第26話 大胆過ぎる有希の申し出をあわてて止める伸
文字数 692文字
有希は、涙声になる。
ユウ。それは違うよ。俺はずっと、ユウのためにそばにいて、ユウのために何かしたいって思っていた。
でも、それは思い上がりで、ユウのそばにいるのも、何かしたいのも、全部自分がそうしたいからしているだけで、ただのエゴだって気づいたんだ。それで今、自分にがっかりして動揺したんだよ
顔を上げた有希の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
傷とか、セックスがどうとか関係ない。もしも、それで引け目を感じているなら、そんな必要はまったくないよ。
何度も言うけど、傷があっても、ユウはとてもきれいだし、セックスしなくても、ユウのことが大好きだし、今だって、ユウのことを誰にも渡したくないと思っている
伸は、本格的に泣き出した有希の肩を抱きしめる。しばらくの間、泣き続けていた有希が、やがてぽつりと言った。
顔をのぞき込むと、有希は真っ赤に泣き腫らした目でこちらを見て言った。
伸はあわてて大きな声でさえぎった。
有希はまだ、不満そうな顔で伸を見ている。顔が熱い……。