宇宙旅行の事故、そして・・・

文字数 1,813文字

宇宙旅行中の事故により、私は宇宙服のまま宇宙空間に放り出された。

奇跡的に生存できたが、そのまま事故で死んだほうが幸せだったのかもしれない。

何もないこの宇宙で浮遊するだけの長い時間、気が狂いそうだ。

宇宙服のAIは私の生存維持を最優先に行動し、私は仮死状態になり冬眠することになる。

これからいったいどれくらいの時間、私は眠り続けるのだろう。

目を覚ますことはあるのだろうか?

その確率は0に等しい。

この広い宇宙で、誰かが私を見つける事などありえない話だ。

ああ、意識が遠のく……そして私は長い眠りにつく。



* * * * * * *



私は目を覚ました。

そして、私が初めに見た光景は、私の体が私から離れる光景だった。

どうやら私の頭は首から切断され、どこかに運ばれているようだ。

そして私の体は手足も切断され、腹部は大きく切り裂かれ内臓が所々なくなっていた。

周りを見ると、見たこともない二足歩行の生き物がいた。

二足歩行とはなんと不思議な体型をしているのだろう。

私達人間は足は4本で手は4本ある。

私の頭は薄緑の液体の中に入れられている。

この液体の中だと、故郷の海のように呼吸をしながら生きる事が可能だ。

観察してみると目の前にいるこの二足歩行の生物は知的生物のようだ。

科学文明の発展の度合いは、私の星と同レベルかそれ以下のように思える。

機械の装置を見ても、私の星とは明らかに違う文明の発展をしている。

何より興味深いのは、この生物は地上で生活できているという点だ。

私の星ではそれはありえない。

何故ならば私の星には陸地というモノが存在しないからだ。

陸地を知ったのも宇宙を探索し、他の惑星を確認してわかった事だった。

この星やこの星に生きる生物に興味はあるが、私はこの二足歩行の生物の実験材料にされて生涯を終えてしまうだろうか。

すでに首は切断され、体もいろいろと解剖されている。

私がいろいろと考えていると、一匹の生物が私に向かって口をパクパクとおかしな行動をとった。

いったい何をしているのだろうか?

何やら口を動かすとノイズのようなモノが聞こえる。

全くもって私には理解のできない行動だ。

私達が口を動かすのは食事のときと、排便をするときだけだ。

更に驚くべき事に、この生物には触覚らしき部位がない。

触覚なしでいったい他者とどうやって、会話やコミュニケーションを取るのだろうか?

私達人間は、触覚から出す音波を使い会話をする。

この生物に音波で会話をする能力があるのだったら、コミュニケーションを取りたいところだ。

しかし、目を覚ますとすでに私を解剖している事から、この生物は他者を思いやるという感情がないのかもしれない。

もし、この生物が更に文明を発展させ、様々な惑星に行く事になったらとても危険だ。

最悪の場合、私の星が侵略されるかもしれない。

今のうちに私がこの生物を絶滅させた方が良いのではないだろうか。

幸いにも私の体は両手両足を根本から切断され、内蔵も一部が取られただけだ。

この状態ならば問題なく体を動かせる。

どうもこの生物たちは、私の首や手足を切断したことで、私が無害な存在だと思っているようだ。

もしかして、この星の生物は首を切られたくらいで、行動が停止してしまうのだろうか?

そんな虚弱な生物が、ここまで文明を発展させたことに私は少し驚きを感じている。

しかし、そこまで虚弱な生物ならば、絶滅させるのは私一人でも容易いだろう。

まず最初に、この目の前で口をパクパクさせている生物から殺していくか。

私は切断された4本の手をテレパシーで動かし、目の前の生物の首を軽く絞めた。

なんともろい生物なのだろう、軽く絞めただけで首が真上に吹っ飛んでしまった。

どうやら私が想像していたより虚弱な生物らしい。

これならば例えこの生物が何兆匹いようが簡単に絶滅できるだろう。

その後はこの星を私達の植民地するのもいいだろう。

さて、ササッと仕事を済ませるか。



* * * * * * *



西暦2153年、宇宙を探索していた宇宙船ロイジャー号が、未知の生物が入った装置を発見し地球に持ち帰った。

その生物はすでに死んでいたと思われ、宇宙生物学者が解剖した。

しかし、その生物は死んではいなかった。

頭部や手足を切断し、内蔵をも切除された状態からなんとその生物は行動し始めたのだった。

その生命力と破壊力は人類の兵器では歯が立たない。

こうして人類はその日をもって、一体の宇宙生命体との存亡を掛けた戦いが始まった。
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