第19話
文字数 3,035文字
無理しないでね、倒れないでね・・・
相手を思いやるような言葉にみえるが、『あなたが倒れたら、あたしはどうすればいいの・・・』という言葉が隠れている
言った本人も、周りの人間だって、隠れている言葉に気付けない
それに気付いたうちのおばあちゃんって、本当すごいわー
大竹さんが、「常連さんがね、『ずっと一緒にいたいって気持ちはあるの、本当に。だって寂しいから・・・』って言うのを遮って、さくらちゃんが『あなたの寂しさを埋めるために、娘さんは生きてるんじゃないですよ。あなたは、なんのために子供を産んだんですか?自分の面倒をみてもらうため?寂しさを埋めるためですか?』って。さくらちゃんが、この状態になったら止められないじゃない。」と言った。
向井さんは、大きく頷いた。
「うろたえる常連さんにさくらちゃん、『娘さんはロボットじゃないですよ、人間ですよ。ちゃんと見てあげないと』って言ったのね。それでやっと常連さんも気づいたの。娘さんが物凄く疲れているってことに」と大竹さん。
でも、どうしてこうなったのか、今後どうすれば良いのかわからない常連さんは、プチパニックになったそうだ。
そこで、うちのおばあちゃんが娘さんと一緒に、どんなサービスが受けられるのかを市役所に聞きに行くことになったらしい。
しかも、その日のうちに。
おばあちゃんらしいなー
親切というか、お節介というか・・・
「まだ、カーラーも外してないのにさー」と大竹さん。
その日のパーマは、いつもよりきつくあたってしまったらしい。
「でもね、ここからがまた大変だったのよ。市役所でいろんなサービスを聞いて、後日、娘さんが常連さんに説明したら、常連さんが難色を示したんだって」と大竹が言った。
おそらく、うちのおじいちゃん状態だったのだろう
みんな、施設に入るのは嫌なのね・・・
「それでね、常連さん、全部一人でやるって言い出して、タクシー呼んで買い物に出掛けたんだけど・・・」
ほうほう、それでそれで?
「常連さんが家に帰ってきたときに、荷物を持ってなかったらしいのよ。それで娘さんが聞いたら、タクシーに置き忘れしてるかもってなって。でも、タクシー会社もわからないから、娘さんが警察行ったりしてさ。そしたら常連さんが『施設に入りたい』って言い出だしたらしいの」と大竹さん。
常連さん、物凄く落ち込んだんだな・・・
その気持ち、何となく分かる・・・
「それで、さくらちゃんが、『いきなり施設に入るんじゃなくていいんじゃないか』って、提案しに常連さん宅まで行ったのよ。あたしもついて行ったけどね、心配だから」と大竹さん。
まず、デイサービスを利用して娘さんの時間を作り、常連さんが娘さんに依存しすぎないような生活環境を作れるように、おばあちゃんと常連さん、娘さんの3人で考えたそうだ。
その時に、老人ホームなどの施設についても、3人で一緒に勉強したらしい。
「常連さんとさくらちゃん、すごく仲良くなってさ、大親友って感じ?そんで、その時にさ、さくらちゃんが色んな老人施設があることを勉強してくれて、このシェアハウスができたのよ」と大竹さん。
「そんな事があったのね。さくらちゃんが施設のこと詳しいの、大ちゃんがいるからだと思ってたわ」と向井さんが言った。
「大のことは、家で面倒みればいいと思ってたみたいなんだけどさ。さくらちゃん自身も、もっと年を取ったら子供に依存しちゃうんじゃないかって。だから、二人でどこかに入ろうかとか、いろいろ考えていたらしいのよ」と大竹さんが教えてくれた。
おばあちゃんが、そんなことを考えていたとは、知らなかった
おそらく、おじいちゃんやお父さん、お母さんも知らないだろう
「あたしは、お母さんとずっと一緒にいたいな。お母さんが、どう思ってるかわからないけど」とフジやんが言った。
「家族それぞれ、いろんな答えがあるんだろうけど、正解がわからないから、話し合うのも難しいわよね」と向井さんが言うと、すかさず大竹さんが口を開いた。
「正解がないからこそ、自由に考えられるのよ!」
「そうか。そうですよね!」とフジやんが嬉しそうに言った。
「これ、さくらちゃんの名言?口癖?いっつも言ってたわね」と大竹さんが言い、向井さんが「さくらちゃんは人と違うのよね、考え方が。だから、相談したくなっちゃうの」と言った。
「そう!解決しなくても、前向きになれるのよ」と大竹さん。
だから、おばあちゃんのお葬式には、沢山の人がきてたんだな
あたしも、言われたことあったけど、最近は『かなちゃんは大丈夫』のみだった
あたしが自信なさげで、不安そうな感じだから、心配だったんだろうなー
お父さんとお母さんには、おばあちゃんも何も言えなかったみたいだし・・・
さすがのおばあちゃんでも、あの二人の関係修復は無理よね・・・
向井さんが「わたしはね、子供がいないから、ゆくゆくは老人ホームに入ろうと思ってね。オシャレなとこあるのよー」と言った。
そして、大竹さんはというと、自分の親を介護してたので、自分の子供に同じような事はさせたくないと、やはり老人ホームを予定していると言った。
向井さんと大竹さんは、おばあちゃんとすでに老人ホームを見学済で、目星はつけているようだった。
「老人ホームの前に、ケアハウスかサービス付き高齢者向け住宅に入るかもしれないのよねー」と二人共、楽しそうに話していた。
ケアハウス?サービス付き高齢者向け住宅?
そんなに色んな施設があるなんて知らなかった
老人ホームと何が違うのだろう??
「話すんだったら、今からのほうが良いですよね?」と、フジやん。
「なんか、お年頃になってからだと、逆に話しにくいかなって思って・・・」と言うフジやんに大竹さんが、「それもいいかもね。今は色んな施設があって、選択肢も色々あるから、話しておくのはいいんじゃない?」と言った。
偉いなフジやん
あたしは、話し合うなんて無理だ・・・
だって、親の面倒を見ようなんて考えたこともないし・・・
「かな、人それぞれだから、同じことしなくていいんだよ」とフジやんが言ってくれた。
大竹さんも、「そうだよ。あとね、老後を一人で暮らしたいっていう人もいるのよ。あたしの知り合いで、年取ったからって、娘夫婦と同居した人がいるんだけど、娘夫婦が共働きだから孫の面倒を見なきゃいけなくなっちゃったらしいの。それが思ってたより、かなり大変だったらしいのね。それで、また一人暮らししてる人もいるのよ。本当に人それぞれだから」と言ってくれた。
あたしは結婚しないから、孫はできないけど、あたしなんかと一緒に暮らしたくないかもね・・・
特にお母さんは・・・
「おまえは、老後のことを考える前に受験勉強だろ」と椎名。
「じゃあ、優くんに勉強、見てもらえば?」と向井さんがあたしに言いつつ、うちのお父さんにショートメッセージを送り、「夕飯一緒に食べましょうね」と言った。
早い!
T子といい向井さんといい、スマホ操作が早すぎる!!
向井さんはフジやんも夕飯に誘ったが、本日、家の夕飯当番とのことで、フジやんは帰り支度をした。
フジやんの家族構成を聞いた向井さんは、フジやん、お母さん、お兄さんの3人分、炊き込みご飯を渡していた。
フジやんは、美味しそうな炊き込みご飯に感動しつつ、「かな、気を付けて」と言って帰って行った。
だから、どう気をつければいいのー?!
相手を思いやるような言葉にみえるが、『あなたが倒れたら、あたしはどうすればいいの・・・』という言葉が隠れている
言った本人も、周りの人間だって、隠れている言葉に気付けない
それに気付いたうちのおばあちゃんって、本当すごいわー
大竹さんが、「常連さんがね、『ずっと一緒にいたいって気持ちはあるの、本当に。だって寂しいから・・・』って言うのを遮って、さくらちゃんが『あなたの寂しさを埋めるために、娘さんは生きてるんじゃないですよ。あなたは、なんのために子供を産んだんですか?自分の面倒をみてもらうため?寂しさを埋めるためですか?』って。さくらちゃんが、この状態になったら止められないじゃない。」と言った。
向井さんは、大きく頷いた。
「うろたえる常連さんにさくらちゃん、『娘さんはロボットじゃないですよ、人間ですよ。ちゃんと見てあげないと』って言ったのね。それでやっと常連さんも気づいたの。娘さんが物凄く疲れているってことに」と大竹さん。
でも、どうしてこうなったのか、今後どうすれば良いのかわからない常連さんは、プチパニックになったそうだ。
そこで、うちのおばあちゃんが娘さんと一緒に、どんなサービスが受けられるのかを市役所に聞きに行くことになったらしい。
しかも、その日のうちに。
おばあちゃんらしいなー
親切というか、お節介というか・・・
「まだ、カーラーも外してないのにさー」と大竹さん。
その日のパーマは、いつもよりきつくあたってしまったらしい。
「でもね、ここからがまた大変だったのよ。市役所でいろんなサービスを聞いて、後日、娘さんが常連さんに説明したら、常連さんが難色を示したんだって」と大竹が言った。
おそらく、うちのおじいちゃん状態だったのだろう
みんな、施設に入るのは嫌なのね・・・
「それでね、常連さん、全部一人でやるって言い出して、タクシー呼んで買い物に出掛けたんだけど・・・」
ほうほう、それでそれで?
「常連さんが家に帰ってきたときに、荷物を持ってなかったらしいのよ。それで娘さんが聞いたら、タクシーに置き忘れしてるかもってなって。でも、タクシー会社もわからないから、娘さんが警察行ったりしてさ。そしたら常連さんが『施設に入りたい』って言い出だしたらしいの」と大竹さん。
常連さん、物凄く落ち込んだんだな・・・
その気持ち、何となく分かる・・・
「それで、さくらちゃんが、『いきなり施設に入るんじゃなくていいんじゃないか』って、提案しに常連さん宅まで行ったのよ。あたしもついて行ったけどね、心配だから」と大竹さん。
まず、デイサービスを利用して娘さんの時間を作り、常連さんが娘さんに依存しすぎないような生活環境を作れるように、おばあちゃんと常連さん、娘さんの3人で考えたそうだ。
その時に、老人ホームなどの施設についても、3人で一緒に勉強したらしい。
「常連さんとさくらちゃん、すごく仲良くなってさ、大親友って感じ?そんで、その時にさ、さくらちゃんが色んな老人施設があることを勉強してくれて、このシェアハウスができたのよ」と大竹さん。
「そんな事があったのね。さくらちゃんが施設のこと詳しいの、大ちゃんがいるからだと思ってたわ」と向井さんが言った。
「大のことは、家で面倒みればいいと思ってたみたいなんだけどさ。さくらちゃん自身も、もっと年を取ったら子供に依存しちゃうんじゃないかって。だから、二人でどこかに入ろうかとか、いろいろ考えていたらしいのよ」と大竹さんが教えてくれた。
おばあちゃんが、そんなことを考えていたとは、知らなかった
おそらく、おじいちゃんやお父さん、お母さんも知らないだろう
「あたしは、お母さんとずっと一緒にいたいな。お母さんが、どう思ってるかわからないけど」とフジやんが言った。
「家族それぞれ、いろんな答えがあるんだろうけど、正解がわからないから、話し合うのも難しいわよね」と向井さんが言うと、すかさず大竹さんが口を開いた。
「正解がないからこそ、自由に考えられるのよ!」
「そうか。そうですよね!」とフジやんが嬉しそうに言った。
「これ、さくらちゃんの名言?口癖?いっつも言ってたわね」と大竹さんが言い、向井さんが「さくらちゃんは人と違うのよね、考え方が。だから、相談したくなっちゃうの」と言った。
「そう!解決しなくても、前向きになれるのよ」と大竹さん。
だから、おばあちゃんのお葬式には、沢山の人がきてたんだな
あたしも、言われたことあったけど、最近は『かなちゃんは大丈夫』のみだった
あたしが自信なさげで、不安そうな感じだから、心配だったんだろうなー
お父さんとお母さんには、おばあちゃんも何も言えなかったみたいだし・・・
さすがのおばあちゃんでも、あの二人の関係修復は無理よね・・・
向井さんが「わたしはね、子供がいないから、ゆくゆくは老人ホームに入ろうと思ってね。オシャレなとこあるのよー」と言った。
そして、大竹さんはというと、自分の親を介護してたので、自分の子供に同じような事はさせたくないと、やはり老人ホームを予定していると言った。
向井さんと大竹さんは、おばあちゃんとすでに老人ホームを見学済で、目星はつけているようだった。
「老人ホームの前に、ケアハウスかサービス付き高齢者向け住宅に入るかもしれないのよねー」と二人共、楽しそうに話していた。
ケアハウス?サービス付き高齢者向け住宅?
そんなに色んな施設があるなんて知らなかった
老人ホームと何が違うのだろう??
「話すんだったら、今からのほうが良いですよね?」と、フジやん。
「なんか、お年頃になってからだと、逆に話しにくいかなって思って・・・」と言うフジやんに大竹さんが、「それもいいかもね。今は色んな施設があって、選択肢も色々あるから、話しておくのはいいんじゃない?」と言った。
偉いなフジやん
あたしは、話し合うなんて無理だ・・・
だって、親の面倒を見ようなんて考えたこともないし・・・
「かな、人それぞれだから、同じことしなくていいんだよ」とフジやんが言ってくれた。
大竹さんも、「そうだよ。あとね、老後を一人で暮らしたいっていう人もいるのよ。あたしの知り合いで、年取ったからって、娘夫婦と同居した人がいるんだけど、娘夫婦が共働きだから孫の面倒を見なきゃいけなくなっちゃったらしいの。それが思ってたより、かなり大変だったらしいのね。それで、また一人暮らししてる人もいるのよ。本当に人それぞれだから」と言ってくれた。
あたしは結婚しないから、孫はできないけど、あたしなんかと一緒に暮らしたくないかもね・・・
特にお母さんは・・・
「おまえは、老後のことを考える前に受験勉強だろ」と椎名。
「じゃあ、優くんに勉強、見てもらえば?」と向井さんがあたしに言いつつ、うちのお父さんにショートメッセージを送り、「夕飯一緒に食べましょうね」と言った。
早い!
T子といい向井さんといい、スマホ操作が早すぎる!!
向井さんはフジやんも夕飯に誘ったが、本日、家の夕飯当番とのことで、フジやんは帰り支度をした。
フジやんの家族構成を聞いた向井さんは、フジやん、お母さん、お兄さんの3人分、炊き込みご飯を渡していた。
フジやんは、美味しそうな炊き込みご飯に感動しつつ、「かな、気を付けて」と言って帰って行った。
だから、どう気をつければいいのー?!
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