(二)-5

文字数 279文字

 私と綾音ちゃんの二人分の声を浴びた男性は、「うるせえ」と言うと、わざわざ私たちの方へ近づいてきて、募金箱にツバを吐きかけ、そして再び向かっていた方向へと立ち去っていった。
 小さな悲鳴に続けて、驚いた綾音ちゃんは「やだー、最低」と口にした。
 私も全く同感だった。ただ、この活動を彼女よりも長く続けている私は、こういう目に何度も遭っていた。だから驚きはしなかった。しかし、だからといってそれに慣れることはなかったし、こういうことをされると毎回嫌な気分にさせられた。さっきの高齢女性の善意にまでもツバを吐きかけられているような気がして、怒りも覚えるのだ。

(続く)
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