第30話 今すぐにでも欲しい有希の体を無理に引き剝がす

文字数 452文字

 伸くん
 床にあぐらをかいて文庫本を読んでいると、有希が近づいて来た。伸は、本を脇に置く。
 うん?
 抱っこして
 そう言いながら、向かい合って膝にまたがって来る。
 赤ちゃんみたいだね
 赤ちゃんじゃないよ

 顔が近づいて来て、唇が重なる。されるままになっていると、やがて、唇をこじ開けて舌が入って来た。


 夢中になって有希の唇や舌を味わっていると、突然、彼が体を離した。

 伸くん……
 見る間に、目に涙の粒が膨れ上がって来る。
 ユウ?
 ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
 大丈夫? 無理しなくていいんだよ

 違う……


 体が……

 ……え?
 伸くんのキスが素敵で、体が、疼いて……
 えっ。本当に?
 有希は、うっうっと嗚咽を漏らしながら言った。
 嘘なんか、つかない。……伸くん!
 有希が覆いかぶさるようにしがみついて来る。
 伸くん!
 伸の体も反応している。今すぐにでも有希が欲しい。だが。
 ちょっと待って、ユウ
 有希の体を、無理に引き剥がす。
 ……何?
 もうすぐお昼だよ。ご飯の用意をしなくちゃ
 そんなこと
 でも、麗衣さんが……
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