第1話 百年に一度神憑る

文字数 802文字

 いよいよ今日は、月読(つくよみ)神社のご神託の日。
私達女子は緊張しっぱなし。

 お正月に月読神社の宮司さんが預言したのだ。

 今年は壬寅(みずのえとら)。壬は陽の水。寅は陽の木。
陽気を(はら)み、春の胎動(たいどう)を助ける年。
厳しい冬を乗り越え、弥生町に百年越しの春がやって来る。
待望の巫女が降臨する象意(しょうい)を得た。


 ……もしよ、もし仮によ、自分に巫女様が降臨してしまったら、神事を担当するため清く正しく生活しなければならない。つまり恋愛禁止ってこと? 冗談じゃない。
私は思春期突入した恋多き小学5年生、早く素敵な恋がしたいの!


 4月8日の夕方、町民全員が月読神社に集まった。
月読神社は別名「月兎(げっと)神社」とも呼ばれていて、ウサギモチーフがいたるところにある。
眷属(けんぞく)」とか言うんだって。
神社では奉納太鼓や甘酒が振る舞われて賑やか。でも私は甘酒どころじゃない。

花梨(かりん)、落ち着きなって~」
甘酒3杯目の(もえ)ちゃんが笑う。
「巫女様かっこいいじゃない~私なってみたいよ~」
私は鼻息荒く、
「だって巫女様になんてなったら、私、ますます高嶺の花になっちゃう、男子達遠慮しちゃうじゃん」

男子達が笑う。
「宇野は超ポジティブだな~」
「大丈夫、宇野が巫女なんて、ありえない」
「ちびの宇野が巫女さんコスプレしたら、(はかま)引きずるな」
「そうそう、殿中でござる~」

 男子うるさ~い! と騒いでいたら、でっぷりとした町会長さんがマイクで、
「はい、みなさんご静粛(せいしゅく)に」境内が静まりかえり、社殿の宮司さんに注目。

 宮司さんが(たた)まれた和紙を少しずつ広げる。私達は息を潜ませ耳を澄ます。

ご祭神、月読命(つくよみのみこと)からのご神託である。巫女は、11才、長い黒髪の女子。のちに夢に月の巫女が現れるであろう。巫女から言向(ことむけ)されし者は速やかに名乗り出るように

 ヤバい。

 町会長さんは、
「ほれ、髪の長い11才の娘っ子、集まれ~、ほら、そこのおめえも、おいこら逃げるな」

 超ヤバい。私は母親に取り押さえられ神社の本殿へ連行された。


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