第16話

文字数 1,550文字

 あたしは、老人かもしれない

 おじいちゃんがシェアハウスに入居してから、学校帰りにいつもシェアハウスに寄ってしまう・・・

 とっても、落ち着くのだ

 そして、唯一無二の親友であるフジやんの家の方向とシェアハウスが同じなので、一緒に帰ることができるー!!


 フジやんは、あたしが最近、椎名とよく一緒にいるので、ヤキモチをやいているらしい

 なんで、あたしなんかに?
 うれしいんですけどー







「ヤキモチ焼いてるから言うんじゃないけど・・・、椎名・・・、あいつ危険だと思うんだよね。かなも知ってると思うんだけど・・・」と、フジやん。


 噂話が嫌いなフジやんは今まで、椎名の過去の事件について話さなかった。

 でも、あたしに椎名が接近してきているのが心配だからと、重い口を開いた。



 椎名は、小学生の時にいじめられていた。

 フジやんと椎名は同じ小学校だったが、一度も同じクラスになったことはなく、でも、椎名がいじめにあっているということは知っていたそうだ。


「たぶん、格好が良くて勉強もできるから、男子にやっかまれたんだと思う」とフジやん。


 小学3年生の時、事件は起きた。



 椎名がいじめっ子達に向かって、空き地に落ちていた『糞』を投げたのだ。
 そして、糞まみれになったいじめっ子らが、みんな転校したらしい。


 その事件の噂は、うちの小学校にもまわってきていた。



「ヤキモチは焼いている。でも、かなが好きなら誰と付き合っても良い・・・良いんだけど・・・」


 フジやんが、真剣に考えてくれている
 あたし、付き合ってないのに・・・


「かながその気がなくても、椎名はかなに接近してきている。わたしわかるの。」


 おじいちゃんがシェアハウスにいるから


「おじいちゃんがシェアハウスにいるからだけじゃないよ!」





 フジやんと話すときは、いつもこうなのだ

 フジやんは、あたしの思っていることが手に取るようにわかるらしい

 お母さんやクラスの子たちには、「何を考えているかわからない」と言われ続けてきたが、フジやんだけは違った

 


「椎名もわたしみたいに、かなのこと、わかるんだと思う。」とフジやん。

 そうかな・・・

「わかるということはね・・・、それはね・・・、かなのことが好きだってことなの・・・」

 えー、えー、えー!!!!

「そうなの!わたしと同じくらい、かなのことが好きなんだよ。そうじゃなきゃ、」

 そんなことないよ

「うううん、そうなの!よく見てなきゃ、その人のこと、わからないでしょ。ってことは、よく見てるんだよ。」


 この前、椎名と話してた時、あたしのことをよく理解してたような・・・
 よく見てるのは、そうかもね・・・


「よく見てるってことは、好きってことなの」

 だから、なぜ??

「好きだと見ちゃうものなの!なんか、気になっちゃうの。だから、よく見てるってことは、好きってことなのよ!!」

「フジやん、そんなことないよ」

「あ、ごめんね。興奮しちゃって・・・」



 フジやんは、椎名がいじめられてたのは可哀想だし、いじめっ子たちは糞を投げられてもしょうがないと思うけど、「糞を投げる奴」というのもいかがなものかと。

 そして、「糞を投げる頭の良い人間と、糞を投げる頭の悪い人間がいる場合、糞を投げる頭の良い人間の方が相当ヤバいと思う」とも言った。



 あたしも、そう思う・・・
 それに、その頃の噂では、『糞』ではなく・・・


「そう!その頃はさ、椎名の・・・・椎名のウンチっていうの?・・・それを投げたなんてウワサもあったんだけど、それはさすがにないと思うんだ。犬とか猫とかのウンチだと思うんだけど・・・」とフジやん。



「おれのウンチだ」



 ぎゃーーーーーー!!!!!




 振り返ると、いつの間にか、椎名が後ろにいた。

 フジやんとあたしは、とんでもない速さで走り、その場から逃げた。
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