* 大谷旋風

文字数 771文字

 盛り上がることを控えなければならないオリンピックとは対照的に、メジャーのホームランダービー、オールスター戦は大盛況だった。その中心にいたのは、日本人である大谷選手。
 今回は特別ルールまで作られ、大谷のためのオールスターとまで言われる前評判。そんな大きな期待通りの大活躍とまでは行かなくて、ホームランダービーでは2度の延長による惜敗。翌日の試合でも残念ながら、みんなが期待したホームランは見られなかった。しかし投手としては先発して初回を3者凡退に抑え、勝利投手に輝いた。こうしてオールスター史上初の二刀流を披露し、歴史に名前を刻んだ。
 
 老若男女、そして野球に興味の薄い人まで引きつけてしまう彼の魅力とは。
 類い希な運動能力に加えて、その人柄だ。日本人を代表してくれているような礼儀正しさ、自然体で誰にでも優しく接し、いつも笑顔。ここまで来るのに手術などの困難に直面してきたことなどまるで感じさせない。
 そして、注目されたあの大舞台でもプレッシャーに押しつぶされるどころか楽しんでいる様子には、その強いメンタルにも非凡さを感じさせられた。と同時に根底にある、野球が大好き、それが本当に伝わってくる。
 
 外国人にも引けを取らないその日本人離れした、小顔でバランスのとれた体型。マウンドでの投球フォームの美しさ、バッターボックスでの力強いスイング、いつ、どれを見ても魅了される。
 レッドカーペット(今回はブルー)を歩く相手が一平さんであったことに多くの女性ファンは安堵したことだろう。このコロナ禍に現れた救世主は爽やかな風とともに、ひととき現実を忘れさせてくれた。
 そして、メジャーという最高の舞台で輝く大谷選手の姿に、一途に白球を追いかける翔平少年の夢が見事に叶った瞬間を見た気がした。


                    2021.7.15

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