第16話

文字数 531文字

「うわっ、どうしてお前が」

 それは勇者の死体だった。
 首のない勇者の死体がメイスを持った手を掴む。そして残った手で神父の首に手をかけて締めようとする。

「はっ、離せ」

 ドガッ!!
 
 玄関のドアを押し破って、サイクロプスと彼女が中に入ってくる。

「おい、いたぞ。お前逃げられると思うなよ」

 ブンッ!

「グワァ!!」
「タケシ、大丈夫!?」

 サイクロプスの目にメイスが突き刺さった。目から血を流してサイクロプスの巨体がぐらりと揺れる。

 神父が勇者の手を振りほどこうとした――その反動でメイスが飛んでサイクロプスの目に刺さったのだ。

 サイクロプスは隣にいた彼女の方に向かって倒れた。

「きゃっ、なっ、何っ」

 メキッ!!

 彼女の細い身体は、巨大なサイクロプスの身体にいとも簡単に押しつぶされた。

「くっ…………、苦しい」

 神父と勇者の死体がもみ合いながら辺りのもの次々となぎ倒す。机の上に乗っていた聖書や水差し、そして火のついた燭台を。

 燭台が倒れて、その火が辺りに燃え広がる。

 私は近くに置いてあった灯油を教会のあちこちにバラまいて、そのまま裏口から走って逃げた。
 後ろを振り返らずに…………
 


 
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