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文字数 508文字

「あら、めずらしいじゃないあなたから電話なんて」

土曜日のお昼過ぎだったが母はすぐに電話を取った。

「夏休み忙しくて帰ってなかったからね。元気?」

「そうね特に変わりなく…
 あなたもちゃんと食べてる?
 みかん、いっぱいあるから送ろうか?」

「仕送りの要求じゃないよ。
 ご飯はちゃんと食べてるよ。
 ああでもみかんはちょっと欲しいかも」

半年ぶりに聞く母の声は嬉しそうだった。
そういえばこんな風に自分の連絡を喜んでくれる人と話すのは久しぶりな気がする。
これがアイの言ってた無償の愛から受ける自己肯定感なのだろうか。

そこから母は在宅での仕事の話やお隣さんの話、最近のテレビの話をずっと話していた。
僕はその話を時折笑いながら聞いていたけど母がふと、

「ねえいい人できた?」
と聞いてきたので何言ってるのと誤魔化したが、

「あなたはお父さんに似て優しいけど女っ気がないひとだからねぇ」
と言ってきたので、
「お父さんに女っ気あったらそれは浮気だろ」
と言い返した。

…父も今いたら色々男同士で恋がうまくいく方法でも語り合えたのかな。

そんなことが頭をよぎりながらも色々母と話をして電話を切った。
電話をする前と今とでは気持ちが軽くなったのを実感しながら。

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