河童の国
文字数 1,189文字
頭のハゲたオッサンだと思ったら、河童だった。
「おう、あんちゃん。オレっちに何かようかい?」
突然、河童が僕に話しかけてきた。
※
僕は観光で訪れた、人気の少ない山に登った帰りの出来事だった。
バス停でバスを待っていたが、次のバスが来るまで2時間以上あった。
暇を持て余し、スマホをいじっていると隣に誰かが立っていた。
横目でチラッと覗くと、身長は150センチくらいで僕よりも20センチくらい小さい感じがした。
頭頂部が綺麗にハゲあがっていたので、僕は小柄なオッサンかなと思っていた。
しかし、よく見ると背中には甲羅を背負い、肌も緑色をしている。
それを見て河童ではないか?と思った。
僕があまりにもジロジロと見ていたため、河童が話しかけてきたのだ。
「あの……ジロジロと見てしまって、すみません」
僕は河童という非現実な存在に声を掛けられたという事には驚いたが、普通の人のように接してきた河童に対し、普通に対応していた。
「最近、何故かオレっちを見ると、驚いたり逃げたりする奴が多いんだよ。そんなにオレっちは変かい?あんちゃん?」
変も何も、あなたは河童だから、みんな驚いて逃げてしまうんだろうと思ったが、河童の機嫌を害してはマズイかもしれないと思った僕は平然と答えた。
「いえ、そんな事はないですよ。全然、変なんかじゃありません」
そう言うと河童は少し機嫌が良くなった。
「そりゃ良かった。オレっちは自分が変な人間に見えるのかと思って不安になっていたよ。ありがとな、あんちゃん」
ちょっと待ってくれ、この河童は自分を人間だと思っているのか?
どう見ても、あんたは河童だぞ。
どういう事だ?自分を河童だと思っていないのか?
その時、道路の向こうからバスがこちらに向かって来た。
そして停留所で停まり、ドアが開くと運転手が河童だった。
さすがにこれは怪しいと思い、僕がバスに乗るのを止めようとすると、となりの河童が僕をグイッと押した。
「バスが来たぞ、あんちゃん。早く乗りなよ」
そう言って、僕をバスの中に押し入れた。
僕は怖くなり無理やりバスから降りようとすると、ドアが閉まってしまった。
両手でドアを開けようとするが、ドアは開かない。
その時、自分の異変に気付いた。
ドアの取っ手を握る僕の手が緑色になっている。
しかも手をじっくりと見ると、指と指の間には大きな水かきが付いていた。
「あんちゃん、何をそんなに焦ってるんだい?もうすぐ故郷に帰えれるというのに」
この河童は何を言っているんだ?
故郷とはどこなんだ?
「こ、故郷って何ですか?」
僕は息を切らせながら、河童に尋ねた。
すると、河童はニヤけた顔でこう答えた。
「河童の国だよ。もしかして、あんちゃん。まだ、記憶が戻らなくて自分を人間だと思っているのかい?オレっちはあんちゃんとの会話をしている内に記憶が戻ってきたよ」
そして河童は僕の顔にグイッと近づいた。
「さあ、故郷の河童の国に戻ろうか」
「おう、あんちゃん。オレっちに何かようかい?」
突然、河童が僕に話しかけてきた。
※
僕は観光で訪れた、人気の少ない山に登った帰りの出来事だった。
バス停でバスを待っていたが、次のバスが来るまで2時間以上あった。
暇を持て余し、スマホをいじっていると隣に誰かが立っていた。
横目でチラッと覗くと、身長は150センチくらいで僕よりも20センチくらい小さい感じがした。
頭頂部が綺麗にハゲあがっていたので、僕は小柄なオッサンかなと思っていた。
しかし、よく見ると背中には甲羅を背負い、肌も緑色をしている。
それを見て河童ではないか?と思った。
僕があまりにもジロジロと見ていたため、河童が話しかけてきたのだ。
「あの……ジロジロと見てしまって、すみません」
僕は河童という非現実な存在に声を掛けられたという事には驚いたが、普通の人のように接してきた河童に対し、普通に対応していた。
「最近、何故かオレっちを見ると、驚いたり逃げたりする奴が多いんだよ。そんなにオレっちは変かい?あんちゃん?」
変も何も、あなたは河童だから、みんな驚いて逃げてしまうんだろうと思ったが、河童の機嫌を害してはマズイかもしれないと思った僕は平然と答えた。
「いえ、そんな事はないですよ。全然、変なんかじゃありません」
そう言うと河童は少し機嫌が良くなった。
「そりゃ良かった。オレっちは自分が変な人間に見えるのかと思って不安になっていたよ。ありがとな、あんちゃん」
ちょっと待ってくれ、この河童は自分を人間だと思っているのか?
どう見ても、あんたは河童だぞ。
どういう事だ?自分を河童だと思っていないのか?
その時、道路の向こうからバスがこちらに向かって来た。
そして停留所で停まり、ドアが開くと運転手が河童だった。
さすがにこれは怪しいと思い、僕がバスに乗るのを止めようとすると、となりの河童が僕をグイッと押した。
「バスが来たぞ、あんちゃん。早く乗りなよ」
そう言って、僕をバスの中に押し入れた。
僕は怖くなり無理やりバスから降りようとすると、ドアが閉まってしまった。
両手でドアを開けようとするが、ドアは開かない。
その時、自分の異変に気付いた。
ドアの取っ手を握る僕の手が緑色になっている。
しかも手をじっくりと見ると、指と指の間には大きな水かきが付いていた。
「あんちゃん、何をそんなに焦ってるんだい?もうすぐ故郷に帰えれるというのに」
この河童は何を言っているんだ?
故郷とはどこなんだ?
「こ、故郷って何ですか?」
僕は息を切らせながら、河童に尋ねた。
すると、河童はニヤけた顔でこう答えた。
「河童の国だよ。もしかして、あんちゃん。まだ、記憶が戻らなくて自分を人間だと思っているのかい?オレっちはあんちゃんとの会話をしている内に記憶が戻ってきたよ」
そして河童は僕の顔にグイッと近づいた。
「さあ、故郷の河童の国に戻ろうか」