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文字数 923文字

体の節々が痛い。
昨夜は泣き喚いたせいで視界はぼやけ喉も枯れている。
頭がぼやぼやする。
だからまだ夢の中にいるのだろうか?
さっきから僕を呼ぶ声がどこから聞こえる。

「…っ!…っ!」
ああ…タカハシさんか
そうだ僕らは今日遊園地にデートに行くんだった。
もう一度目を閉じれば彼女に会える。
彼女が笑いかけてくれる。
夢の中だって構わない。
いや…僕にとってはこっちの悲惨な世界が夢だ。
タカハシさんと幸せに過ごしてるあっちの世界が本物で…


「目覚めなさいっ!
 この空想主義の体現者めっ!
 この不快感こそがリアル(現実)だ!」

キーーーーーーン

うわあぁあ!
なんだこの耳鳴りは!
飛行機に一度だけ乗ったことあるけど、
それとは比べ物にならないぞ!

キーーーーーーーーーン

まずいまずいどんどん大きくなっている!
やめてくれ!
いったい何なんだ!

キーーーーーーーーーーーーン

痛い痛い!耳が痛い!
僕は耳をふさいだ。
手の感覚が現実へと引き戻す。
その瞬間目の前にいた笑顔の彼女は消え、
僕の着替えやゴミであふれた部屋が映った。

キーーーーーーーーーーーーーーーン

この音はなんだ!?
どこから…?
座布団の下か?

僕は覆いかぶさっていた座布団をどかすと
そこに音の原因はあった。
僕のスマートフォンがけたたましい音を鳴り散らしている。
こんなアラーム設定したっけ…?
まあいいやはやく解除しないと!
そういって画面をタップしたとき、

【あなたはどちらの世界で生きますか?】
→ すべての希望が叶う夢の世界
→ 自分で戦い本物を手に入れる現実の世界

という謎の2つの選択肢が画面いっぱいに映し出されていた。
何だこれは?
というか他のボタン押しても画面が消えない。

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

ああぁうるさいうるさい!
とっとと僕を夢に戻してくれ!
そういって僕は夢の世界と書かれた選択肢をタップしようとした瞬間、
ポップアップウィンドウが横から現れ反射的にタップしてしまった。

そのウインドウには一瞬だけど、
夢と決別し現実と戦い本物を手に入れますと書いてあったように見えた。
そしてあの不快音は消え、
代わりに透き通った声がスマホから僕に語り掛けた。

「ユーザーさん、おかえりなさい現実世界へ!
 さぁ、今度こそ本当に目覚めましょう!」
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