第5話 花梨のお悩み相談室 

文字数 960文字

 いつの間にか月島さんと小林君が毎日お喋りしている。

「あんたも辛いだろうけどさ、私みたいに親の期待でプレッシャーがかかるのも辛いんだからね。昨日だって遅くまで塾だし。ま、お互いしんどいよね」
「月島、中学受験なんてやめて、みんなと一緒に公立行って気楽にやろうぜ」
「やなこった、私がいないと寂しいとか?」
「うるせーよ、つまんねーんだよ」
臨戦態勢だったのに、最近ちょっぴりじゃれ合いムード。


 北川さんは本格的に巫女様のお仕事を始めた。
背が高くルックスがよい北川さんは、巫女様姿がぴったり。聖地巡礼するオタク達の間で、「ミステリアスなロリ巫女様」とすごい人気なの。
あ、月読神社はアニメ『ハネムーン・ラビット』の舞台になったんだよ!

(しおり)~似合うね、カッコいい!」
「ありがとう、花梨(かりん)ちゃん。でも私は偽物(にせもの)だけどね。本物は花梨ちゃんだもん」
「またまた冗談きついって~」

 とにかく北川さんはたくさん笑うようになった。


*****


 雨の日の算数は気怠(けだる)い。

「お兄さんは午前7時に家を出て、毎分80mで学校に向かいました。10分後に宿題を忘れたことに気がついた妹が毎分120mで走って追いかけました。何時何分に妹はお兄さんに追いつくでしょうか」

 なにそれ、走って追いかけて忘れものを届けたくなるような、そんなイケてるお兄さんなの? そこが知りたいわ。
「旅人算ですね。7時30分です」サラッと月島さんが答える。
あー給食の後だから意識が遠のく。


うむ。本当に兄を思うのであれば、忘れものを届けずに反省させるのが正解じゃ。さすれば、自身で留意(りゅうい)し妹の手を(わずら)わせることもなくなるであろう。時に突き放すのも優しさ。自分で気づかねば人は変われぬもの。人生は長い目で見ることが肝要(かんよう)であるぞよ

 あ、やだ、私寝言? 恥ずかし~。
恐る恐る周囲を見回す。クラスメイトも先生も、頷きながら私の寝言を聞いてる!? 


 そう言えば最近なぜか、私に相談持ちかける人が多いのよね。
最初は生徒達の悩み相談だったのが、給食のおばさんから引き籠もり息子の対処法を相談されたり、はたまた教頭先生の相続問題まで。
 私、自分でもなに答えたのか覚えていないくらい適当に流しているんだけど、みんなとても感謝してくれるの。不思議。

 そんなことよりも私のことよ!
あ~あ、私も早く恋で悩んだりした~い。


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