第8話

文字数 429文字

 蝶の王子は白薔薇の精にたのまれて、心が二つに引き裂かれそうな気がしました。

 そうです。蝶の王子は種族は違うけれど、もうずっと前から、白薔薇の精を好きだったのです。

 白薔薇の精をほかの精霊にとられると思うと、体じゅうが燃えるように苦しくなりました。

 王子は白薔薇の精のことづてをとどけるために、赤薔薇の精のもとへ行きました。ですが、口から出たのは、ウソの言葉でした。

「赤薔薇さん。白薔薇さんは丘の上に咲く、ほかの薔薇と結婚することにしたよ。同じ白い花の咲く精霊のほうがいいんだそうだ」

 赤薔薇は傷つきました。
 蝶の王子の言葉をたしかめようにも、彼には丘の上まで歩いていくことはできません。

 丘の上に、ほかの薔薇の精なんていないことを、知ることはできなかったのです。

 傷ついた赤薔薇は、とたんにしおれて、みるみるうちに枯れてしまいました。


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登場人物紹介

蝶の王子


青い羽の美しい蝶の精霊。

自由に空を飛べる。

白い薔薇


白薔薇の精霊。

優しく美しい。おっとりしている。

ちょっと気が弱いところも。

赤い薔薇


生まれたばかりの赤薔薇の精霊。

元気いっぱいで、とってもピュア。

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