を使って
 仕事をしているのではないかと考えています」
同僚が言った。
「これがそのロボットと言うの?これは幾らぐらいするものなのかな?そんなに仕事が効率よくできるのなら、我が社で買いたいね。何故彼はこれを手に入れたの?彼が開発したのか?」
部長が次々質問を始めた。
「ところで、これはどうやってここに持ってきたの?え、承諾も得ずに勝手に持ってきた。思い切ったことをするね。彼に知れたらどうするの?」
「その時は彼にこれが何なのか聞きます」
係長が答えた。
「そうかそれほどに現場混乱しているんだね。周りの士気が下がるというんだね。しかし仕事に遜色はないんだろう?もう暫く様子を見よう。早くこれを戻してきなさい。その店にもう一度行って、価格交渉できないか探ってくれ。上には私が相談しておく。揉めると難だから穏やかにことにあたるように。写真を取っておこう。これは製品番号みたいなものが無いね。手作りなんだろうね。ロット生産されていないということか」
私は自分の物が勝手に運ばれていることに腹が立ったが、ここで事を荒立ててはいけないと怒りを鎮める気持ちが強かった。次の日は長めに机にいた。取り込み済ませてロボットが処理を済ませ、それを点検する仕事をした。もう既にほとんどミスは無くなっていた。項目から見積もり書を表付きで作成していた。また内訳書をミスなく作成できていた。私は打ち込まなくていいから断然仕事は速く進んだ。書類のロボットへの取り込み作業が目につくと面倒だから、別の部屋で行うようになった。私が机を離れると周りの視線を感じた。

「最近仕事が速いと噂ですよ。それ何か特別な機械ですか」

と名前も覚えていない若手が話しけてきた。

何でもないよと答えた。私は話をしたくなかった。

 私は博士に連絡して取り込み作業をどうにかできないかと尋ねた。書類をロボットに認識させるためには映像イメージが必要だから取り込み作業だけは必要ということ、また書類が元々データなら、ロボット自体は別の場所に置いても可能なように作り替えることができると言った。その改良に必要な費用を聞くと僅かな金額であった。自宅に置いておくことは可能かと尋ねると、可能ではあると答えが返ってきた。しかし時間が必要でしばらくは無理だとのことであった。

 その後も私はロボット持参で会社に出社を続けた。ある日博士から連絡がきた。会社の人事部門の人間が来て、ロボットを売ってくれるように話をして帰ったとのことであった。どのような仕組みでできているのか等を聞いてきたとのことであった。博士は絶対に操作をさせないようにと言った。私は部署の机に戻ると机の下に置いてあったロボットが無くなっていた。私は誰か知らないかと尋ねた。するとどんなものですか?何に使うのですか?などのわざとらしい質問が来るばかりで、当然誰も物の居場所を教えてくれなかった。私は係長に知りませんかと大きな声で尋ねると係長は知らんと答えた。私は警察に届けますよといっても知らんとの答えがきた。私は警報音が鳴るようにパソコンから操作した。博士が見つけやすいよう機能を着けていたのだった。GPS機能もあるが、ビルのなかでは判別が難しかった。警報音を探して会社中を探した。結局階上の人事部門の部屋の前にある段ボールの中から見つかった。私は誰がこんなことをしたのか知りたくなって、人事部の扉を開けて中を見ると、知らない外部の人間と人事部の人間が話をしていた。私の荷物がここにありましたが、誰か知りませんかと尋ねると、知らないとの声が返ってきた。そうですかと言って扉を閉めた。
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