第1話 ことのはじまり

文字数 1,920文字

 わたし、真紘こと、花澄真紘は、新聞記者になるという夢を胸に抱いて、

10年連続で、県の新聞コンクールの上位入賞校だという

白花高校の新聞部に入部したものの‥‥

どういうわけなのか、わたしが入部してから、

我が高校は、連続して入賞を取り逃がしている。

それもこれも、わたしが入部した当初、

部長になった3年の星花光彦のせいにちがいないとにらんでいる。

 今年の新入部員は私を入れてわずか2名だった。

今や、部員7名の弱小部とかしている我が部の存続をはかるためには、

あらゆるコンテストに応募しまくって、何かの賞を取り、

「白花高校新聞部」の名声を高めるしか他にない。

「部長。市主催の新聞コンテストにエントリーしませんか? 

もし、優勝したら、白花タイムズの宣伝にもなると思うんです」

 初夏のある日の放課後。わたしは、久しぶりに、

部室に顔を出した光彦先輩にお伺いを立てた。

「市主催のコンテスト? 何かメリットあるわけ? 

もっと、有名なコンテストの方がいいと思うぜ」

 案の定、光彦先輩はやる気ゼロ。部長の頭の中は、

いかにして、ジョシの人気を得るかしかないみたい。

その証拠に、高校入学以来、放課後は、おしゃれなイメージのカフェや

若者に人気のショップを掛け持ちでアルバイトしているらしい。

先日は、ファッション誌の読者コーナーに載ったという。

新聞部に入部したのは、いつか、

自分のことについて書いた記事を載せるためだという噂もなくはない。

だから、部長と言っても名ばかりで幽霊部員と化している。

それでも、2か月おきに、「白花タイムズ」が刊行できているのは、

副部長の矢渡友美の内助の功があるおかげだ。

友美先輩は、光彦先輩よりも部長らしいのに、

いざという時には、光彦先輩をたてるからスゴイ。

「町おこしイベントの一環らしいんです。十分な宣伝になると思いますが! 」

 わたしは思わずさけんだ。何としても、

エントリーさせてみせる捨て身の覚悟でだ。ここで引くわけには行かない。

「この際だから、多数決で決めませんか? 

ちなみに、わたしも、他のコンテストに応募するべきだと思います」

 あろうことか、1年下の早乙女かりんが

しゃしゃり出てきて多数決を取り出した。

入部当初から、先輩の私に対して何かと、

ライバル心むき出しにしてくると気づいていたものの、

変な時に、自己主張してくる嫌な女だ。1年なのに、挙手なんて取っていいのか?

「わたしは良いアイデアだと思うわ。町おこしイベントなんておもしろそう」

 友美先輩が、光彦先輩ににっこりと微笑みかけると言った。

「君が良いと思うんだったら、いいんじゃないの」

 光彦先輩がまんざらでもない風に言った。

「ナイス、真紘ちゃん」

 友美先輩が、わたしに小声で告げた。

「町おこしのイベントだったら、地元の子もたくさん見に来るかもな」

 光彦先輩がにやけ顔で言った。

「光彦先輩だったら、どんな記事を書きますか? 」

 かりんが上目遣いで、光彦先輩に訊ねた。

「何言ってんの? 取材するのは部員の君たちで、最終判断は部長のオレでしょ」

 光彦先輩が平然と答えた。

コンテストに出す前の最終チェックにだけ参加するらしい。

「わかりました。やってみます」

 わたしが言った。

「まだ、慣れていないし、ひとりだと大変でしょう? 1年生はペアでやりなさい」

 光彦先輩が腕を組むと言った。

「え~。それはちょっと」

 かりんがなぜか嫌そうに告げた。

わたしは、「こちらもそうだ」とチラ見返した。

「観光スポットを提案する形にしたらどう? 」

 友美先輩がそれとなく、わたしたちにアイデアを提供した。

‥‥というより、しなさいに近い。

 翌日は土曜日で、学校が休みだったため、

わたしは以前から、気になっていた場所へ出かけた。

成り行きとはいえ、仲の良くないかりんとなんか、組んで取材したくないのが本音だ。

「そう言えば、白花神社って、

知る人ぞ知る縁結びの神様がいるパワースポットらしいぜ。

カフェのお客さんたちに聞いたんだけど、けっこう、御利益があるんだってさ」

 と、これで話が終わるかと思った矢先、

光彦先輩が何の気なしに言わなきゃいいのに、

「へえ、そうなんですか? 光彦先輩も一緒に行きましょうよ」

 案の定、かりんが、目の色を変えて乗り気になってしまった。

「悪い。土日もバイトなんだ」

 するとやっぱり、光彦先輩がサラッと言い返した。

「白花神社でしたら良いです。前から興味ありましたし‥‥ 」

 ついつい、わたしもそう言ってしまった。

実は、そのご利益の噂を知っていたりする。

「花澄さんが言うんでしたら、いいですよ。取材しても」

 かりんが言った。おそらく、かりんも、

その噂を耳にしていたのだろう。渋々ながらも承諾してみせた。












 











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