【4日目】過去の追憶
文字数 1,900文字
奈央は気絶した真斗の頭を膝の上に載せて、どうして良いかも分からず、ただ、その頭を必死に撫でていた。
真斗の身体は冷や汗でじっとり濡れていた。
※
真斗は夢を見ていた。
いや、何が現実で、何が夢なのかも、もはや真斗には分からなかった。
※
元々身体の弱かった明日香。
どんなに治療を施しても、もう永くは生きられないと主治医から知らされていた。
しかし、どうしても、真斗は、明日香に生きていて欲しかった。
明日香を失い、この世界にたった一人残されるのが何よりも怖かった。
そんな折、妖化ウイルスの生みの親で、自身も妖化ウイルスの感染者でもある、大学教授を、抹殺するミッションが、本部から下された。
他3人の黒服達と共に、妖化しつつあったターゲットの教授を拳銃で撃ち殺害した。
真斗は、抹殺した教授の所有していた黒いアタッシュケースをリーダー格の黒服に渡すとき、こっそりと、一本の新型の妖化ウイルスの注射器を、奪い取った。
妖化ウイルスの新型は、人間としての正気を保ったまま、超人的に身体能力を向上させることもあるという。もしかしたら、これさえあれば、明日香は生き続けることができるかもしれない。
そして、その夜中、熱海の病院に忍び込んだ。そして、入院中の妹の病室に入った。病室のベッドにぐっすりと眠る明日香に、この妖化ウイルスの注射器を打った。
※
熱海の海辺だったと思う。
明日香に注射した後、帰路に着く途中、真斗は、組織の本部からターゲットの情報連絡を突然受けて、現場に急行した。
暗い夜空の中、黒いジャケットと黒いスラックスを着て、真斗は熱海の海岸を歩いていた。
真斗は、スマートフォンで本部と交信した。
本部から、そのまま海沿いをまっすぐ進めとの命令。
しばらく進んだ。そして、ターゲットまであと100mと告げられた。
すると、小さい人影が見えた。
おそらくあれがターゲット。
真斗は懐から銃を出して構え、そのまま小さい人影に向かって歩みを進めた。
ピーっと、所有していたスマートフォンがバイブレーションと共に電子音を発した。
【壊れはじめた者】を検証し、発見した際に知らせるスマートフォンアプリ。
ターゲットは【壊れはじめた者】であることは間違い無い。
恐ろしく冷徹に、真斗は銃口をターゲットに向ける。
と、同時に、その電子音に驚いたターゲットが、真斗の方向を向いた。
小さな人影が、首を傾げ真斗を見つめた。
見覚えのある、年齢の割に幼くみえる女性の顔が、最期に怪訝な表情をした。
「・・・お兄ちゃん?」
明日香は、身体が弱かった。
病院で寝たきりの状態であり、あと半年も生きられない身体だった。
だから、病院を抜け出して、このわずかな時間で、病院から離れたこの熱海の海辺にいることなど、出来るはずがなかった。
「今日は何か、すごく調子が良いんだ。身体がとても元気になって」
スマートフォンアプリの電子音が鳴り続けていた。
「何だか、すごく気持ち良くて・・・あっ・・・!」
ゴガッ!
明日香は、妖化ウイルスに犯されて、怪物化しつつあって、
人間じゃない、なにか別の、何かに・・・。
ゴガッ!ゴガガッ!
「おにい・・・ちゃん・・・くるし・・・い・・・」
だんだん、何か、別の何かに。
真斗は、怖くなって、どうしたらいいのか分からなくなり、
ゴガガガガッ!
「た・・・たすけて・・・おにいちゃ・・・」
化け物みたいに膨れ上がった明日香のその声を最期に聞いて、パンッと甲高い銃声がして、弾丸が明日香だった何かの額に突き刺さったんだ。
明日香だった何かの額から鮮血が飛び散って・・・。
(それで、撃ったのが俺だって、やっと気づいて)
(ソレデ、ウッタノガオレダッテ、ヤットキヅイテ)
※
「うおおおおおぉぉぉ!
うわああああぁぁぁ!」
「真斗くん!!」
真斗は奈央の膝の上からガバッと頭を上げて立ち上がった。
そして、両手で頭を抱えて転がり、叫んだ。
「俺が明日香にあの悪魔の注射ヲ!
妖化ウイルスを打ったァ!
俺が化け物になった明日香の頭を撃ったァ!」
「大丈夫!大丈夫だよ!真斗くん!」
「俺が明日香を殺したァ!
明日香を殺したのは、この世界じゃなかったァ!
他でもない、俺だったァ!!
俺が俺がオレガ!!」
「真斗くん!大丈夫!大丈夫だよ!!」
「オレがオレガ俺自身が明日香を化け物ニシタァ!そして、アスカを殺シタァァ!!」
「真斗くん!大丈夫だよ!落ち着けるよ!!」
真斗は気が狂ったように転がり続けた。
その真斗を奈央が必死に抱きしめる。
「真斗くん!大丈夫!落ち着いて!!」
「ウワアアあァああァァ!!」
「真斗くん!」
そして、そのまま真斗は、自身を落ち着けようと抱きしめる奈央を押し倒した。
「キャッ!!」
真斗に押し倒された奈央が叫ぶ。
真斗の身体は冷や汗でじっとり濡れていた。
※
真斗は夢を見ていた。
いや、何が現実で、何が夢なのかも、もはや真斗には分からなかった。
※
元々身体の弱かった明日香。
どんなに治療を施しても、もう永くは生きられないと主治医から知らされていた。
しかし、どうしても、真斗は、明日香に生きていて欲しかった。
明日香を失い、この世界にたった一人残されるのが何よりも怖かった。
そんな折、妖化ウイルスの生みの親で、自身も妖化ウイルスの感染者でもある、大学教授を、抹殺するミッションが、本部から下された。
他3人の黒服達と共に、妖化しつつあったターゲットの教授を拳銃で撃ち殺害した。
真斗は、抹殺した教授の所有していた黒いアタッシュケースをリーダー格の黒服に渡すとき、こっそりと、一本の新型の妖化ウイルスの注射器を、奪い取った。
妖化ウイルスの新型は、人間としての正気を保ったまま、超人的に身体能力を向上させることもあるという。もしかしたら、これさえあれば、明日香は生き続けることができるかもしれない。
そして、その夜中、熱海の病院に忍び込んだ。そして、入院中の妹の病室に入った。病室のベッドにぐっすりと眠る明日香に、この妖化ウイルスの注射器を打った。
※
熱海の海辺だったと思う。
明日香に注射した後、帰路に着く途中、真斗は、組織の本部からターゲットの情報連絡を突然受けて、現場に急行した。
暗い夜空の中、黒いジャケットと黒いスラックスを着て、真斗は熱海の海岸を歩いていた。
真斗は、スマートフォンで本部と交信した。
本部から、そのまま海沿いをまっすぐ進めとの命令。
しばらく進んだ。そして、ターゲットまであと100mと告げられた。
すると、小さい人影が見えた。
おそらくあれがターゲット。
真斗は懐から銃を出して構え、そのまま小さい人影に向かって歩みを進めた。
ピーっと、所有していたスマートフォンがバイブレーションと共に電子音を発した。
【壊れはじめた者】を検証し、発見した際に知らせるスマートフォンアプリ。
ターゲットは【壊れはじめた者】であることは間違い無い。
恐ろしく冷徹に、真斗は銃口をターゲットに向ける。
と、同時に、その電子音に驚いたターゲットが、真斗の方向を向いた。
小さな人影が、首を傾げ真斗を見つめた。
見覚えのある、年齢の割に幼くみえる女性の顔が、最期に怪訝な表情をした。
「・・・お兄ちゃん?」
明日香は、身体が弱かった。
病院で寝たきりの状態であり、あと半年も生きられない身体だった。
だから、病院を抜け出して、このわずかな時間で、病院から離れたこの熱海の海辺にいることなど、出来るはずがなかった。
「今日は何か、すごく調子が良いんだ。身体がとても元気になって」
スマートフォンアプリの電子音が鳴り続けていた。
「何だか、すごく気持ち良くて・・・あっ・・・!」
ゴガッ!
明日香は、妖化ウイルスに犯されて、怪物化しつつあって、
人間じゃない、なにか別の、何かに・・・。
ゴガッ!ゴガガッ!
「おにい・・・ちゃん・・・くるし・・・い・・・」
だんだん、何か、別の何かに。
真斗は、怖くなって、どうしたらいいのか分からなくなり、
ゴガガガガッ!
「た・・・たすけて・・・おにいちゃ・・・」
化け物みたいに膨れ上がった明日香のその声を最期に聞いて、パンッと甲高い銃声がして、弾丸が明日香だった何かの額に突き刺さったんだ。
明日香だった何かの額から鮮血が飛び散って・・・。
(それで、撃ったのが俺だって、やっと気づいて)
(ソレデ、ウッタノガオレダッテ、ヤットキヅイテ)
※
「うおおおおおぉぉぉ!
うわああああぁぁぁ!」
「真斗くん!!」
真斗は奈央の膝の上からガバッと頭を上げて立ち上がった。
そして、両手で頭を抱えて転がり、叫んだ。
「俺が明日香にあの悪魔の注射ヲ!
妖化ウイルスを打ったァ!
俺が化け物になった明日香の頭を撃ったァ!」
「大丈夫!大丈夫だよ!真斗くん!」
「俺が明日香を殺したァ!
明日香を殺したのは、この世界じゃなかったァ!
他でもない、俺だったァ!!
俺が俺がオレガ!!」
「真斗くん!大丈夫!大丈夫だよ!!」
「オレがオレガ俺自身が明日香を化け物ニシタァ!そして、アスカを殺シタァァ!!」
「真斗くん!大丈夫だよ!落ち着けるよ!!」
真斗は気が狂ったように転がり続けた。
その真斗を奈央が必死に抱きしめる。
「真斗くん!大丈夫!落ち着いて!!」
「ウワアアあァああァァ!!」
「真斗くん!」
そして、そのまま真斗は、自身を落ち着けようと抱きしめる奈央を押し倒した。
「キャッ!!」
真斗に押し倒された奈央が叫ぶ。