第3話

文字数 865文字

てきとうに口にご飯をのせた箸をつっこむと、すぐに、ガホッ、ゴホゴホッ、と咳き込み、米つぶが辺りに散らばった。

「な、ゴホッ。ゴホガホッ。」

睨んでいるような感じを感じ取って、ますます俺の機嫌は悪くなる。

うるせーな。そんくらいいいだろ。俺のつらさと比べれば。


髪をいつものようにお似合いに結んでやる。


はぁ、今日も仕事をしに行かねーと。

岩でできたすみかから出ると、外は今日もかなり暑い。「...今日も90℃あるそうだ。」という掠れた乾いた声が左の耳から聞こえてくる。

こんなに炎で囲まれているのだから当たり前だ。

火に囲まれて仕事しなければいけないのも。___当たり前なのだ、ここは地獄なのだから。



俺やあいつの、獄卒、と呼ばれる職業には、様々な種類がある。


例えば、少し前は気になってた、あの別嬪さん。あの人は、刃でできた木の上から死者を呼び、登らせ、懲らしめる仕事をしている。


そんで、スカした感じの気に入らない、あの男は、鍋で死者を煮込む仕事をしている。
あいつ、結局、死者が煮込まれてお陀仏になる前に食べてしなせてるよな、、、
まあ、いつものことか。

他の獄卒と比べれば、おれとこいつの仕事は、簡単かつ穏便に済ませられるものだ。

死者を鏡に映して(もちろんただの鏡じゃない。映ったやつのやったことが映し出される鏡だ。)、死者の罪を調べて、悪いやつだったら火を吹いて、良いとこあるじゃん、てなったら白蓮華を吹いてやる。それだけだ。

さて、今日のお客は、と。


         7時間後

____これで終わりだ。今日も楽勝だったな。まあ、こいつが俺の手捌きにちゃんと追いつける奴だったらもっと早く終わっただろうけど。

....なぁ、お前、自分を映したら、どうな姿が見えたんだっけな?

誰よりも近くにいる奴に向かって語るように口ずさんで、鏡の方へ近づく。


きまり悪い声が左の耳から聞こえた気がした。



こいつと一緒に暮らすこと、もう何十年。

そろそろ落とし前つけとくか?
    
        今がそん時だろう→4話目へ
    
        まだその時じゃない。→5話目へ
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