第2話
文字数 616文字
あるとき、南から来た蝶の精が、白薔薇の精のもとに舞いおりました。
「なんて甘い匂いのする精霊だろう。ねえ、お嬢さん。あなたの蜜をわけてください。長旅を続けて、とても疲れているんだ」
「いいわ。蜜はたっぷりありますから。わたしたちの蜜は、あなたたち蝶の精霊には、ごちそうですものね」
「ありがとう。これで、のどがうるおいます。わたしは蝶の王子。遠い国から花嫁をさがしにきました」
「あなたたちは自由に空をとべて、うらやましいわ。わたしたち花の精は、生まれたところから動くことができないの。だから、大事な伝言を、あなたたちに、たのまなければなりません」
花の精たちは、どれも、みんな、とても美しいけれど、根っこを地面にしばられていないと生きていけないのです。
空を飛ぶ楽しみを知らないなんて……それどころか、生まれた場所から一歩も歩くことができないなんて、なんてかわいそうな種族だろうと、蝶の王子は思いました。
同時に、どこへでも飛んでいける自分のキレイな羽が自慢でした。その羽の美しさは、花の精たちにも劣りません。
王子は白薔薇の精に同情しました。
「では、いつか今日のお礼に、わたしがお役に立ちましょう。あなたが誰かに、ことづてしたいときに」
「ぜひ、たのみますね」
蝶の王子と白薔薇の精は約束をかわしました。