素顔を見ないで殺したくないから・・・
文字数 2,988文字
ある日、私は小さな段ボール箱の中の子猫を見つけた。
すぐにこの子猫が捨て猫だとすぐにわかった。
「ミャーミャー」と鳴く子猫は可愛らしくてペットにしたいと思ったが、私はマンションで一人暮らしをしている。
しかもペットを一度も飼ったこともないし、私のマンションはペット禁止だ。
かわいそうな気持ちはあったが、私よりもこの子猫を大切に育ててくれる人が現れるのを願って、私は後ろ髪を引かれる気持ちでその場を離れた。
立ち去る私に子猫は「ミャーミャー」と今も鳴いている。
―――その鳴き声が胸を締め付け、私はその子猫を自分で育てようと決心した。
進行方向を反転させ子猫の方へ向かった。
振り向くと、子猫の前に人影がある。
街灯の光が切れかかっているため、街灯の光がチカチカと点滅して光っている。
その人物がどんな人物なのかはこの距離からはわからない。
しかし私以外にも子猫に興味を持ってくれた人なのかなと思い、その人が子猫を大切に飼ってくれたらなと思った。
するとその人物はコートの内側に手を入れ何かを取り出した。
子猫に何か食べ物をあげるのかなと思い私はほっこりした気持ちで遠くからその光景を眺めていた。
その人物は子猫に近づくようにしゃがむと何度も何度も手を振り下ろす。
街灯の光がチカチカと光るたびにその人物の手元も光に反射して光っていた。
その人物が持っていたのは包丁だった。
包丁には子猫の血がべっとりと付き赤く染まっている。
「キャーーー!」と私は反射的に悲鳴を上げてしまった。
その声に反応して、その人物は私の方を向くと子猫の血の付いた包丁を握り締めながら私の方へと全速力で走ってきた。
私は少し躊躇したが命の危険をすぐに察知して私も必死にその場から逃げた。
夢中で逃げながら「助けて!助けて!」と叫ぶ。
しかし、誰一人私を助けてくれる人は現れず私はその人物に追いつかれてしまった。
「キャッ!!」
追いつかれた瞬間、私の背中に痛みが走った。
どうやら私は背中を包丁で刺されたようだ。
包丁で刺された痛みとその衝撃でアスファルトに顔面を強打したため私は気を失ってしまった。
しかし気を失う直前に通り魔の声を聞いた。
その声は女の声でこう喋った。
「あたしはお前みたいな可愛い顔の女が嫌いなんだよ!」
* * * * * * *
―――私は目を覚ました。
しかし、何も見えない……。
両手をまさぐると掛け布団のようなモノがあり、どうやらベットの上にいるようだった。
そこへ女性の声が聞こえて来た。
それはあの通り魔の声とは違う、優しい感じの声で「大丈夫ですよ」と声をかけられた。
私は声の人物にどういう状況なのかを尋ねた。
するとこの場所は病院で、声の主は看護師と答えた。
どうやら通り魔に襲われた後私は救急車で搬送され、すぐに集中治療室で手術を受けたらしい。
さらに看護師は私に気の毒そうな感じを出しながら大まかな説明をしてくれた。
私は通り魔に背中を刺されたあと顔の皮を包丁で剥ぎ取られたらしい。
その言葉が信じられず私は自分の顔を触った。
顔は包帯で何重にも巻かれた感触がある。
私は自分が助かったことには安堵したが自分の顔が醜くなったことに……絶望した。
* * * * * * *
あの事件から2年が経った。
未だに私を襲った通り魔は捕まっていない。
そして私は数えきれないほどの顔の整形手術をした。
結婚や老後のために溜めた貯金は全て整形手術に使い、貯金は全てなくなった。
顔の整形手術をしても元通りになるはずはなく、自分の理想とは違う顔に私は毎日絶望しながら生きている。
事件後は実家に帰って療養したが、誰とも会いたくないため病院に行く以外は部屋に引きこもる生活になった。
引きこもりの生活で、事件前はスリムな体型だったが今では体重は100キロを超えてしまっている。
自分のストレスを解消できるのが食欲だけになってしまったから仕方がない。
今では自分の体型も醜くなってしまった。
こんな生活を繰り返していると生きることにも絶望してくる。
自殺も考えたが死ぬのが怖くてできなかった。
そうした荒 んだ生活を送っていく内に、私の中で何かが沸々と湧き出てきた。
それは復讐だ。
私をこんな姿に変えたあの通り魔への復讐心が、私の生きる希望になってきた。
その日から私は夜な夜な町を徘徊するようになった。
その目的はもちろんあの通り魔に復讐することだ。
私と同じようにあの通り魔の顔を包丁で剥ぎ取ってやろうと思っている。
自分でも恐ろしいことを実行しようとしていることはわかっている。
しかしもう自分の衝動を抑えることが出来なくなっていた。
そして今日も夜を徘徊し、懐には包丁を隠し持っている。
私の今の姿を見たら私を不審者と思う人はいるだろう。
なぜならばロングコートを着て、頭には帽子を被り、サングラスに大きめのマスク、できるだけ素顔が見えない服装をしているからだ。
人に素顔を見られるのは何より怖い。
自分を醜いと思われるのが怖かった。
そうして町を徘徊していると二人の若い女性が楽しそうに会話をしている。
私は自分の姿を見られたくなかったので、すぐにその場を立ち去ろうとした。
すると笑い声が聞こえる。
まるで私を嘲笑 うように聞こえた。
その二人をチラッと見るととても可愛らしく、まるでアイドルのように見えた。
私はそのとき自分と比較し、この不条理な現実に嫉妬で狂いそうになっていた。
私も顔の皮を剥ぎ取られなければ、あの子達のように生き生きと生活を送れていたのに!
そう思っている内にいつの間にか私は二人の女性の前に立っていた。
そして包丁を取り出し、無我夢中でその一人を包丁で刺した。
何度も何度も顔を中心に刺したため、その女性の顔は無残な姿になり死んでいた。
そのとき私の中で達成感のような気持ちの良い感覚が襲ってきた。
もう一人の女性はあまりの恐怖に座り込み、ただ怯えているだけだった。
私はその女性を押し倒して馬乗りになり、その女性の顔を包丁で1センチほど切りつけた。
女性は悲鳴を上げそうになったため、顔をズタボロにした女性の顔の肉片を押し倒した女性の口にねじ込んだ。
それで女性は悲鳴を上げることはできなくなった。
私は女性の顔にまた包丁で切りつける。
女性は痛みと恐怖でジタバタするが、100キロもある私の体重で馬乗りになっているため逃げることはできない。
可愛い女性の顔を切りつけるたびに私の中で快感が溢れ出す。
自分と同じく醜い顔にさせるという事に何か特別な達成感が味わえたのだ。
その後、私は無我夢中で可愛い顔を切り刻み最終的には私のように顔の全ての皮を剥ぎ取った。
運がよく、私がこんな恐ろしいことをしていても誰もこの路地には来なくて、私は難なく家に帰ることができた。
家に帰ると私はすぐに自分の部屋に入っていく。
すると母親が慌てて私の部屋へと向かって来た。
私はさっきまで行っていたことが母親にバレたのかと思ったが、どうやら違う様子だった。
「捕まったわよ!」
母親の第一声はそれだった。
最初は何のことかはわからなかったが、すぐに理解できた。
やっと私を襲った通り魔が捕まったのだった。
年齢は25歳の女性で私と同年齢くらいだった。
そして母親が通り魔の写真を見せてくれた。
その顔は私と同じように、顔の皮を剥がされ、その後何度も整形手術をした顔だった。
私は思った。
―――私はさっきまで、その通り魔と同じような事をしていた……。
すぐにこの子猫が捨て猫だとすぐにわかった。
「ミャーミャー」と鳴く子猫は可愛らしくてペットにしたいと思ったが、私はマンションで一人暮らしをしている。
しかもペットを一度も飼ったこともないし、私のマンションはペット禁止だ。
かわいそうな気持ちはあったが、私よりもこの子猫を大切に育ててくれる人が現れるのを願って、私は後ろ髪を引かれる気持ちでその場を離れた。
立ち去る私に子猫は「ミャーミャー」と今も鳴いている。
―――その鳴き声が胸を締め付け、私はその子猫を自分で育てようと決心した。
進行方向を反転させ子猫の方へ向かった。
振り向くと、子猫の前に人影がある。
街灯の光が切れかかっているため、街灯の光がチカチカと点滅して光っている。
その人物がどんな人物なのかはこの距離からはわからない。
しかし私以外にも子猫に興味を持ってくれた人なのかなと思い、その人が子猫を大切に飼ってくれたらなと思った。
するとその人物はコートの内側に手を入れ何かを取り出した。
子猫に何か食べ物をあげるのかなと思い私はほっこりした気持ちで遠くからその光景を眺めていた。
その人物は子猫に近づくようにしゃがむと何度も何度も手を振り下ろす。
街灯の光がチカチカと光るたびにその人物の手元も光に反射して光っていた。
その人物が持っていたのは包丁だった。
包丁には子猫の血がべっとりと付き赤く染まっている。
「キャーーー!」と私は反射的に悲鳴を上げてしまった。
その声に反応して、その人物は私の方を向くと子猫の血の付いた包丁を握り締めながら私の方へと全速力で走ってきた。
私は少し躊躇したが命の危険をすぐに察知して私も必死にその場から逃げた。
夢中で逃げながら「助けて!助けて!」と叫ぶ。
しかし、誰一人私を助けてくれる人は現れず私はその人物に追いつかれてしまった。
「キャッ!!」
追いつかれた瞬間、私の背中に痛みが走った。
どうやら私は背中を包丁で刺されたようだ。
包丁で刺された痛みとその衝撃でアスファルトに顔面を強打したため私は気を失ってしまった。
しかし気を失う直前に通り魔の声を聞いた。
その声は女の声でこう喋った。
「あたしはお前みたいな可愛い顔の女が嫌いなんだよ!」
* * * * * * *
―――私は目を覚ました。
しかし、何も見えない……。
両手をまさぐると掛け布団のようなモノがあり、どうやらベットの上にいるようだった。
そこへ女性の声が聞こえて来た。
それはあの通り魔の声とは違う、優しい感じの声で「大丈夫ですよ」と声をかけられた。
私は声の人物にどういう状況なのかを尋ねた。
するとこの場所は病院で、声の主は看護師と答えた。
どうやら通り魔に襲われた後私は救急車で搬送され、すぐに集中治療室で手術を受けたらしい。
さらに看護師は私に気の毒そうな感じを出しながら大まかな説明をしてくれた。
私は通り魔に背中を刺されたあと顔の皮を包丁で剥ぎ取られたらしい。
その言葉が信じられず私は自分の顔を触った。
顔は包帯で何重にも巻かれた感触がある。
私は自分が助かったことには安堵したが自分の顔が醜くなったことに……絶望した。
* * * * * * *
あの事件から2年が経った。
未だに私を襲った通り魔は捕まっていない。
そして私は数えきれないほどの顔の整形手術をした。
結婚や老後のために溜めた貯金は全て整形手術に使い、貯金は全てなくなった。
顔の整形手術をしても元通りになるはずはなく、自分の理想とは違う顔に私は毎日絶望しながら生きている。
事件後は実家に帰って療養したが、誰とも会いたくないため病院に行く以外は部屋に引きこもる生活になった。
引きこもりの生活で、事件前はスリムな体型だったが今では体重は100キロを超えてしまっている。
自分のストレスを解消できるのが食欲だけになってしまったから仕方がない。
今では自分の体型も醜くなってしまった。
こんな生活を繰り返していると生きることにも絶望してくる。
自殺も考えたが死ぬのが怖くてできなかった。
そうした
それは復讐だ。
私をこんな姿に変えたあの通り魔への復讐心が、私の生きる希望になってきた。
その日から私は夜な夜な町を徘徊するようになった。
その目的はもちろんあの通り魔に復讐することだ。
私と同じようにあの通り魔の顔を包丁で剥ぎ取ってやろうと思っている。
自分でも恐ろしいことを実行しようとしていることはわかっている。
しかしもう自分の衝動を抑えることが出来なくなっていた。
そして今日も夜を徘徊し、懐には包丁を隠し持っている。
私の今の姿を見たら私を不審者と思う人はいるだろう。
なぜならばロングコートを着て、頭には帽子を被り、サングラスに大きめのマスク、できるだけ素顔が見えない服装をしているからだ。
人に素顔を見られるのは何より怖い。
自分を醜いと思われるのが怖かった。
そうして町を徘徊していると二人の若い女性が楽しそうに会話をしている。
私は自分の姿を見られたくなかったので、すぐにその場を立ち去ろうとした。
すると笑い声が聞こえる。
まるで私を
その二人をチラッと見るととても可愛らしく、まるでアイドルのように見えた。
私はそのとき自分と比較し、この不条理な現実に嫉妬で狂いそうになっていた。
私も顔の皮を剥ぎ取られなければ、あの子達のように生き生きと生活を送れていたのに!
そう思っている内にいつの間にか私は二人の女性の前に立っていた。
そして包丁を取り出し、無我夢中でその一人を包丁で刺した。
何度も何度も顔を中心に刺したため、その女性の顔は無残な姿になり死んでいた。
そのとき私の中で達成感のような気持ちの良い感覚が襲ってきた。
もう一人の女性はあまりの恐怖に座り込み、ただ怯えているだけだった。
私はその女性を押し倒して馬乗りになり、その女性の顔を包丁で1センチほど切りつけた。
女性は悲鳴を上げそうになったため、顔をズタボロにした女性の顔の肉片を押し倒した女性の口にねじ込んだ。
それで女性は悲鳴を上げることはできなくなった。
私は女性の顔にまた包丁で切りつける。
女性は痛みと恐怖でジタバタするが、100キロもある私の体重で馬乗りになっているため逃げることはできない。
可愛い女性の顔を切りつけるたびに私の中で快感が溢れ出す。
自分と同じく醜い顔にさせるという事に何か特別な達成感が味わえたのだ。
その後、私は無我夢中で可愛い顔を切り刻み最終的には私のように顔の全ての皮を剥ぎ取った。
運がよく、私がこんな恐ろしいことをしていても誰もこの路地には来なくて、私は難なく家に帰ることができた。
家に帰ると私はすぐに自分の部屋に入っていく。
すると母親が慌てて私の部屋へと向かって来た。
私はさっきまで行っていたことが母親にバレたのかと思ったが、どうやら違う様子だった。
「捕まったわよ!」
母親の第一声はそれだった。
最初は何のことかはわからなかったが、すぐに理解できた。
やっと私を襲った通り魔が捕まったのだった。
年齢は25歳の女性で私と同年齢くらいだった。
そして母親が通り魔の写真を見せてくれた。
その顔は私と同じように、顔の皮を剥がされ、その後何度も整形手術をした顔だった。
私は思った。
―――私はさっきまで、その通り魔と同じような事をしていた……。