第1話 奈良の旅

文字数 1,669文字

 更級日記を読み、作者が参籠したという長谷寺へ行き、実態を確認したくなった。
妻と一緒の一泊旅行である十二月五日が私の誕生日だから、少し豪華なホテルを予約してくれた
一泊湯朝食つきで三万円するところだった。安売りの時期がある二万円で宿泊できることになった。
 新幹線切符も割引会員なので少し割安。新大坂駅で下り、大坂駅までの電車に乗った。次の駅は南吹田だとアナウンス。おかしい大坂のはずだと、急遽下車、案内板をチェックした。○○行きのこの電車でも、乗り換えて奈良駅にいけそうだ。つぎの電車に乗り換えた。初めて乗る経路。無事奈良駅に着いた。
 JR奈良駅と近鉄奈良駅は離れている。以前は近鉄奈良駅で近くのビジネスホテルで止まった。そちらの方が奈良の大仏や公園や国立博物館があり賑やか。JR奈良駅でレンターカーを借りた。翌日の16時まで、18000円である。前回は、徒歩で観光地を巡ったが二万歩も歩き疲れ果てたので、今回は、車を借りた。
 この日は午後だけ時間があるので、まず春日大社へ行った。赤い鳥居をくぐり鹿のうろつく中を坂道を上る。赤い回廊が張り巡らされたところは入場料がいる。紅葉は満開の時期をすぎていたが、まだ紅葉を楽しめた。古くて由緒ある所だが、どういう歴史だったか忘れた。奈良は余りにも旧所名跡が多く、覚えきれない。コロナが終わり外人観光客も多い。鹿に煎餅を上げて喜んでいる。我々も修学旅行の思い出は、この鹿とせんべいで戯れた印象が強い。
 次は国立博物館、月曜で休館日だった。事前調べたら開館のはずだと妻はいう。土日に宿泊は高いので、月火にしたのでそのせいもある。次は「ならまち」という江戸時代の町屋へ行った。道は狭く、車一台のみ通過。江戸時代はこれで十分な広さだった。昔風の建物が多く残っている。道の外れに一軒だけあるコイン駐車場がありそこに停めた。
 一軒の見学可能な町屋に入った。作りは木造昔風の骨組み、奥へ長く細い、造形作家の展示会場になっていた。仏壇の部屋が大きく豪華。透明ガラスの向こうに庭があり紅葉の赤と黄色が植えられていた。
 外人の母娘が見て回って居た。トイレの戸をあけようとするが開かない。妻が「日本式の取っ手は横にスライドするのよ」と教えて上げた。私は、母に「何処から来ましたか」と聞くと「ベルギー」という。「テレビでよく見るポアロを知っていますか?」と訊くと「ディテクティブ」と答える。「そうです探偵です」。「一週間前に日本に娘と来た。主人は国で働いている」ともいう。外国人と簡単な英会話が出来、楽しかった。
 車のナビをホテルへ行くように設定。近くを通るようだけれど、入り口が分からない。バックし再度、同じ道を走ると、木々の間に隙間がありそこから入場するのだった。左手に池があり、丘のようになってる木々の間を走ると古い二階木造家がある。歴史を感じさせる旧館のようだ。
 黒背広の男性が車に近付き駐車を案内し、荷物を持ってフロントへ行った。建物は明治の頃建てられたような立派で大きな木造住宅であり、鉄筋のホテルではない。赤いカーペットが敷かれ、ロビーの先には木造階段が見える。
 フロントスタッフの中年男性がにこやかに「いらっしゃいませ」と頭を下げる。「お待ちしておりました。今日はご主人の誕生日でございますね。お目出度うございます。ごゆっくり当館でお過ごしください」 記念品として桐箱に入った毛筆の筆二本をくれた。
 「本日のお泊まりはスタンダードルームになっております。ちょうど一部屋、デラックス、ルームが空いてございます。本館と旧館があり本館は最近リニューアルし、素晴らしい部屋に模様替えしておりました。いかがでございましょか、記念日の思い出になるような「デラックス、ガーデンビュー」の部屋でお過ごしになられましては?」という。
 百年前に建築された物で、皇室も屡々、宿泊される奈良でも歴史あるホテルだという。スタッフの甘い言葉に誘われ、1万六千円を奮発し、良い部屋に泊まることにした。
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