第14話 【書評】聖母マリア(2023.10.1記)

文字数 747文字

【これを復刻したとは気骨のあることである】

1.書名・著者名等

岩波書店編集部 (編集), 岩波映画製作所 (写真)
『聖母マリア』
(岩波写真文庫〈復刻ワイド版〉―シリーズ 世界の美術案内)
出版社 ‏ : ‎ 岩波書店
発売日 ‏ : ‎ 1990/3/19
単行本 ‏ : ‎ 64ページ

2.兎平亀作の意見です

とにかく要領が良い。基礎知識として必要な範囲は全部さらってあります。
また、「本書の前半は、マリア伝に沿った時系列で整理。後半は(時系列を無視して)表現様式ごとに分類比較」と言う、思い付きそうで思い付かない名編集方法です。

本書の「はじめに」には、こう記されています。

(引用、はじめ)

西欧精神や思想を知る爲には勿論、西欧文化の一斑を知るためにも基督教のおよその知識を欠く事は出来ない。

(引用、おわり)

この志の高さと、旺盛かつ建設的な知的意欲には感動すら覚えました。
「入門書として広くお勧めしたい」と言いたいところなんですが、何分、内容が古すぎます。
解説の文章は、良く言えば格調高い、悪く言えば難字・難語を使いすぎ。1954年の知的大衆は、これでも付いて来れたのでしょうが、教養主義そのものが死滅した今の日本では望みようも無いことです。
「遽かに」って読めますか?私は読めなかった。「ホラ、急遽って言葉があるだろう」と言われれば、「ああ、あれか」と思い出しはしましたが。

それと、図版がモノクロなのも弱い。モノクロはモノクロなりに、かなり精細な仕上がりに成っている良い写真なんですが、やっぱりモノクロじゃなあ・・・。
結論としては、時の彼方に過ぎ去った本だと言わざるを得ませんが、「基督教のおよその知識を欠く事は出来ない」と言う強い志は、本書とは別の形で受け継ぎたいものだと、つくづく感じ入りました。
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