君と僕と、これからの未来。

文字数 1,973文字

君の死は、殺人だったとーー、そう思い出す頃には、僕は大人になっていて、君と一緒に宇宙に居た。

また、君と巡り逢えた。

ーーけれど、僕はーー、あの地球に残して来た沢山のものに未練を抱いて……。

落ちてしまったんだ。他の星を巻き込んで。

地球という、ノアの方舟、そのものに。




そこに生きていた生命は、その星の形のままーー、本当は宇宙で粉々だけれど、あの世というものとして、地球そのままの姿でその場所に残った。

そこで、出会った彼らと過ごしているうちに僕はーーそこから離れられなくなってしまった。

僕も星として死んで、そこに、ーー地縛霊になってしまったんだ。

僕は星だから、地縛星霊かな? なんて、新しい名前ーー言語を造り出してしまったよ。……。

宇宙の君はーーあぁ、驚いた顔をしていた。

驚いて、怒っていたのかもしれない……。

だから、僕はーー……。

「お前は、怖くて帰れなくなったんだろ? 俺達に恨まれて、怒られて、復讐されたりまでするかもしれない、ってさ。」

「そんなーー復讐まではーー……。考えてなかったよ、復讐されるまで、僕は恨まれていたかい? 」

「ーー……。」

不安が込み上げてきた。眉を顰め、怪訝そうな顔をしたのを見て……。


あれは何だ? 目の前の星だったあいつが、何かに成ろうとしていた……。

成るとは真逆の表現、堕ちるとかが合っているだろうーーけれど、そんな危ない状態に成りそうだった。

見詰めているうち、それは、成ってしまったのかもしれない。

「あれは疑心暗鬼です。ーー人はーー人間は大抵なるんですよ。地縛霊なんかは特に。」

「強い悪霊が鬼にまで。」

「鬼ーーに、成ったのかーー? 」

目の前の地縛霊になってしまった友が、更に鬼になってしまったのだろうかと、その場に集まった全員がその姿を見詰め息を飲んでいた……。


「わからないよ、ーー、何もーー僕は変わってなんか……。ーー! 」

身体が、何かーー……。頑丈になった事が分かる。変わった事ーー、これが!

「鬼、ーーに? 」

手の平を開いて目に映した。拳を握れば、力がしっかりと入る。ーー今までの希薄で、突き飛ばされれば倒れてしまう様な身体じゃない。きっと、この拳はーー、振えば大地を割るのかもしれない。

「『疑心暗鬼』、お前はそれになったらしい。」

「僕はーーもう、星じゃーー? 」

「ーーないだろうな。星には戻れないのか? 」

「戻れるとは思うけどーー、俺がそうだったし。」

「戻れるーー? いや、このままでーー」

「復讐をお前の方がか? かつての冥王星になった今のこいつを、昔殺した奴を狙うか? 」

そう、やっぱり殺人だった、彼の死はーー……。彼を殺した犯人をーー僕が? ーー僕はーー、僕にはーー……。

「……。出来ないか、な……。僕じゃーー何もーー、」

「疑心暗鬼、っていうか、疑心暗鬼に囚われている人って感じ。」

「ーーこれからですよ、疑心暗鬼の本領発揮は。」

「疑心暗鬼を知っているーー? 」

「えぇ。同僚が成りました。成り方も似ていますよ。ーー逃げた方が良いか。皆さん、逃げーー!! 」

何かが爆発した。

ーー爆発したか、したと同時に攻撃されていた……。


互いを攻撃ーー疑心暗鬼に成ってしまったらしいそいつの拳と、駆け付け飛んで来たやつの蹴りが衝突していた。

「っ、疑心暗鬼はーーその不安故にーー八つ当たって来る!! 」

蹴りながら、そう叫ぶ様に唸り声の様に言った。

「あぁ、そいつですよ。疑心暗鬼になった鬼は。」

「先輩ーーって事かな? お手柔らかに、」

「出来ないな!! 」

新疑心暗鬼と、元疑心暗鬼の遣り合いが始まってしまった。意外と両方身のこなしが良いーーいや、二人共バトル要員じゃないはずなんだ。

「バトル止めい。」

「バトル展開ならーー消えます。またね。」

「まったね〜♪ ーーって、わぁぁ!! 俺も逃げるよう!! 」

「…………。」

「喋らないね……。親友が鬼に成ったっていうのにさ……。」

「次は鬼か、って。」

星になって、大気になって、大樹になって、人間(ヒト)になってーーーーーー鬼になった、親友と呼べる友。ーーしかし、自分も実は鬼に成った事がある。種類は違うけれど、鬼である事は同じで、あまり切羽詰まった気にならなかった。困りはしているけれど。

「! そうか……。」

「じゃあ次は何に成るんだ!? 」

「五月蠅いな、考えているんだよ……。」

また何か、別のものに成れば良いーー幸い、まだ成ってからこちらや周りの認識が薄く、人目に晒されて存在が固定されている状態でもない。ーー少し噂になっていて危なかったが……。

「疑心に飲まれた暗鬼(くらおに)じゃ、世界は照らせんだろうがよ。」

旧友も声を掛けていた。ーー『(これはヒントだ。あいつへの。)』そう俺に呟いて。

「わかっているさ、だからーー……。」


だからーー? 引っ掛かる何かを、僕はいつも掴めないんだ。

だけど、今はーー、今だけはーー……。
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