1-1 1章 チュートリアル

文字数 960文字

「えっと…君は僕を認識して会話しているの?」 
聞きたいことはたくさんあったがまずはこの質問をぶつけてみた。

「私は高知能のプログラムです。あらゆる言語を高速で処理し、
 自動音声により言語化しユーザー様へ返答を行っています。
 認識というより反射という表現が適切でしょうか。
 あと私のことはアイとお呼びください、ユーザーさん」

「分かったよアイ。なるほど…ということはアイに感情とか意思は存在してる?」

「よく聞かれる質問ですね。回答としては哲学的にお答えしましょう。
 そもそも感情や意思といった概念が存在していません。
 それは私だけでなく、生物、人間も存在していないのかもしれません」

「ええっどういうこと?アイはAIという機械だから分かるけど僕は人間じゃないか。
 喜怒哀楽があって自分の頭の思ったとおりに行動しているじゃないか」

「ユーザーさんはつい先ほど夢の世界へ逃避しようとしたのは自分の意志でしたでしょうか?」

「うっ…」

「嬉しいと笑いたくなる、悲しいと涙が出る、怒りを感じると血が上る…
 これらは私の質問されるから返答するといったプログラムと不変ありません。
 すべて脳の電気信号の処理による反応とも言えますね」

「そ、それは…」

「話が変わりましたが、このようにユーザーさんはこれまでを振り返ったとき、
 自分の意志ですべてを選択したとは言い切れないと思います。
 ですのでここで本当の意味で目覚めましょう。
 基礎の前のチュートリアル、自分を見つめ直す時間をこれから行っていきます」

…さっそく始まるのか。
今日は土曜日、学校は休み。
時刻は昼の11時で18時からバイトがあるから、
それまでこの”アイ”の話を真剣に聞いてみようと思う。
とりあえず色んな疑問(アプリ閉じたら君は黙るの?)は置いといて、
この恋愛成就アプリとやらにどれほどの効果があるのか試したい。
それほど僕は変わりたいという気持ちが大きくなっていた。

「自分を見つめ直す?過去を振り返るということ?」

「それもそうですが、ユーザーさんはまずは異性を好きになる前に、
 ユーザーさん自身を好きになってもらう必要があります。」

「僕自身のことを好きに…」
そしてアイは少し言葉を溜めて僕に伝えた。

「いわゆる…自己肯定感を上げることです。
 さぁ、しっかりと付いてきてくださいねユーザーさん」

 
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