【6日目】デート

文字数 2,156文字

「奈央おおぉぉぉ!!」

叫び声と共に真斗が起き上がった。

「ひゃっ!
な・・・なに?」

朝ごはんの味噌汁を温めている奈央がびっくりして返事をした。

真斗が気がつくと、いつもの奈央の部屋。

(なんだ、夢か・・・)

真斗が毛布から起き上がって、安堵の溜息を着くと、時計を見た。

8時13分。

少し、寝過ぎたか?

「だ、大丈夫かな?朝ごはんにしよ?」

そう言って奈央がご飯、味噌汁、漬物、サバの塩焼きをトレーに乗せて持ってきた。

真斗は毛布を片付けた。



「ねぇ、真斗くん、今日の一日のプランなんだけど」

「うん?プラン?」

「うん、今日はまず、デパートでショッピングしたいな!
それから、デパートの中に映画館あるから、そこで見たい映画あるの。
あとね、この辺りに知り合いがやってるカフェがあって、そこ行くの。
それで、その後、ちょっと遠出して、沼津の方にあるマリンパーク行きたい!
夕食はそのまま沼津のレストランでちょっと高級な所!
オッケー?はい、復唱!」

口早く奈央が今日の予定を真斗に捲し立てた。

「な・・・なんか、もりもりの予定だな」

「復唱!」

「分かった分かった。
買い物、映画、カフェで、そのあと沼津の水族館とレストランだろ?」

「はい、オッケー!じゃあ、準備開始!!」

そう言って奈央はメイクを始めた。

真斗には、特に準備することも無く、相変わらず時間のかかる奈央の準備を待った。



二人はマンションから最も近い場所に建つ大型デパートに行った。

奈央は女性用ファッションフロアに行き、気に入ったワンピースを試着した。

「まあ!
とても良いですね、お客様。こちらとてもお似合いですよ?」

アパレルショップ店員の女性が奈央を褒める。

「じゃあ、これ下さい。あと、このまま着ていくので、タグとか全部外しちゃってください!」

「はい、承知しました」

奈央はカード払いで身につけたワンピースでそのまま店から出てきた。

「そのまま着ていくの?」

「うん、真斗くんもだよ?」

「・・・は?」



今度は奈央は、真斗を男性用ファションフロアに連れて行った。

「俺は、こうゆうのは、着たことないから、いいよ、このままの格好で」

「んー、こっちの方がいいかな?
これ試着しみて!」

奈央は真斗の要望も聞かず、上下フルセットで仕立てた。

そして、カード払いで、仕立てたままの格好でタグを外した。

「うん、真斗くん、背高いし、筋肉あるし、スラッとしてるから、ちゃんとしたの着たら、やっぱかっこいいじゃない」

「そうか?なんか動きにくいぜ、これ」

そして、これまで着ていた洋服は一旦デパートのロッカーに入れた。

「さ、早く行きましょ!映画始まっちゃう!」

奈央は真斗の手を掴んで最上階の映画館に行った。



奈央が選んだのは今話題の実写版ディズニー映画だった。

真斗は、過去に映画館に入ったのは10年以上前だったが、ストーリーも面白く、どういう展開が来るかでドキドキハラハラした。



映画館を出ると、デパートも出て、近くのカフェに行った。

「こんにちわ、鳥居奈央さん、男性のお友達を連れて来るなんて、珍しいですね」

40過ぎの人の良さそうなカフェの店長がにこやかに挨拶した。

「お久しぶりです、土屋さん。なかなか来れてなくてすみません」

「いえいえ、どうぞごゆっくり」

そう言ってメニューをテーブルに置いた。

奈央はダージリンティーと、新作のフルーツパフェを二つ注文した。

「どう?」

「え?」

「美味しいでしょ?」

「ああ、うまいな。だけど、でも俺は奈央のスイートポテトの方が好きだけどな」

本心だった。

「いやあ、たしかに!こりゃ一本取られましたな!」

そう言って二人の話を聞いていた土屋という店長が笑った。

奈央も笑っていた。



カフェを出るとき、奈央が二人分の会計を済ませて店を出た。真斗だけが、土屋に呼び止められた。

「あ、何か?」

真斗は土屋に言う。

土屋はこっそりとショコラケーキを箱に包み、袋に入れると、真斗に手渡した。

「サービスですよ、お代は頂きません」

「え?俺、こういうのは別にあまり食べないですけど」

「そうじゃなくて!」

土屋が、カフェの外で真斗を待つ奈央を見た。

「ああ、そういうこと・・・」

「彼女の大好物なんです。頑張って下さい。応援してますよ!」

と言って真斗をカフェから出した。



カフェを出て、しばらく歩き、途中で真斗は奈央にショコラケーキをプレゼントした。

奈央はにっこりと微笑んだ。



駅に向かう。

真斗は改札で、路線図を見ながら沼津駅への行き方を必死に調べた。

奈央から渡された小銭で切符を買って、改札口を通ろうとした。

だが、奈央がやや暗い顔でまごついていた。

「ん?どうした?
次は沼津に行ってマリンパークでしょ?」

「えっとね、予定変更!一旦家に帰ります!」

「ん?沼津行かないのか?切符買っちゃったけど」

「うん・・・ちょっと・・・」

真斗はその真意を図りかねたが、奈央の言う通り、家に帰ることにした。

「たまにはタクシー使おう?荷物多いし」

そう言って、奈央は近場のタクシーを停めて、二人は乗り込んだ。



タクシーが奈央の住むマンションを目指して走り出した。

「本当に帰るけど、良いんだよね?」

「うん・・・」

外出を途中で断念し、マリンパークとレストランに行かなかったこと、真斗はちょっとだけ残念に思った。

10分程度で、タクシーは奈央のマンションの前に降り立った。
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