第3話 初めての友達

文字数 2,334文字

 俺の名前は、工藤拓斗。大学の帰りに、家に居候している未来ちゃんから『変な人来た』のメッセージを見て、急いで家に帰ったが、鍵がかかって入れなくなった。未来ちゃんが出てくるまで、玄関前で待っていたが疲れで気絶してしまった。
 
 う、う・・・母さん?

「拓ちゃん。起きなさい!」

 う、う・・・

「いいから起きなさい!」
「母さん・・・」

 ハッ!

 母さんに起こされた俺は、綺麗に整理整頓された部屋の中にいた
 俺以外誰もいない部屋の中に綺麗な月の光が、広がる。俺は、その光を見てあの日のことを思い出していた。
 二千XX年八月七日。俺は将来タイムマシーンを作ることを決意したあの日
 
 あの日俺は、幼馴染と一緒に遊んでいた。その子は、常に笑顔だった。どんなに悲しいことがあっても、常に笑顔だった。俺は、そんな彼女に惚れていた。
 でも、その日初めて彼女は、泣いた。

 泣いた理由は、わからない。それ以来、彼女は俺を無視するようになった
 どうして、無視するようになったのか、俺は知りたい。だから、俺は彼女が俺を無視し始めたあの日に戻って、その真実を知るためにタイムマシーンを作ることを決意した。

「どうして、あの日彼女がいたのかな?」

 なぜ、彼女がいたのか。どうして無視をするのか。その謎は、今の自分の力では解決できない。それでも今の自分でも、解決できる問題がもしかしたらあるかもしれない。 

「未来ちゃんを探さなきゃ!」

 まだ、出会って一日しかたたないが、彼女はどこか俺に似ている。怒りっぽいところとか、いろいろある。でも、なぜか娘のような可愛さが彼女にはある。男だから守りたいではなく、父だから守りたい。彼女を見ていると、そんな気持ちになる。

「彼女が、行くならあの場所しかない!」

 無意識にあの場所に向かうはずだ。俺も、久しぶりにこの街に来た時、どこに何があるかわからなかった。家がどこにあるかわからない俺でも、あの場所には何も見ないで行くことができた。

「俺が、生まれたあの産婦人科!」

 ただ、ひたすら走る。深夜だから、車も人も、自転車も走っていない。がら空きの道路を一方通行の橋をただひたすら走る。

 俺が、あいつを守る!

 交差点を左に曲がっては、また曲がる。いつもは、数十分かかるはずのこの場所が、今日に限って、あっという間についた。誰もが、寝ている時間帯に人影が、病院の前で立っていた

「未来!」

 その人影が、誰なのか確信して言える。だって、ここに産婦人科があるのを知るのは、俺たち家族以外に誰もいないためだ。

「どうして、ここがわかったの?」
「お前が、俺に似ているからだ」

 彼女は、俺に似ている。その理由だけが、この場所に彼女がいることを教えてくれた

「お前は、ほんとに未来人なのか?」
「そう。私は、今から四十年後から来た未来人」
「この時代に来た理由は?」
「本当は、あの時代よりも先の未来に行きたかった。でも、マシンの故障によってこの場所に来ただけ?」
「未来には、タイムマシーンがあるのか?」
「ある」

 未来にはタイムマシーンは存在する。つまり、誰かがタイムマシーンを作ることに成功したってことになる!

「そのタイムマシーンは、誰が作った?」
「そ、それは・・・」

 彼女は、なぜか決まずそうに黙りこんでしまった

「教えてくれ? 誰が、タイムマシーンを作った?大学の教授? それとも、政府?」
「あ、あn」
「アン? そうか海外のチームかハハハ」

 正直、自分かなと思ったけど、こんな頭の悪い奴に作れるはずがないから、少々恥ずかしい。

「そうか。どこかのチームが作ったのかすごいな」
「い、いや」
「俺の夢は、タイムマシーンを作ることだった。みんなからはお前には無理ってバカにされたけど、それでも、俺はどうしても俺の手で作りたかった。お前の口からタイムマシーンが未来にあるって聞けてうれしかったよ。初めに作ったのは、俺じゃないけどね・・・」

 悔しい。生まれて初めてもっと勉強すればよかったと後悔した。小学生の頃から、勉強なんてしなくても将来大丈夫って、思っていた。でも、今せっかく夢がかないそうなのに、学力の問題で叶いそうにないとわかり、勝手に涙が出てくる。

「どうして泣いているの?」
「どうあがいても、俺はタイムマシーンを製造できない。そう思うと俺の今までの努力が無駄と思っちゃって、勝手に涙が出てきちゃう」
 
 未来は、変えられない
 
「もしかしたら、あんたが作れるかもしれないじゃん!」

 彼女は、珍しく俺を励ました

「タイムマシーンを作ったのは、海外のチームではなく私の父。父も幼いころから、あんたと同じくタイムマシーンを作ることが夢だった。私が、生まれてからも一日一日難しい難しい言いながら、努力していた。その結果、タイマシーンの製造に成功したさ。」
「あんたは、今日から頑張れが良いじゃないか! 頭も悪くて力もないあんたならできる!」

 彼女は、どこか母さんに似ている。暖かい励みが、俺の無力さを消し飛ばしてくれた

「そうだな。俺頑張るよ!」

 彼女を探しに来たはずなのに、気づいたら彼女に励まされていた。

「家に戻るか」
「うん」
 
 俺は、美しい月の下を仲良く歩きながら、これまでの疑問を聞いた

「どうして、いなくなった?」
「私は、未来に帰りたい。あの場所に行けば父が助けに来てくれると思っていたけど、父は来なかった。私は、未来に帰りたい」

 彼女は、泣き出した。まだ幼い彼女。知り合いも友達もいない。こんなことを気軽に話せる人も場所も存在しない。

「だったら、俺と友達にならないか? 俺もボッチだから、話し相手が欲しい。あと、タイムマシーンが治るまで家にいていいからさ」
「いいの?」
「おう!」
 
 その日初めて俺に、友達が出来た
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