第2話 奈良の優雅なホテル

文字数 1,516文字

 赤絨毯に廊下は広く天井が高い、部屋へ案内された。しっくりした木の柱に格天井、窓は古い木枠の外にガラス戸がある
風呂は大理石張り、トイレも自動式最新方、大理石の部屋。天井が高く3メートルくらいのクロスに厚手のカーテン。
 庭は刈り込まれた芝生に紅葉の木が何本も紅葉している。下の方に池が見える遠くに五重の塔も見える。最高の眺めである。
一寸くつろぎ、館内を見物することにした。百年以上に亘り歴史的な遺跡があるらしい。廊下の掲示板に過去に泊まった人の
 名前がある。今上天皇に雅子妃殿下、平成天皇に美智子妃殿下、昭和天皇夫妻、オードR-ヘップバーン、ユルブリンナー、アインシュタイン。皇室の方々も大勢宿泊されている。二階には天皇が泊まられた部屋もあるという。フロントの前には上村松園作「花嫁」を展示。小さな鳥居と暖炉。これも何か謂われがあるようだ。
待合室はゆったりとして、安楽椅子が並べられ、飲み物が自由に飲める。古いピアノは、アインシュタインが弾いたものだという。平成の大時計は平成天皇が来所されたとき、「このホテルに相応しい時計だ」と言われた。窓際の応接椅子に座ると、碁盤があった。妻と碁並べをして遊んだ。ゆったり座っているだけで心和やかになる雰囲気がある。
 二階の階段を降りてくる途中、ロビーに六人の男女がいた。妻が中の一人の女性を見たことがあるという。その女性も妻を見た。「あなたはプラタモリに出て来るアナウンサーの人でしょう?」と問いかけると、にこっと笑って「そうです」という。「タモリさんと一緒の方ですね。NHKの福岡局の野口葵衣アナウンサーですよね。私もいつも見てます。福岡から来ましたから」。「そうですか」とニコ。いつもの番組と変らない爽やかな対応。ますますファンになった。
 私もついでに手を振ると彼女も手を振ってくれた。あの番組でタモリの脇役として花を添える愛想の良い美人アナウンサーだ。今日は、ロケの人々と一緒にこのホテルに泊まるに違いない。なにか楽しくなり、徳した気分になった。
 夕食は6時からにした。洋風フルコースである。一階奥の部屋は広く、四人席のテーブルがゆったりと並ぶ、静かなクラシックのBGMが流れる。お飲み物は、先ずは生ビールで妻と乾杯。記念写真を撮って貰った。前菜から手抜きのない調理が運ばれ、説明がある。肉料理には赤ワインだ。
妻は黒っぽい服に長い真珠のネックレスが似合う。「あなたの母の残した真珠の大小2本のネックレスを、一本に加工して貰ったものなのよ」という。又首から提げているプラチナネックレスは「お父さんの形見の大きな真珠のタイタニック、チェーンをプラチナネックレスで付着してもらった加工賃で15万円したという。私の父母の形見を上手に利用してくれている。天国で喜んでいるだろう。
 私はほんのりと酔い、食事も美味しかった。ウェーターに尋ねた「美味しいって何だろう?」「お二人でいらっしゃるから、心がみたされ、美味しく感じるのでは」と答えた。若いのに、咄嗟にお客を納得させる回答を言うなんて、教育が良いのだろう。離れた席には、老夫婦の皆さんが多い。にこやかに談笑する人。愛想のない夫と連れ合いさん。様々なカップルが静かに料理をたべグラスを傾けている。アインシュタインもここで食べ、ピアノを弾いたのだろう。表現できないが明治時代の豪華な雰囲気の会場である。サービスの精神もモットーとされているのだろう。大勢の皇室がこられても、そつなく対応されていて、皇室の感謝状も掲示されていた。
 庭にライトアップされた紅葉が雰囲気を盛り上げる。すっかり酔ってしまい、部屋に戻り、風呂にはいり、ベッドで寝込んでしまった。
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