第20話 一生一緒にいることと有希のプロポーズと伸にプロポーズさせた過去

文字数 782文字

 前から思っていたんだけど、出来れば、なるべく早いうちに伸くんと一緒に住み始めたい
 え……
 あと、少しは料理も覚えたいし、それから、潤子さんと一緒に出かけたりもしたいな
 伸は、ぽかんとした顔で有希を見たまま、何も言わない。
 あれ。伸くんは、僕と一緒に暮らすの、嫌?
 ずいぶん間が空いてから、ようやく伸が言った。
 そんなことはないよ。すごくうれしい
 だったら、もっとうれしそうにしてよ
 あぁ
 そう言いながら伸は、まだぼんやりしている。
 ねぇ、伸くんったら
 それって、つまり、いわゆる結婚っていうか……
 そうだね。結婚だね。伸くん、結婚しよう!
 正直なところ、そこまで深く考えてはいなかったのだが、一生一緒にいたいと思っていることは間違いないから、それはやはり、男女で言うところの結婚ということになるのだろう。
 でも、失敗しちゃったな
 え?

 だって、そういうプロポーズみたいなことはさ、伸くんから言ってほしかったのに、うっかり自分で言っちゃった


 そう言えばさ、僕が記憶を失くした後で、もう一度付き合うことになったとき、伸くん僕に『四の五の言わず、一生、俺のそばにいろ』って言ったんだよ

 えっ、そんなことを?
 そうだよ
 本当は有希が、一言一句そのように言わせたのだが。
 考えてみたら、あれってプロポーズだよね
 あ、あぁ
 なぁんだ。伸くん、ちゃんとプロポーズしてくれてたんだ。もちろん僕は、『はい』って言ったよ。『一生、僕をそばに置いてください』って
 そうなのか……
 このベッドで愛し合った後で、そう言ったんだよ。それで、その後、もう一度したんだ

 あんなに素敵な思い出を、伸が覚えていないのは寂しいが、自分が覚えていればいい。絶対に、一生忘れない。


 あのときのことを思い返しているうちに、早くも体の奥が妖しく疼き始めた。

 ねぇ。伸くん
 ……うん?
 また、したくなっちゃった
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