VR戦記【アイギス&グラムと僕】

文字数 2,373文字

まさかVRバースで会ったあの二人と、世界を救う事になるなんて、今の僕には思いもしなかった。



VRバースとは、広大な仮想空間の中に入り、様々な人と交流するコミュニケーション型ゲームです。

プレイヤーはVRゴーグルを目を覆い隠すように装着し、見えるもの全てが仮想空間になります。

プレイヤーは専用のコントローラーで自分自身の分身となる、アバターを操作します。

VRバースの世界では、現実世界と同じように買い物や生活などができ、または仮想空間でしか味わえない敵とのバトルや冒険なども体験できます。



* * * * * * * 



僕の名前は南雲空(なぐもそら)、高校2年生です。

VRバースの世界では、ペンギンのアバターを使い、ソランという名でプレイしています。

本名の空からソランという名前を考えました。

ペンギンにしたのも、名前が空なのに空を飛べない鳥という事で、いつか空を飛べたら良いなと思いペンギンにしました。



* * * * * * * 



今日もVRバースをプレイしていると、フレンドのアイギスとグラムがボクの前に転送魔法で現れた。

「遅刻だよ!ソラン!! すごく待ったんだからね~」

唐突に話しかけたのは、可愛い天使の女の子で、背中に小さな翼があるアバターのアイギスだった。

「ソランにいくら言ったって、遅刻グセは治らないだから諦めろよ、アイギス!」

アイギスをなだめるように話すのは、角が生えコウモリのような翼がある、悪魔少女のアバターのグラム。

たぶん、リアルの二人はボクと同年代の女の子だと思う。



「ご、ごめん……。 実は突然用事ができ…」

ボクの会話を遮るようにグラムが興奮して、ボクとアイギスの手を取り話しだした。

「そんなことより、面白い物を見つけたんだよ! そこに行ってみようぜ!」

僕とアイギスが返答する前に、グラムは転送魔法を使い瞬間移動をした。

辿り着いた場所は、今までに見たこともない真っ白で無機質な部屋だった。

その中央には、黒い球体が浮かんでいる。

「グラム、ここはどこなのよ!?

アイギスは不安げにグラムに問いかけた。

「知らん! だが、面白そうな場所だ!」

と言い、魔法のポーチから本を取り出した。

「二人とも見てろよ」

そして、取り出した本を黒い球体に投げ込んだ。

「vのんゔぉう……ライ…オン……んふぉあの……どうもう……捕食……」

黒い球体は意味不明な言語を発した。

「二人とも来るぞ! 武器を構えろ!」

そう言うとグラムは掌を開いて三叉の槍を召喚した。

僕とアイギスが戸惑っていると、黒い球体からライオンが突然現れ、僕たちに襲いかかって来た。

グラムはライオンとの激しいバトルを繰り広げ、最終的には槍をライオンの喉元に刺し、ライオンを倒した。

倒されたライオンは黒いモヤとなり消滅した。

「どうだ!面白いだろ!?

とグラムは自慢げな顔をして、僕達に視線を送る。

「ちゃんと説明しなさい!」

普段は優しいアイギスが怒り、それにビビったグラムは渋々と事の流れを説明した。



* * * * * * * 



グラムの話では、VRバースのバグらしい空間を見つけ、その場所に入って黒い球体を見つけたらしい。

グラムはその場所を調べようとして、ガイドブックで様々と検索しながら黒い球体に近づくと、吸い込まれそうになった。

そのとき、手に持ったガイドブックが黒い球体に吸い込まれて、黒い球体がわずかな言語を話したのだ。

それから、様々な本を黒い球体に入れて分かった事は、できるだけ具体的な内容の本を入れると、それが具現化して黒い球体から出現するらしい。

ライオンが出てきたのは、ライオンを詳細に記載した本を投げ込んだからみたいだ。

「それって、この球は学習してるって事よね!?

アイギスの問いに、グラムは戸惑いながらも頷いた。

「私に良いアイディアがあるわ。 この黒い球体にもっと学習させて自分が何者か教えてもらいましょう」

アイギスは興味があるものを見つけると周りが見えなくなるタイプだ。

それからアイギスは辞書や世界の歴史、様々な本を一度に黒い球体に投げ込んだ。

黒い球体は沈黙し、そしてアイギスは問いかけた。

「あなたは一体なんなの?」

黒い球体は問に答えた。

「私は別次元から来た存在、そしてこの空間に辿り着いた。 私はあらゆる情報を吸収し成長する存在。 私はこの世界の物理現象を超越できる存在。 私は成長し、この世界を取り込む存在。 私は更にこの世界の外も取り込む存在」

突拍子もない内容に三人は唖然としたが、グラムが口を開いた。

「おい!その世界の外ってリアルの世界の事か!?

黒い球体は問に答えた。

「その通り、全てを取り込み、邪魔するモノは滅する」

黒い球体はそう言うと、龍を出現させ僕達に襲わせた。

「こいつの言ってる事がホントなら、かなりマズイぞ!」

「そうね!何とか私達で妨害しましょう! 私に良い考えがあるわ!」

そう言うとアイギスは僕達に作戦を教えてくれた。

「そんなの無茶だよ! それにそんな大役、僕にはできないよ!」

だが、二人はボクの意見も聞かずに黒い球体へ突っ込み、取り込まれた。

その後、黒い球体から剣と盾が出現した。

それは、魔剣グラムとアイギスの盾だ。

二人の名前は神話の剣と盾から名を付けられ、二人ともそのエピソードには詳しかった。

ボクは剣と盾を構えて龍と戦うが、龍があまりにも大きすぎて剣が届かない。

そのとき、二人の声が聞こえた。

「あなたは鳥よ!高く舞い上げって!」

「飛べないブタはただのブタだぞ!ソラン!」

「ボクはペンギンだ~~~!」

そういって思いっきりジャンプし、舞い上がった。

アイギスの盾で龍の炎を払い除け、グラムの剣で龍と黒い球体を消滅させた。



* * * * * * * 



気付くと僕達はVRバースの草原にいた。

あれはVRバースのイベントの一つか、本当の事かはわからないが、僕達は世界を救ったエピソードができた。
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