鏡の中、囚われの星。

文字数 422文字

それにしても、ーー……。

「僕は王子じゃないとでも言うのかい? ーー美形ーーではあると言われるけれど、……。」

鏡を擦り見た。

顔立ちは良いとされるーーでなければ、この学校の全校生徒から支持される事も、大役を得る事も出来なかった。

「僕も、王子になれたらーー……。」

あの都市伝説のーー噂話の犯人に、攫い直されるーー?

「ーーいや、一度放り出されたんだ……。有り得ないよ……。」

鏡に映る自分が、不意に微笑んでみえた。

「何だい? ーー自分は、そう成れるとでもーー、ううん、そうならなければ。この大役を演じ切る為に。ーー僕の初めての挫折を無かった事にでもする為に……。」

挑戦しよう。君が僕をまた攫ってしまうくらいに、僕はーー王子らしく成ろう。この顔ーーいや、姿全てに磨きをかけて。

けれど、胸の内はーー鏡に映る自分の表情は、残念そうな、不安な気持ちで一杯といったものだった。

ーーその疑心暗鬼は、僕を狂わせ狂気へと走らせる事になるけれど、この話とは、別の話なんだ。
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