第14話 カミングアウトを決心した伸と伸の気持ちがうれしくて涙がこみ上げる有希

文字数 492文字

 伸くん
 伸の母が出て行ったドアを向いたまま立ち尽くしていた伸は、有希の声に、ようやく振り向いた。まだ呆然とした表情で戻って来ると、ゆっくりと椅子に腰かける。
 伸くん……?
 あぁ。大丈夫だよ。いや、びっくりした……
 僕も
 まさか、伸の母がいきなり訪ねて来るとは思わなかった。伸が、虚空を見つめたまま言った。
 やっぱり、話をしないとな
 ……え?
 俺たちのこと、母に話すよ。もう、そういう時期に来ているんだ
 時期?
 俺たち、ずいぶん長い付き合いになるし、俺は、これからもずっとユウと一緒にいたい。今話をしなくても、いずれまた、こういうことは起こるだろうし、母だって、俺たちがただの友達じゃないことは察したはずだ
 いいの?
 いいに決まってるだろ
 伸くん……
 不意にまた、涙がこみ上げ、有希は、そんな自分に呆れる。伸の気持ちが、とてもうれしい。
 なら、僕も一緒に話をする
 いいの?
 有希は、思わず笑った。
 いいに決まってるよ。伸くんのお母さん、今はびっくりしていると思うけど、僕がどんなに伸くんのことを愛しているか話せば、きっとわかってくれるよ
 なんだか恥ずかしいけど、うれしいよ。ありがとう
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