11章「熱意」

文字数 1,606文字

「イチゴが好きな人は、きらいな人の知らない快楽を知っている。その限りにおいて、前者の人生のほうが楽しいし、また、前者のほうが、両者が暮らさなければならない世界によりよく適応していることになる」
「フットボールを観て楽しむ人は、その分だけ、楽しまない人よりもすぐれている。読書を楽しむ人は、そうでない人よりも、なお一段とすぐれている。読書の機会は、フットボールを観る機会よりもずっと多いからである」
「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる」

・多くの物事に関心を持つことが幸福ポイントを稼ぐことに繋がる。その「多くの物事に関心を持つ」こと自体は何により得られるのか? ゲーム的に言えば「多くの物事に関心を持つスキル」は何をすることにより入手できるのか?
「不愉快な経験ですら、彼にはそれなりに役に立つ。(中略)たとえば、地震のとき、こう自分に言い聞かせる。「じゃあ、あれが地震というものなのか。」そして、この新しい項目のおかげで、世界についての知識が増えたことに喜びを覚える」
「こういう人びとは運命に左右されることがない、と言えば嘘になろう。もしも健康でなくなれば、おそらくは、同時に熱意も失われるだろう(中略)熱意を打ち砕く不健康もあれば、打ち砕かない不健康もある」

・ラッセルさんがちょっと面白いのは、「なんだかんだ言っても健康を損なうと、結構、幸福は損なわれるよね」という視点を保っていることで、極端な精神論に堕することを避けている。
「関心を持つスキル」と「熱中するスキル」がどうもあるな。

時間→(変換)→カネ→(変換)→スキル

これまではこういう図式を考えていたけど、

時間→(変換)→カネ→「関心を持つスキル」「熱中するスキル」→(変換)→スキル

こういう形か。得た金を他のスキルに変換しようとする原動力に、別のスキルが必要になる。仕事で稼いだカネで趣味を楽しんだり、カルチャースクールに通って新しい技術を得る(この過程で幸福ポイントが稼げる)前に、「楽しもう」という関心と意志が必要で、それは一つのスキルだ。
「大食漢は、食べる楽しみのためにほかの楽しみをすべて犠牲にし、そうすることで彼の人生の幸福の総量を減らしている」
「趣味や欲望を幸福の源にしたいのであれば、それは、健康や、私たちが愛する人びとの愛情や、私たちが住んでいる社会の尊敬などと両立するものでなければならない」

・やりすぎは良くないという当たり前の話(ネトゲが楽しいからと言って死ぬまでしてはいけないし、酒が好きだからといってアル中になってはいけない)だが、これは「節度を保つスキル」も必要という話になる。が、ちょっと複雑すぎるのでこの要素はオミットかな。
「本物の熱意、つまり、実は忘却を求めているたぐいではない熱意は、人間の持って生まれた資質の一部である」
「文明社会に見られる熱意の喪失は、大部分、私たちの生き方にとって欠かすことのできない自由を制限されていることによる」
「子供のころには、学校で自由を束縛され、おとなになってからは、勤務時間中ずっと自由を束縛される。こういう次第で、熱意を保つことがいよいよ困難になる」

・文明社会において、労働は衝動により行われるものではない(「腹が減ったから狩る」ではなく「さっき朝飯を食って腹いっぱいだけど、働かないと月末にお金がもらえなくて腹が減るだろうから出社する」)。

「こうした熱意への障害を乗り越えるためには、人は、健康とありあまるほどのエネルギーが必要である」

・また出たよ、健康!

「それとも、運がよければ、それ自体おもしろいと思えるような仕事を持つことが必要である」

・通常の仕事は熱意の障害(衝動を制限するもの)だが、そうでない仕事もあるという認識。後者であれば仕事を通して幸福ポイントが稼げる。
次は12章「愛情」。

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登場人物紹介

架神恭介


実用書、小説、漫画原作などを手がける作家。今回は実用書の執筆のための準備段階としてラッセル幸福論を読む。

ひどいときは一冊書くのに二年勉強したりするので、全然儲からない。でも今回はサクッと書く予定。

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