第23話
文字数 2,358文字
ブルー★ベルベット第57話。
――ー翼の部屋(真夜中)
ひかえめで表立って感情を表わすことのない高校生の翼は、クラスでも背が低いほうで、本人は認めたがらないがまだまだ幼さが残っていた。母親に似て繊細で魅力的な顔立ちだが、戸惑ったような弱々しげな表情をしている。その翼にむさぼるようにキスをするボス。翼は口を開け、叫び声をあげ、苦痛に腰をくねらせた。そんなッ、嫌だ、お母さん!
ボスはキスしながら翼の髪へ指を入れ、心の高ぶりを覚えた。下半身が沸き立つような快感が、走り抜ける。
が、実際にはそこはーーーボスと幸子の寝室
裸で白いサテンのシーツに腰まで覆われ、ベッドに仰向けに横たわっているボス。ぼんやりした表情で天井を見つめている。部屋はうす暗く、天井の数カ所から落ちてくる、スポットの明かりが、動ているシーツをきわだって見せている。フェラチオをしていた幸子が辞めてシーツをかぶるようにして頭を出し、ボスの顔を覗きこむと、唾液のついた口もとをぐいっと拭って、恥じらいの声で伏し目がちに「私、こういうのは」
性に関して禁忌的な感覚を抱いてる幸子にはフェラチオは簡単なことではなかった。
ボス「こういうのって?」
女性なら誰もが夢みる生活を手にした幸子。その幸子が読んだことも見たことない愛し方で、官能の世界へいざなおうとするボス。
ボス「こういうのってなんだね?」
幸子は顔をふせた。自分がこんな会話を男性と交わしていることが、幸子には信じられない。
ボス「私だって君がそんなことをする女だとは思わなかったよ」ベッドから降りると、幸子のドレッサーからダイヤモンドのネックレスを取り出してきて、幸子の前に突き出した。
「すべては、これのためか?」ボスは幸子のあごを上に向けようとしたが、幸子はさからった。
「そ、そんな……ちがいます」幸子はそれだけ言うのがやっとだった。いじらしい唇が震えて、涙をこらえようと必死になった。その顔にボスは魅入られ、しばらくの沈黙が流れる。ボスは幸子が怖かっているのを見てとり、ふっとほほ笑んで、幸子の額にかかった髪を指でかきあげ、幸子の顔を、ボスは指でそっと持ち上げた。「冗談だよ。ちょっと君をいじめたくなっただけなんだ。すまなかった」そして、うなじに手をまわすと、犬に首輪でも付けてやるように幸子にネックレスをつける。
幸子は身構えたが、さからわずにいる。その唇をボスの唇が覆い、優しく執拗に愛撫する。
貧しいシングルマザーはボスの格好の餌食だった。
ボスは唇の片端を上げ、笑みを浮かべて、ゆっくりと幸子の頬に指を這わせていく。「もう君は私のものだ、彼が見ていてもかまわないだろ?」
幸子はボスの顔を見ながら彼が言ったことについて考えた。そして青ざめ、そこで目を見開き、ボスを寄せつけまいと両手を前につきだしたが、そのときすでに、ボスは幸子の華奢な手首を掴み、たちまちのうちに抱きかかえるようにして仏壇の前につれてくると、扉をあけた。そして息もつけないほどのキスを浴びせ、息を吸いとって力を奪った。
顔を背け、乱れ髪を頬に貼りつけた顔をあげる幸子。たとえ遺影だとしても、乱暴にされている姿を夫に見せるのは忍びなかった。
「やめて、あなたにはこんな……」権利はない、と言うはずだった。だが、ボスはもう一度舌を伸ばし唾液で濡てる幸子の唇を舐め取っていく。きわまった彼女は頭をのけぞらせる。ボスはなおも続け、幸子の寝巻きを荒々しく引っ張って、脱がせ、体格と力で絨毯に押し倒し、脚を開かせると、パンティに包まれた両脚のつけ根を激しく口でむさぼりはじめる。
軽くのけぞり天を仰、羞恥のあえぎ声をもらす幸子。「嫌ッ!やめて!」
この時、二人は知らなかった。
ボスと幸子の寝室の閉まりきったドアの前。
真っ暗な廊下に立ち尽くした翼がいることに。
遺影に見つめられたボスは恥じらいの風情をことさら楽しみながら起き上がると、幸子の黒髪をひとまとめにつかんで顔を上げさせ、その顔先へペニスを突きつけた。幸子の目が吊り上がり気味になり、不思議な色香が加わり、顔を真っ赤にして、弱々しげにボスの裸の尻へまわして両手で抱え、切なげな鼻息とともに股間で顔面をゆすり奉仕をはじめた。
外の鉄の門扉のギーっという音がし、アキオが帰って来る。
そこでハッと我にかえり、ゆっくりと逃げるようにその場から離れ、二階の自分の部屋に上がって行く翼。
アキオは毎晩新宿2丁目で、ビールをなめながら男を物色し、家に帰ってくる。
ほろ酔い加減のアキオがしばらく一階のリビングにいると、ボスと幸子の行為を察知してか、まるで何かに引き寄せられるようにそっと二人の部屋の前に。あろうことかドアがかすかに開いている。
アキオは魅入られたようにそっと開いたドアに近寄り、ドアをもう少し開けて中を覗いた。息を呑むアキオ。
薄ぼんやりと明るくなっている中で、幸子が夜の女のようにボスの上に乗り、いやらしく首をのけぞらせ、口を開き、荒々しく息を吸って円をかくように腰を揺すっている。その首には宝石がきらめいていた。
――ー翌日・タクシーの中
アキオ「あの女には欲情するのに、僕にはしないんだね」
ボス「カモーン」
アキオ「(不満そうな表情を浮かべ、頭を振りながら窓の方を見る)」
向こうに新宿のビル群が見えている。
タクシーが到着する。
ーーー通りに面した雑居ビルの一階のテナント。
不動産屋が説明しながら明かりを点ける。二人は、バーを出すために物件を見に来ている。
アキオががらんとした狭い店内を見まわしていると、表の通りに白バイが止まる。
ボスがふっと笑った。
不動産屋とアキオがいぶかしげにボスを見る。
ボス「ここに決めたよ」
アキオが聞いた。
「店の名前は?」
ボスは、顔をあげるようにアキオを振り返った。
「バー・ブルーベルベットだ」
――ー翼の部屋(真夜中)
ひかえめで表立って感情を表わすことのない高校生の翼は、クラスでも背が低いほうで、本人は認めたがらないがまだまだ幼さが残っていた。母親に似て繊細で魅力的な顔立ちだが、戸惑ったような弱々しげな表情をしている。その翼にむさぼるようにキスをするボス。翼は口を開け、叫び声をあげ、苦痛に腰をくねらせた。そんなッ、嫌だ、お母さん!
ボスはキスしながら翼の髪へ指を入れ、心の高ぶりを覚えた。下半身が沸き立つような快感が、走り抜ける。
が、実際にはそこはーーーボスと幸子の寝室
裸で白いサテンのシーツに腰まで覆われ、ベッドに仰向けに横たわっているボス。ぼんやりした表情で天井を見つめている。部屋はうす暗く、天井の数カ所から落ちてくる、スポットの明かりが、動ているシーツをきわだって見せている。フェラチオをしていた幸子が辞めてシーツをかぶるようにして頭を出し、ボスの顔を覗きこむと、唾液のついた口もとをぐいっと拭って、恥じらいの声で伏し目がちに「私、こういうのは」
性に関して禁忌的な感覚を抱いてる幸子にはフェラチオは簡単なことではなかった。
ボス「こういうのって?」
女性なら誰もが夢みる生活を手にした幸子。その幸子が読んだことも見たことない愛し方で、官能の世界へいざなおうとするボス。
ボス「こういうのってなんだね?」
幸子は顔をふせた。自分がこんな会話を男性と交わしていることが、幸子には信じられない。
ボス「私だって君がそんなことをする女だとは思わなかったよ」ベッドから降りると、幸子のドレッサーからダイヤモンドのネックレスを取り出してきて、幸子の前に突き出した。
「すべては、これのためか?」ボスは幸子のあごを上に向けようとしたが、幸子はさからった。
「そ、そんな……ちがいます」幸子はそれだけ言うのがやっとだった。いじらしい唇が震えて、涙をこらえようと必死になった。その顔にボスは魅入られ、しばらくの沈黙が流れる。ボスは幸子が怖かっているのを見てとり、ふっとほほ笑んで、幸子の額にかかった髪を指でかきあげ、幸子の顔を、ボスは指でそっと持ち上げた。「冗談だよ。ちょっと君をいじめたくなっただけなんだ。すまなかった」そして、うなじに手をまわすと、犬に首輪でも付けてやるように幸子にネックレスをつける。
幸子は身構えたが、さからわずにいる。その唇をボスの唇が覆い、優しく執拗に愛撫する。
貧しいシングルマザーはボスの格好の餌食だった。
ボスは唇の片端を上げ、笑みを浮かべて、ゆっくりと幸子の頬に指を這わせていく。「もう君は私のものだ、彼が見ていてもかまわないだろ?」
幸子はボスの顔を見ながら彼が言ったことについて考えた。そして青ざめ、そこで目を見開き、ボスを寄せつけまいと両手を前につきだしたが、そのときすでに、ボスは幸子の華奢な手首を掴み、たちまちのうちに抱きかかえるようにして仏壇の前につれてくると、扉をあけた。そして息もつけないほどのキスを浴びせ、息を吸いとって力を奪った。
顔を背け、乱れ髪を頬に貼りつけた顔をあげる幸子。たとえ遺影だとしても、乱暴にされている姿を夫に見せるのは忍びなかった。
「やめて、あなたにはこんな……」権利はない、と言うはずだった。だが、ボスはもう一度舌を伸ばし唾液で濡てる幸子の唇を舐め取っていく。きわまった彼女は頭をのけぞらせる。ボスはなおも続け、幸子の寝巻きを荒々しく引っ張って、脱がせ、体格と力で絨毯に押し倒し、脚を開かせると、パンティに包まれた両脚のつけ根を激しく口でむさぼりはじめる。
軽くのけぞり天を仰、羞恥のあえぎ声をもらす幸子。「嫌ッ!やめて!」
この時、二人は知らなかった。
ボスと幸子の寝室の閉まりきったドアの前。
真っ暗な廊下に立ち尽くした翼がいることに。
遺影に見つめられたボスは恥じらいの風情をことさら楽しみながら起き上がると、幸子の黒髪をひとまとめにつかんで顔を上げさせ、その顔先へペニスを突きつけた。幸子の目が吊り上がり気味になり、不思議な色香が加わり、顔を真っ赤にして、弱々しげにボスの裸の尻へまわして両手で抱え、切なげな鼻息とともに股間で顔面をゆすり奉仕をはじめた。
外の鉄の門扉のギーっという音がし、アキオが帰って来る。
そこでハッと我にかえり、ゆっくりと逃げるようにその場から離れ、二階の自分の部屋に上がって行く翼。
アキオは毎晩新宿2丁目で、ビールをなめながら男を物色し、家に帰ってくる。
ほろ酔い加減のアキオがしばらく一階のリビングにいると、ボスと幸子の行為を察知してか、まるで何かに引き寄せられるようにそっと二人の部屋の前に。あろうことかドアがかすかに開いている。
アキオは魅入られたようにそっと開いたドアに近寄り、ドアをもう少し開けて中を覗いた。息を呑むアキオ。
薄ぼんやりと明るくなっている中で、幸子が夜の女のようにボスの上に乗り、いやらしく首をのけぞらせ、口を開き、荒々しく息を吸って円をかくように腰を揺すっている。その首には宝石がきらめいていた。
――ー翌日・タクシーの中
アキオ「あの女には欲情するのに、僕にはしないんだね」
ボス「カモーン」
アキオ「(不満そうな表情を浮かべ、頭を振りながら窓の方を見る)」
向こうに新宿のビル群が見えている。
タクシーが到着する。
ーーー通りに面した雑居ビルの一階のテナント。
不動産屋が説明しながら明かりを点ける。二人は、バーを出すために物件を見に来ている。
アキオががらんとした狭い店内を見まわしていると、表の通りに白バイが止まる。
ボスがふっと笑った。
不動産屋とアキオがいぶかしげにボスを見る。
ボス「ここに決めたよ」
アキオが聞いた。
「店の名前は?」
ボスは、顔をあげるようにアキオを振り返った。
「バー・ブルーベルベットだ」