バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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79件のファンレター

バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

矛盾する二つの創造物語/神にかたどられたのは「白人」男だけなの?

エピソード#3の「ユダヤ民話」というジャンルははじめて知りました。ヘブライ語に込められた聖書の書かれたオリジナルな意味の吟味もさることながら、その一方で、後世の人が、聖書の逸話から、さらに発展させた意味・メッセージを見出すというあたりも、聖書の魅力であると、あらためて思いました。

私は聖書の中に込められたメッセージは、それが伝統的なものであれ、進歩的なものであれ、そこに「真実」があれば、そこから学びが得られればと思っております。エピソード#4で、mikaさんが私のファンレターに応えて書いていただいた「矛盾する二つの創造物語」の創世記1章27節の、「神の似姿」というフレーズの受け止め方には同感です。mikaさんは「特定の国や民族集団だけを「人間の規範」とするような考えも批判すべきだろう。」と書かれていますがが、この姿勢に似たテーマが扱われたものにアメリカのテレビシリーズ「Highway to heaven」のエピソード「The silent bell」があり、私は、何年も前に見たのですが、いまだによく思い出します。このシリーズは「大草原の小さな家」を作ったマイケル・ランドンが「大草原」終了後に作ったもので、主人公のスミス(演ランドン)が神から派遣された天使という設定で、小さな世直しを小さな奇跡で行うという内容で一回ごとに完結します。このエピソードは、教会の日曜学校が舞台なのですが、子供たちの中には白人も黒人もいます。保守的な司祭が、子供たちが描く絵を、スミスと一緒に見回るときのシーンが以下。

(司祭が黒人の子供が、夕食の肌の人物を書いているのを見て、その子供に質問)「Who are you painting? 誰の絵を描いてるのかな」
(少年)「I’m painting God 神様を描いてるんだ」
(神は白人と信じているため顔をしかめる司祭。これに対して、スミス)「Genesis 1:27,“so God created man in his own image, in the image of God created he him 創世記1章27節, 神は人を創造したとき、神の似姿として人を造られた”」
(司祭は反論できなくなる)

このエピソードは以下のURLで英語の字幕付きでみることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=CUGA1sPbnBI

素晴らしい回ですが、全編は45分ですので、上記のシーンは13分過ぎくらいにでてきますから御覧いただければ。お気にいられたら、全編の鑑賞を。途中、厳しい場面もありますが、ラストは感動的ですので。

荒野の狼

返信(1)

荒野の狼さん、お読みいただきありがとうございます! 「特定の国や民族集団だけを「人間の規範」とするような考え」という台詞は、まさに「白人」男性だけを人間とみなして優位に扱ってきた歴史を指して書きました。荒野の狼さんに台詞の意図を正しく読み取ってもらえて、本当にうれしいです。
ご紹介のテレビドラマ、さっそく見てみました。黒人の子供が自分の肌の色と同じ神さまを描いて、何が悪いのか。この子供も神さまにかたどられて生まれてきたのだから。というメッセージを最小限の言葉で簡潔に表現していて、素晴らしい場面だと感じました。素敵なドラマを教えていただきありがとうございます^^ 後ほどこの場面のつづきも見てみようと思います。アメリカはクリスチャン人口が多いので、こうした聖書や信仰をテーマとしたドラマが日頃から制作されているのですね。
「人の生涯は草のよう。野の花のように咲く。風がその上を吹けば、消え失せ、生きていた所を知る者もなくなる」(詩編103:15-16)とあるように、人は小さく弱い存在です。しかし、神が人を「ご自分にかたどって」造られたのだというメッセージは、わたしたち一人一人に人間としての尊厳があることを確信させてくれます。

ユダヤ民話で語り継がれている創造物語を読むと、創世記では書かれていないアダムとエバ、カインとアベルの人間的葛藤が生き生きと描かれていて、創世記を理解する助けになると思います。今回ご紹介した『お静かに、父が昼寝しております ―ユダヤの民話』は、岩波少年文庫なので翻訳の言葉づかいも平易で、おすすめの一冊です。創世記では説明されていない、なぜ神がアベルのささげものだけを受け取り、カインのささげものを無視したのか、という問題に対してユダヤ民話では次のように説明しています。アダムとエバが息子たちに信仰の継承をした時、アベルは父母の信仰を受け入れたが、カインは反発して信仰を受け入れなかった。兄弟は初めての収穫を神にささげるように父から命じられた。羊飼いとなったアベルは神に感謝して自分の得たもっとも良いもの(よく肥えた初子の羊)をささげたが、農夫となったカインは父の命令に嫌々従い、自分にはもっとも良いものを取り、神にはもっとも悪いもの(腐った作物など)をささげた。神はカインの心を見抜いており、アベルのささげものだけを受け取った。逆上したカインがアベルを殺して…。という説明がユダヤ民話では加えられていて、なるほど説得力があるなと思いました。
ちなみに、この同じ問題に対して歴史学者は、牧畜を生業とする民族集団(イスラエルの民の父祖)は、古代では定住して農耕する集団よりも一段と低い立場にあったことから、羊飼いを農民よりも神の御心に適っているとする物語(カインとアベル)を伝えたのだ、という説明をしています。歴史学に基づいた説明は正しいのかもしれませんが、わたしとしてはユダヤ民話の説明(その信仰によってアベルは神から選ばれた)の方が納得できるなと思います。
次回はノアの箱舟のお話です。引き続きよろしくお願いいたします!