5.灰かぶり姫
文字数 1,424文字
しかしエステルはためらった。
召し出し無しに王の前に出る者は死刑となるからである。
エステル自身もユダヤ人であり、王妃であっても勅令の適用外ではないと言う。
エステルは三日間の断食を経て、王に直訴することを決めた。
死を覚悟してのことであった。
高価な香油の代わりに、灰と汚物で頭を覆う。
その身をひどく痛めつけ、乱れた髪のままに祈った。
「不梳頭不去蟣蝨衣服垢汚不食肉不近婦人如喪人 名之為持衰」
髪は切らず、付いた蚤なんかもそのまま。
服は汚れっぱなしで、肉食は禁じて、女性を近づけない。
まるで死人のように扱う人のことを持衰(じさい)と名づけたのさ。
嘆願者の衣服を脱ぎ、晴れ着をまとった。