第7話

文字数 3,070文字

「誰か助けて下さい」が言えない人もいるから言えるなら幸せだ。

どれだけ色んな人に裏切られたとしても、絶対に裏切らない人が一人いればいい
まあ、そんなヤツはひとりも居ねえけどさ。


暗く延びた道を照らすのは..照らしてくれてたのは..いつだって "キミ" だった...。

翼のもげ堕ちた紙飛行機

それは...キミの為だけに折ったモノ

片翼を喪くしても..空に憧れる蝶のように

此の手に舞い降りる日を待ちわびながら...。

THE LAST STORY>Four-leaf clover<

第三話 Moon crisis


全身を貫く痛みと誰かの声
交互に何かが動き近づいては離れてゆく

此処は何処だろう?

ゆっくりと目蓋を開くと見覚えのない天井が見える

ログハウス調のシックで少し古びた感じの木材
そして、血の匂いと薬品の匂い

姿勢を上げようとする

左脇腹に鈍い痛みが走る


「っ...」

『目を覚ましのね』
そう言うと少し微笑み薄グレーの迷彩に白衣という不思議な格好をした女性は
詩音という名の人物を呼ぶ


呼ばれた人物が近づいて来て
『頑張ったわね』と
漆黒の軍服を着た女性が話かけてくる

薄グレーの迷彩に白衣の女性の名は三崎希望(みさきのぞみ)という人で第1医務隊の軍医だそう
漆黒の軍服を着た女性の名は西野詩音(にしのしおん)
彼女は陸軍参謀総長の第1秘書官だと名乗った

そして、もうひとり稲葉華凛(いなばかりん)という軍医がいることや此処が何処なのか等を教えてくれた

俺の記憶にある最後のシーンは...あの日、あの子達を守れずに地に倒れたことだけだった

二人が無事で居ることも彼女達は教えてくれた


『自分を恥じることはないわよ?例え勝てなかったとはいっても勇敢に立ち向かったじゃない
見て見ぬふりして傍観してた連中よりも ずいぶんマシだと思うわ』

「けれど、勝てなきゃ意味がない
もし、あの日...あなた達が現れなかったら..どうなっていたか...悲惨な末路しか見えない...」


『結果論だけど、あの子達は無事なんだから、あなたが頑張った意味はあると思うわよ』
三崎軍医はそう言って柔らかく笑い

俺の腕に手を置き

『今はゆっくり休みなさい
あなたが一番酷く怪我を負ってるんだから』



ーーROSEーー


詩音はベッドの足元の方に腰かけ足組みしながら俺の方を見て
『あなたが眠ってる間に悪いとは思ったけど身元のわかるモノをと思って荷物を少し探らせていただいたんだけど..
あの子達と知り合いか何か?
とはいっても、あの子達の方は..あなたが誰なのか知らないみたいだけど』

「・・・・。」

『話したくないことでもあるってこと?』

「・・・・。」

『そう...わかったわ、見なかったことにしとくわね
あの "手紙" は』

「読んだのか?」

『人の手紙を読むわけないじゃない?宛名と差出人だけ見ただけよ』

「...そうか。」

『薔薇一輪の花言葉を知ってる?』

「読んでんじゃねーかよ!」

『違うわよ、赤坂安莉さんの手紙が入ってたボックスの中に黒薔薇のネックレスが入ってたから聞いたの』

「なら初めからそう言ってくれ、じゃないと勘違いするだろう?つか、本当に読んでないよな?」

『決して読んでないわ、さっき言ったように薔薇のネックレスがあったから聞いたの』

「そうか...」

『で、薔薇一輪の花言葉を知ってるの?』

「知ってはいるけど、あの薔薇のヤツは別モノだよ」

『別モノ?』

「俺のは黒薔薇だが、もうひとつはピンクの薔薇...」

『黒の薔薇のネックレスしか見当たらなかったけど?』

「そりゃそうさ、ピンクの方は..赤坂安莉さんが持っているはずだから。」

『赤坂さんが?ん?ペアのネックレスなの?』

「いや違う」

『...どういうこと?』

「あなたが知る必要のないことだよ」

『ふ~ん..そう?せめて別の意味合いってことぐらい教えてくれないかしら?』

「薔薇一輪は親愛や一目惚れを意味するし、ピンクの薔薇は、しとやか、上品、可愛いらしい人等の意味を持つことぐらいは知ってますよね?花言葉聞くぐらいだし」

『ええ、もちろん知ってるわ
そして黒薔薇の意味もね..。』

黒薔薇の花言葉は "決して滅びることのない愛、永遠の愛"
そして【「憎悪」「恨み」】を意味する


「ピンクの薔薇一輪のネックレスに込められた想いがあるだけだよ...それは本人も知ってる。」

『込められた想いって?』

「願いと祈りさ」

『何を願い、何を祈るのよ?』

「あなたが知る必要のないことです。なので秘密」

こんな世の中であろうとなかろうと
俺は貴女の幸せを願わない日は1度もなく祈らない日さえない

【"安莉さんが安莉さんらしく健やかで幸せで、そして今以上に活躍し続けてくれることを祈ります。"】

例え離れた場所に居ようとも、この空はいつだって貴女の元へと繋がっているから
願いも祈りも常に其処に在り続ける。



『ふ~ん..なら本人に聞くから良い』

「やめろ!」

『何でよ?』

「カッコ悪いだろうが!」

『え?』

「俺はズタボロにされた上に気を失って倒れたんだぞ?カッコ悪る過ぎて..名乗れやしねぇよ..」

『負けたことがそんなにカッコ悪いの?違うでしょ?
言ったじゃない "頑張ったわね" って
あなたが頑張って時間かせいでくれたから間に合ったようなものなのよ
自分を婢下しちゃダメよ...あなたは凄く頑張ったわ
それにね、あの子達もあなたのこと心配してるのよ?』


「どうせなら、知らぬままの方が幸せだってこともあるだろ」

『けれど逆に言えば、あなたが傷つく結果にも成りかねないわよ』

「それで良いんだ..」

『負けたことがカッコ悪いとかじゃなく..あなたには別な何かがあるみたいね』

「別に...」

『わかったわ...とりあえず黙っておくけれど
名前を知ってる間柄な分..いつかはバレるわよ』


「同姓同名の別人だと言うだけさ。」



人は忘却の生き物、いずれは忘れてゆく運命



ーーMoon crisisーー


太陽のように煌めくキミと傷だらけの月の俺

けれど、お月様のように誰かの夜道を照らす力など持ち合わせちゃいない


キミに棲む黄金色

いつか希望という名の大輪の華を咲かせる



この砕けそうな心を抱いて..時は流れ続ける


氷のように溶けて消えてしまえぬ身体だから

運命という不透明で不確かな糸の上を綱渡りし続けるしか出来ない。



未だ降り立たぬ紙飛行機の行方を探して....。




THE LAST STORY>Four-leaf clover<


第四話 Invisible Things へ
つづく。


※この物語はフィクションです。登場する人物、団体は実際の人物、団体とは何ら関係ありません。

━━━━

THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story
&
THE LAST STORY>Four-leaf clover< は互いに交差しながら進行して行く物語になっております。
【※時折、時間軸が変わったり、過去に戻る場合もありますが※】
なので、THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story
&
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
2つで、ひとつの物語

少々ややこしいかも知れないのですが最後までお付き合いくださいますと嬉しいです。


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登場人物紹介

赤坂安莉

森下まりあ

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