第9話 伸にどんなに優しくされても悲しくてならない有希

文字数 330文字

 部屋に入っても、いつものように抱きついたり、キスを求めたりしない有希に、ついに伸が言った。
 やっぱり、何かあったんじゃない? よければ、話を聞くけど
 なんにもないよ
 ユウ
 伸が近づいて来て、そっと抱きしめてくれた。有希は、伸の肩口に顔をうずめる。何か言うと、泣いてしまいそうだ。
 辛いことがあるなら、一人で我慢しないで話して。何も役に立てないかもしれないけど、ユウの気持ちを共有することは出来るから
 有希は、伸にしがみつきながら言った。
 伸くんのことが大好きだよ。伸くんだけを、ずっとずっと……
 俺もだよ。これからもずっと、ユウを愛している
 僕のことだけ?
 もちろん
 伸は即答したが、有希は悲しくてならない。そうじゃない。だって伸くんは、「彼」のことを……。
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