幕間講義 9 教頭の課題振り返り (中)

文字数 7,024文字

朱寿:それから初学期の最後120話付近で、蒼さんの配慮って事で保健室へ行ったとき、また
   言い合いをしてたんだよ
愛美:あれも私への課題――
優珠:そうね。子供の権利と児童福祉法を分かってるアバズレ――
愛美:――優珠希ちゃん??
優珠:――この先生が、120話で愛美先輩に無理難題を吹っかけてた時の話よね
佳奈:そう言えばあの時も優珠ちゃん、岡本さんを困らせた言うて、エライ剣幕で突っかかっ
   とったな
冬美:……結局妹さんだって、愛美さんに隠れて取り入ろうとしてたんじゃないですか
霧華:違うって冬ちゃん。愛先輩の目の前での話だって――
冬美:――そんな事はどっちだって良いんです。問題はこの妹さんの態度がこんななのに、
   愛美さんと仲が良いのが問題なんです
優珠:ちょっとメス女! わたしに喧嘩売ろうってゆうの?
冬美:良いですけど、愛美さんもワタシも暴力は反対ですよ
優珠:……アンタ。後で面貸しなさいよ
咲夜:すっげぇ! 本編顔負けじゃん! この議長強いじゃん!!
理沙:女子同志でも、愛先輩の前なんだから仲良くしろよ
霧華:……冬ちゃんの人が変わってる……
佳奈:優珠ちゃん。最近岡本さん以外にも負けっぱなしやな
実祝:ん。愛美にかかればみんな骨抜きにもなる
穂高:聞き方によっては凄い想像も出来るわね
優希:ちょっと先生。少し愛美さんや船倉さんと仲が良いからって、変な事言うの辞めて
   下さい。愛美さんは礼文さんや朝日さんとは違うんです
結芽:珍しい。空木君でも人を悪く言うんだ
優希:愛美さんをしっかり守るために、少し先をカンニングして来たんだ。
慶久:つまりこの先はさらに二人の人物が絡むと――

朱寿:――それで! 初学期最後の教頭からの課題、120話と122話で“雨降って地固まる”の
   お話をしたんだけど、ここには教頭先生の隠れた意図もあったんだよね
直実:朱寿(すず)も大変だな
穂高:そうね。だけどさすがの岡本さんも教頭先生の意図には気づかなかったのよね
愛美:……
咲夜:え? あの会話だけでも胃がキリキリするのに、まだ何かあったの?
優希:ちょっと教頭先生。いくら先生の課題だからって僕の彼女を困らせるのは感心しま
   せんよ?
冬美:……ちなみにどんな意図だったんですか? 岡本さん程の舌をお持ちであれば、もう
   分ってはいらっしゃるんですよね
咲夜:どうも、言葉と意志が合ってない気がする
霧華:これも二人のじゃれ合いみたいなものだから気にしない方が良いですよ
理沙:じゃれ合い……愛先輩とじゃれ合い……
愛美:……冬美さんに! 関する教頭先生からの課題に対して、役員としての自覚と生徒の
   意志の相違を見せつけるために、ワザワザ面談の日程を136話の始業式の後に回したの
冬美:――皆さんお聞きになられましたよね。これが愛美さんの舌の絡め方なんです!
優珠:やっぱりこの女は腹黒で十分じゃない!
優希:あれ? 優珠。エピローグで腹白だとか言ってなかった?
佳奈:さすがお兄さん! 優珠ちゃんをよう見てはりますね
蒼依:つまり空ちゃんは、愛ちゃんに対してツンデレなんだね?
咲夜:つ――ツンデ……
結芽:月森さん。そう言うの大好物なの分かるけど、少し笑い過ぎ
理沙:何で? 仲が良いのは良い事じゃないか
倉本:おい霧華。突っ込まなくて良いのか?
霧華:良いの。もう中条さんには何回言っても無駄だって分かって来たの
蒼依:理っちゃんはお説教確定だね
霧華:……だから言ったのに
穂高:別に岡本さんをフォローするわけでもないけど、この時教頭先生にしっかりと退路を
   断たされた上で、完全に言い負けてるのよ。だから岡本さんが計算高いと言えばそんな
   事は無いのよ
佳奈:……
理沙:愛先輩ほどのお方が計算高い訳が無いだろ。全ては純粋な想いからに決まってんだろ?
蒼依:そこだけは理っちゃんの言う通りだって認めてあげる
霧華:冬ちゃん。何か言いたそうだけど良いの?
冬美:良いんです。ここで皆さんに愛美さんを分かってらっしゃらないんですねなんて言えば、
   愛美さんのご学友の方に失礼じゃないですか
咲夜:えっと。隠す気ないよね? それ結局言いたかったんだよね?
慶久:おいそこのねーちゃん。何で俺の時は脅すクセに、この女の場合はだんまりなんだよ
朱寿:わたしは雪野さんをそこまで知らないんだよ。でも慶久くんはそんなの関係なく、
   もう少し愛さんに感謝しても良いと思うんだよ
愛美:ありがとうございます朱先輩。出来れば朱先輩に慶の教育をお願いしても良いですか? 
   私だとあんまり言う事聞いてくれなくて
朱寿:!! もちろんなんだよ!!
蒼依:!!
実祝:また何か、戦いが繰り広げられてる気がする

蒼依:それで! 途中教頭先生が愛ちゃんに受験対策への進捗の探りを入れてるんだよね
朱寿:違うんだよ。136話の教頭先生はある贈り物と次への課題の為に、愛さんに進捗をお聞き
   したんだよ
実祝:珍しい。蒼依が押されてる
優珠:この魔女が本家大元なんだから、こうなるに決まってるじゃない
佳奈:優珠ちゃんはこのお姉さんが苦手なんやな
愛美:出来ればみんな朱先輩と仲良くして欲しいな
直実:ありがとう愛美ちゃん
優希:……それで、教頭先生は愛美さんへ次の課題を渡したんですね
咲夜:……ひょっとして空木君。怒ってる?
結芽:多分余計なことは言わない方が良いよ
慶久:……ねーちゃんに本気なんだな
教頭:ええ。渡しましたよ。その一方で138話でも示唆しましたが、まだ課題達成を出来て
   なかった倉本君にも探りと言うか進捗は伺ってますので、何も岡本さんだけに限った話
   ではありませんよ
穂高:あの教頭先生が、生徒に対して親切に……
教頭:――

と申しますのは、ひょっとして

との事でしょうか
巻本:ちょっと穂高先生?!
愛美:穂高先生。教頭先生は鉄仮面なんかじゃなりませんよ。表向きはそう見えるかもしれま
   せんが、その中身はとっても親切でとっても優しい先生なんです
優珠:ちょっとアンタ! 教頭相手になんて事ゆうのよ!!
佳奈:今日一番の反応の速さやな
教頭:ありがとうございます。さすが岡本さんです。それに比べて――穂高先生。
   この話は面談の際に詳しく、細かくお伺いしますのでそのつもりはしておいてください
穂高:――……
咲夜:先生が、先生に怒られた。こんなの初めて見た
冬美:でも先輩はいつも誰かに叱られてますよね? 以前は担任の先生に成績の件で注意を
   受けてませんでしたか?
実祝:咲夜。もう余計なことは言わない方が良い
蒼依:雪野さん。よく分かってるじゃない。咲ちゃんは来る学校を間違えたの。だからもう
   すぐ転校するんだよ
結芽:防さんの性格も変わって、相当辛辣になってるわね。これ、復学した時クラスの男子
   みんなびっくりするんじゃないかしら
愛美:でも蒼ちゃんをクラスの男子にお任せする気はないから、びっくりするならそれでも
   良いよ
慶久:だったらクラスどころか学校すら違う俺が――
愛美:――慶はアホだから駄目。蒼ちゃんには賢くて、優しくて、絶対暴力も浮気もしない
   優しい男の人でないと駄目なの
霧華:何気に蒼先輩の彼氏さん候補のレベルが……
理沙:んなの愛先輩の親友なんだから当然だろ? 蒼先輩の彼氏って事は愛先輩とも交友を
   持つんだから、そこら辺の男なんてみんな駄目に決まってんだろ

朱寿:わたしは? 愛さんの一番の理解者なんだから、蒼さんは愛さんにお任せするんだよ
蒼依:私は愛ちゃんの一番の親友ですけどね
優珠:何でも良いけど、愛美先輩が文字通り本当の犯罪者に暴力を振るわれてからも課題は
   続くのよね
教頭:はい。流石に恥ずかしながら全く想定しませんでしたが、こっちも腹を括って課題継続
   という措置を取りました
冬美:想定外って……愛美さんがこれだけの目に遭ってそのような言い方なんですか? 
   ワタシ納得出来ません!
霧華:冬ちゃん。絶対それ言いたかっただけだよね?
巻本:でもな180話で教頭先生が渡したマスターキーは本来一般教師ですら持つ事がない鍵なんだ
直実:それを一生徒である愛美ちゃんに渡した教頭先生の覚悟は、すごかったと思いますよ
愛美:教頭先生はそこまで私に……
咲夜:(……ドキドキ)
蒼依:……咲ちゃん。いつになったら帰るの?
優希:!! 愛美さんの状態に気付けなかった僕が言うのもなんですが、そこまでして愛美さん
   でないと駄目だったんですか?
穂高:……それに関しては私からも説明するけど、当時点で岡本さんが初めてだったのよ。
   二人の心を開いたのが
優珠:……
佳奈:確かにウチも岡本さんと出会ってから、少しずつ喋るようにはなったかな
穂高:だから二人の心を閉ざさないためには、どうしても岡本さんの力が必要だったの
巻本:大人の力が及ばなかったのは本当に恥ずべきことだし、以前講義で取り扱った
   【改正児童福祉法】の観点からしても、褒められた措置ではないかもしれない
教頭:それでも私たちは二人の生徒に心を開いて欲しかったのです
優希:確かに愛美さんはものすごく優しいし、あの優珠が懐いたくらいだからお気持ちは
   分かりますけど
冬美:結局は愛美さんのお人柄って事ですよね
実祝:ん。そこだけは完全同意
結芽:そうね。結局それで教室内の空気も明るく、軽くなったし何よりみんな笑えるように
   なったもんね
咲夜:でもそれは愛美さんがただ帰って来てくれた。クラスの仲間が戻って来てくれたって
   のも大きいよ
巻本:みんな……本当にありがとう。そして俺が不甲斐ないばっかりに本当にすまなかった!
霧華:多分。この先生はこう言う先生なんだろうね
冬美:なんて言うか、これだけ色々あっても憎めませんね
愛美:みんなありがとう。だから後は早く、蒼ちゃんにも帰って来てもらえたら、それ以上の
   望みは無いよ
蒼依:愛ちゃん……ありがとう。少しでも早く復学出来るように一日でも早く治すね
理沙:やっぱり友情って言うのは、いつ見ても涙腺が緩むな
佳奈:せやな。ウチもいい加減乗り越えんなアカンのやろな
優珠:佳奈……
穂高:御国さんなら大丈夫よ。そのための努力や時間なら惜しむつもりは無いから、少しずつ
   でもまた頼ってね
教頭:本当にみなさんありがとうございます――倉本君も。将来トップに立つ人間なんです
   から、人と接すると言う事はどういう事なのか、人を大切にする、マネジメントすると
   言うのはどいう事なのか、146話時点で初学期の課題を達成できなかった倉本君には、
   今一度考えて欲しいと思います

巻本:……その達成できてなかった課題に対して、岡本だけは達成出来たからって、最後の
   課題と言う事で課題を変えての話を岡本には、そのままの課題を引き続き倉本には
   継続してたんだったよな
愛美:それが156話・167話・194話以降と鍵の話(180話)なんだよね
倉本:一方俺の方は、この時点で課題の内容自体は消えてるんだよな……
教頭:倉本君には、もう伝えるべき内容は全て伝えたので、後は倉本君次第でしたからね
霧華:……結局倉本先輩って何だったのかな
理沙:さすがにこの犯罪者はもう良いだろ。それよりも今は愛先輩の活躍だろ?
実祝:でもその課題の内容に、そっちの二年も入ってる
冬美:でもそれをワタシ達には知らされなかったんですよね
穂高:さすがに教頭先生から、課題に対する制限があれば言えないでしょ
優希:確かにそうですけど……僕としては彼氏として教えて欲しかった気持ちは正直あります
直実:気持ちは分かるけど、これもさっきの話と一緒な
優希:はい。ちゃんと愛美さんが安心出来るように、ドンと構える。ですよね
直実:そう言う事
朱寿:さすがナオくん。だからいつもたくさん甘えられるんだよ
蒼依:そしてここでもう一つの親切心が教頭先生に隠れてたんだよね
冬美:そうですね。ワタシが冤罪をかけられそうになった、終礼時の連絡事項ですね
優珠:あの時は悪かったわよ……だからその話を蒸し返すのは辞めてちょうだい
佳奈:……なんかあったんか?
八幡:――あっしをハメた――
愛美:――お前は出てくんな!!
全員:?!
愛美:――特に何もなかったよ。ただ優珠希ちゃんと言い合いをして私が勝っただけの話だよ
冬美:……
佳奈:せやったらいつもの通りやんな
咲夜:あの。そこの後輩。ものすごく不満そうだけど
実祝:だから咲夜。余計なことは言わない

穂高:180話によるその教頭先生のマスターキーって言う覚悟を形にした一方、
   190話での通り、倉本君は岡本さんに猛アタックを開始してるのよね
優希:――
優珠:……
結芽:あの。それ以前からうちらのクラスにしょっちゅう顔出して、教室中の空気を悪くして
   たんですけど
実祝:あれはさすがに酷かった
直実:その話も前々回の講義で話してるからお終いな。あくまで教頭先生の課題に添って頼むな
理沙:……
冬美:本当だったら、194話・196話のようにワタシのクラスで聞いた内容と、岡本さんの
   クラスで聞いた内容が違うと分かった時点で、気付けたのかもしれません
愛美:でも、教頭先生からは課題の提示は駄目だからって言われていたから、冬美さんでも
   言えなかったよ
霧華:なんか愛先輩って色々同時にこなしててすごい
穂高:それを教頭先生も全部チェックしてるのよ……すごいでしょ
教頭:それはどいう意味ですか? 生徒の頑張り、取り組みを見届けるのも教師の義務なんで
   すが、まさか穂高先生。私が暇だとでも仰りたいんでしょうか
穂高:いえ! 決してそのような事は考えておりません
優珠:良いザマね
実祝:こっちも咲夜を見てるみたい
蒼依:その途中202話で、学校側は学校説明会の話を愛ちゃんの気持ちを考えずにしてしまった
   んですよね
巻本:すまんかった。本来だったらまずは親御さんに話して、ご家族で決めてもらうべきだった
愛美:でもね蒼ちゃん。確かにびっくりしたし大変だったけど、考える時間はたくさんあった
   よ。逆に蒼ちゃん所は中々打ち明けられなくて、蒼ちゃんも大変だったんじゃないの?
蒼依:確かにそうだけど……でも私はやっぱり愛ちゃんの気持ちの方が大切だよ
愛美:蒼ちゃん……
朱寿:嬉しい事のはずなのに、仲良きことは美しき事なのに、とっても寂しいんだよ
直実:大丈夫だ。朱寿と愛美ちゃんもちゃんと信頼関係は出来てるだろ?
朱寿:うん
慶久:なんか、こう言うおねーさんを見てると、普通なんだけどな
咲夜:何でも良い。早く蒼依さんにもこの教室に戻って来て欲しいよ
結芽:月森さん……
霧華:そうですよね。アタシも早く蒼先輩の顔が見たいです
冬美:ワタシだって改めて愛美さんの友達として、ご学友の方を紹介頂きたいです
愛美:みんな……本当にありがとうね

理沙:その中で愛先輩の頑張りに水を差したのが、やっぱり犯罪者なんだよな
冬美:203話での交渉失敗ですね
霧華:今となってみれば、あれはアタシが協力しなかったのもあったのかもしれません
愛美:そんな事ないよ。倉本君が自分の考えをまとめられるかどうかは、倉本君自身の問題
   だから霧華さんの責任じゃないよ
理沙:そうだぞ彩風。そいうのは男がしっかりしないと駄目なんだ。なのに嫌がる愛先輩に
   ばかり現を抜かすからこう言う結果になったんだ
実祝:ん。それにみんなで話し合ってるのかとまで、巻本先生から指摘されてる
咲夜:愛美さんが頑張ってるの見てるだけに、あれは残念だったよね
朱寿:……愛さん。あの会長さんだけは鍵付きのゴミ箱にポイで良いと思うんだよ
慶久:俺も思うんだけど、何でねーちゃんはここまでされてヘラヘラしてんだ? いくら何でも
   仲間内でする事じゃねーだろ
結芽:こういう時の岡本さんの弟は的を得てるから、侮れないのよね
巻本:でもな、やっぱり好きな女が自分以外の男で幸せそうに笑ってるのを見るのは、
   しんどいぞ? そこだけは会長の気持ちは分かるぞ
倉本:先生……俺は、200話時点でまだその前の課題ですら達成できてなかった事にも焦って
   たんです。だから何も岡本さんだけの責任にするつもりなんて無い
実祝:そう言う割には次の204話で咲夜に暴言吐いてる会長が露呈されてる。矛盾する
愛美:そうなんだよ蒼ちゃん。咲夜さんも私たち同様倉本君に怒鳴られながらも、ちゃんと
   その協力関係を断ち切ってくれてるの
蒼依:だからって……
優珠:前にもゆったけど、あんたは絶対愛美先輩に負ける。それだけは先にゆっとく
佳奈:優珠ちゃん……
優希:勝ち負けじゃないけど、愛美さんがみんなで笑って卒業って思ってる以上、僕は愛美
   さんの気持ちを応援したいし、蒼依さんにも赦す気持ちは持ってもらえたらなって思うよ
朱寿:それに、そうしないと蒼さん自身も心から笑えないと思うんだよ。
   小骨が刺さった状態で笑えるほど蒼さんは器用じゃないと思うんだよ
咲夜:あたしはそのしかるべき時に、全力の気持ちを蒼依さんにぶつけて何とか仲直り、
   赦してもらえるように行動するよ。
   それが愛美さんから教えてもらった、大切な気持ちの伝え方だと思ってる
優希:その時は僕はもちろん、愛美さんだって協力は惜しまないよ

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