第6話 # 砂久の話
文字数 1,737文字
授業が終わると、奏音はさっそく、真湖の席へ向かった。
授業中に考えていたことを実行するために、真湖に手伝ってもらいたかったのだ。
真湖の言葉に、奏音は一瞬怯み、ごくり、と唾を飲み込む。たしかに、今朝の砂久の剣幕は怖かった。実際、和久に怒鳴って、掴みかかってもいたし…。
真湖は、しばらくうーん…と悩むようなそぶりを見せていたが、結局、割り切ったようにうん! と勢いよく頷いて奏音を見た。
真湖と一緒に、教室の入り口側の前方にいる砂久の席へ向かう。
当の砂久は、机に思い切り突っ伏していた。
真湖が遠慮なく砂久の肩を掴んで揺さぶるので、奏音はたじろぐ。
相変わらず、真湖はいつでも、だれに対しても豪快だった。
案の定、顔を上げた砂久は不快そうな表情で真湖をじろりと睨んだ。
しかしそんなことは想定済みなのか、慣れているのか、真湖は全然気にしていないように見えた。
バンバンと、リズミカルに砂久のブレザーの背中を叩く。
真湖が今にも砂久に掴みかかりそうだったので、奏音は慌てて制止する。
同時に砂久の切れ長の目がぎらり、と奏音を見たので、内心ひぃ、とおののきながら、ひきつった笑みを浮かべてみた。
べ、別にわたしは…庇ってるわけでは、ない、よ?
なんていうか、砂久くんも、すごくつらそうだって、見ていて思ったから……えっと、なにか話を聞けたらな、って思ったというか……。
って、突然、こんなこと言われても困るよね……!
俺、最近おかしいんだ。陸上も調子が悪いし、勉強はもとからあんまりだし……。
和久はなにもかもうまくいってるように思えて、双子なのに、弟なのにって思うと、あいつに対して悪い感情がどんどん生まれてきて、それが爆発すると、今朝みたいに、歯止めが効かなくなる。
正直、自分でも自分がこわい。でも、どうすればいいのかわかんねえ……
砂久の言葉を聞いて、奏音も真湖もそれ以上なにも言えなくなってしまった。
すこしして授業の予鈴が鳴り、ふたりはとぼとぼと自分の席に戻った。