第3話 JRの池公園

文字数 931文字

 翌朝は、外気温は5度と寒かった。ホテルの部屋の窓を開けると、芝生と紅葉の木々の間に、三頭の鹿がいた。草を食べゆったり歩いている。
 更級日記の中に鹿の文がある。京都の少し山手に引越した作者が、朝、目覚めたとき、人がどやどややってくるような気配がした。木戸を少し開けると、何頭もの鹿が家の庭に集まってきていた。というシーンがあった。奈良の鹿は公園に沢山居るがそれらが、散歩がてら塀を潜ってきたのだろう。
 朝食は和食を頼んだ。案内係は奥の部屋に案内した。手抜きしない和食料理も見事であった。部屋は和風の雰囲気である。イチョウと呼ばれる仕切りのようなものが目にとまった。衣帳と書くのだろうか。平安時代の小説では、几帳で間仕切りをしていたと書いてある。
 食後、外を散歩することにした。下の方にある池の周りは、庭師がいて管理されているという。入場券をフロントで貰い、坂道を下って行った。周りは金属制の柵塀で、ぐるりと公園は仕切ってあった。鹿が侵入し荒らさないということだった。池の周りは芝生がキチンと刈り込まれ、松の木はすっきり、紅葉の木が多いがまだ真っ赤に近く、見事な写りが池の水面にうつっている。小さな水島も群がっている。
 太鼓橋を渡ると、向こう側にいく。家が囲んでいるように並ぶ。古い築地も残っている。透明ガラスの建物があり、中を覗いていると、知識人のような風情の高齢男性が出てきた。「ここは大乘寺といいます。どうぞ案内しますので、中へお入りください」という。「奈良ホテルで入場料を払って貰っています。外の道路から当寺へ入る場合は、200円の入場料を貰っています。この池はJRの所有であり庭師が剪定しています。昔はこの一体は元興寺の所有でした、時代が変り
他の寺に乗っ取られました。この近辺を開発することとなり発掘調査が行なわれました。奈良時代以前の物が出土すると、国の所有になるのです。しかし江戸期の土器や遺物が出てきて、所有権は民間のものとなり、JRが所有することになりました。一般公開しています」と流ちょうにわかりやすく説明してくれた。昔は都であったから、多くの歴史的なものがこの奈良市内には存在する。説明されても頭に入りきれなし。しかし、見事な池と庭園である。
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