水曜の朝、揺れる茶葉を眺め

文字数 817文字

 お湯がポコポコ沸いている。
 コイン型の泡が浮かんではプツっと消えるのを眺めながら、そばに立つ。頃合いをみて、ふたつのティーポットへ、そしてカップへと、お湯を注ぎ温めておく。美味しい紅茶をいただくための ひとてま。

 ティーメジャーで茶葉を一杯。
 それをめがけ、熱湯が勢いよくティーポットへと飛び込んでいく。茶葉が、待ってましたと湯へ絡まり、葉を広げながら上へ下へとダンスを始める。

 砂時計をひっくり返す。
 待つ時間は何もしない。
 黙って茶葉がジャンピングしているのを見守る。

 眺めていると決まって、思い出すことが いくつかある。
 幼稚園の上階にあった大きなトランポリンで、先生の目をぬすみ こっそり遊んでいたこと。
 本当は勝手に子どもが使ってはいけないのに、どうしても好奇心が勝ってしまって、ドキドキワクワクしながら跳んでいたあの気持ち。

 欲しかった赤い屋根の小さなお家が入ったスノードーム。買ってもらったのが嬉しくて、繰り返し逆さにしては、よく飽きないね、と親に何度も言われたこと。

 上へ下へ、上へ下へ、ゆっくりと対流する、
 でも、ほんの短い時間。

 砂時計の砂が流れ落ちるまで。
 茶葉が躍り 湯を紅く染めていくまで。

 忙しくても、好きなことくらいはてまひまをかけること。ときに静止時間をつくること。そうして逆にゆとりを生んでいきたい。
 休日ではなく週半ば、水曜の朝だからこそ、と始めた習慣。凝り固まった心身を一度ほぐすために。

 砂時計の砂が流れ落ちるまで。
 茶葉が躍り 湯を紅く染めていくまで。

 幼いときの記憶と、
 立ちのぼる湯気と、
 部屋を包む香りと。

 この紅茶は絶対に酔えるほどに美味しいはず。
 そして、てまひまをかけた自分にも、ちょっと酔ってみる(笑)
 自分を酔わせる努力を怠らない暮らしっていいじゃない。と、冴えた水色(すいしょく)の紅茶に適量のミルクをまわし入れ、こくりと飲みながら、
 上々な気分になっている自己満足の朝。
 なかなか乙。



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