(二)-11

文字数 280文字

   ***   ***   ***

 次に興味を持ってくれたのは、デート中のカップルだった。女性の方が、私たちのことに気づいて小走りに近づいてきたのだ。彼女は肩から掛けているシャネルの鞄からグッチの財布を取り出してがま口を開けて、しわくちゃになって折り重なったレシートをかき分けながら小銭を探ってくれた。
 すると彼氏もやってきて、彼女の腕を掴んで言った。
「いいんだよ、そんなの。行くぞ」
 レ点のようなシンプルなマークのスポーツブランドのジャンパーや帽子、靴などに身を包む男性のその言葉に対し、彼女は「いいじゃん、小銭だけだよ」と小銭を探しながら言った。

(続く)
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