都内近郊にある女子大・看護学部に雇われた三十路なかば非正規語学講師さしあたりの見聞記。閉鎖的かつハラスメントまみれで痛み止めの錠剤が手放せない多忙多難の日々でも色とりどりに咲く乙女たち、それぞれとの危なっかしく美わしい交流を活写して、永遠の神秘「女性」に職権濫用なんのそので肉薄せんと試みる。当初よき理解者を得て大学語学の理想を叶えようと奔走するも学内政治により挫折する経緯、また大学教員にありがちな屈折や異常の観察も添える、各４千字弱の連作短編。

○書影: J. W. Waterhouse. Hylas and the Nymphs. 1896