第8話
文字数 937文字
この前、オナニーしていて、いく時になったら不意に翔の顔が頭に浮かび、僕は、お母さん!と言って、手にティッシュをわしづかみにしてペニスを握りしめたまま射精した。この出来事には困惑することばかりだった。変な気分だった。安心感が欲しいのはいうまでもないし、僕がお母さんみたいな女性を好きなのは確かなんだけど、まさか男の翔でいくなんて予期しなかった。そんなことははじめてだった。
この思いを追求していくと、僕にもホモセクシャルの気があるのかもしれない。いや、もっと正確に言えばエディプスコンプレックスなのかもしれない。まあ、その両方かもね。
でね、その時、翔が帰ってきたから、とびあがって、慌ててティッシュをポケットに入れた。
そしてシャアシャアと、おかえり。
ただいま。
ポケットの中に精液の匂いがするティッシュを突っ込んで、何気なさをよそおったわけだけどさ。まったく、汚ったねえったらありゃしないね。だいいち捨てる場所に困った。トイレに流してもいいものなんだろうか、詰まったりしないだろうかてね。
僕は翔の顔の表情を窺った。翔はショーパブから疲れきった様子で帰ってきて、ぼんやりして暗かった。物悲しい雰囲気を漂わせていた。
何か言わなければと思って、聞いてみた。
翔。
うん?
どうしたんだい?身体の具合でも悪いのかとたずねると、翔は冷蔵庫の前で少し振り返った。
大丈夫だよ、なんで?
その時だけはお母さんの顔ではなく、父親とか兄貴の顔だった。酒を飲み、革張りのソファーに身を沈めていた。うしろからみるとなんとなく寂しそうだった。誰だってつらいことがあるんだろうな。彼は今までどんな人生を送ってきたんだろう……。
ショーパブに来てる翔のファンの人たちは彼のこんな顔を見たことがない。そう思うよ。僕だけに見せる顔。けれど僕はあんまりこの顔が好きじゃないんだな。まるでジギルとハイドってやつだよ。
けど、芸能界のようなところに身をおいてる奴らなんかみんなそうかもしれない。一瞬で切り替わるその姿をファンの人たちは見に来ているんだ。
よく翔が言っていた。地獄とは自分で作るもんだってね。
ことばの意味はよく分からなかったけど、とにかくそういうことなんだ。
僕は、へーってな感じで聞いていたよ。
それが僕の勤めなのさ。
この思いを追求していくと、僕にもホモセクシャルの気があるのかもしれない。いや、もっと正確に言えばエディプスコンプレックスなのかもしれない。まあ、その両方かもね。
でね、その時、翔が帰ってきたから、とびあがって、慌ててティッシュをポケットに入れた。
そしてシャアシャアと、おかえり。
ただいま。
ポケットの中に精液の匂いがするティッシュを突っ込んで、何気なさをよそおったわけだけどさ。まったく、汚ったねえったらありゃしないね。だいいち捨てる場所に困った。トイレに流してもいいものなんだろうか、詰まったりしないだろうかてね。
僕は翔の顔の表情を窺った。翔はショーパブから疲れきった様子で帰ってきて、ぼんやりして暗かった。物悲しい雰囲気を漂わせていた。
何か言わなければと思って、聞いてみた。
翔。
うん?
どうしたんだい?身体の具合でも悪いのかとたずねると、翔は冷蔵庫の前で少し振り返った。
大丈夫だよ、なんで?
その時だけはお母さんの顔ではなく、父親とか兄貴の顔だった。酒を飲み、革張りのソファーに身を沈めていた。うしろからみるとなんとなく寂しそうだった。誰だってつらいことがあるんだろうな。彼は今までどんな人生を送ってきたんだろう……。
ショーパブに来てる翔のファンの人たちは彼のこんな顔を見たことがない。そう思うよ。僕だけに見せる顔。けれど僕はあんまりこの顔が好きじゃないんだな。まるでジギルとハイドってやつだよ。
けど、芸能界のようなところに身をおいてる奴らなんかみんなそうかもしれない。一瞬で切り替わるその姿をファンの人たちは見に来ているんだ。
よく翔が言っていた。地獄とは自分で作るもんだってね。
ことばの意味はよく分からなかったけど、とにかくそういうことなんだ。
僕は、へーってな感じで聞いていたよ。
それが僕の勤めなのさ。